日本保健福祉学会誌
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Print ISSN : 1340-8194
インフォームド・コンセントに対する患者の認識と意思決定要因の分析
沖野 良枝
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2002 年 8 巻 2 号 p. 29-39

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抄録
本研究は、対人サービスにおける対象者の意思決定関連要因の分析を目的とするものである。今回は、Tom L. Beauchampらの「自律的権限付託」の概念を枠組みに、医療におけるインフォームド・コンセント(以後、ICと述べる)に着目し、患者のICに対する認識と意思決定に関わる要因を調査・分析した。A総合病院入院患者および家族150名を対象に、ICに関する認識と実施の状況、医療者の対応など自由記載を含む24項目の自己記入式質問紙による調査を行った。質問紙の有効回答数は110名(有効回答率73%)であった。結果は、家族を含めた回答者のうち,70名(64%)がICを「あまり」も含めて「知らなかった」と回答し、認知度の低いことが分かった。病気や治療に関する医師の説明は、67名(61%)が「理解・納得できた」と回答し、高い理解度を示したが、治療を「自分の意志で選択した」のは患者本人27名、家族・その他3名、計30名(27%)であり、患者本人36名、家族・その他17名、計53名(48%)は医師に任せたと回答し、提供された情報の高い理解が必ずしも自己決定に繋がっていない現実が窺えた。また、患者の理解は、医師や看護者の分かりやすい説明の方法と高い相関が認められた。患者の意思決定および満足度に関連する要因の構造を検証的因子分析により探ってみた結果、モデルの指標は適合の範囲を示していたが、直接意思決定に影響する因子は検証できなかった。今後、今回のモデルをもとに、仮説の修正およびより精緻な変数の検討が必要であると考えている。しかし、医療者の「説明の方法」、情報提供後の「フォロー」などは、患者の「理解・納得」や「治療への満足度」を高めることに貢献する支持因子であると解釈され、意思決定に関する支援の在り方に示唆が得られた。
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© 2002 日本保健福祉学会
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