2010 年 9 巻 p. 53-56
自然環境における風景を、造形作品を通してどのように見せるかという考察を続ける一方、作品をつくる側として、風景を喚起させる空間とはどのような状態のものか、作品そのものが鑑賞者にとっての風景となりうるかという考察を継続している。本論では、風景を喚起させる空間インスタレーションの制作研究として、空間知覚の概念と実例を(1)動きをアフォードするインスタレーション(2)肌理・テクスチャーから解放されたインスタレーションと二つに分類し論じた。またこの概念を通じての筆者による《Pemetrate Garden》《Vertical Landscape》の二作品を報告した。今後は、素材の選択・鑑賞者との関わり方・制作方法などに関して複数の造形アプローチをパラレルに実践することで、多様な試行を継続する必要があるだろう。「風景」の知覚をもとに作品を考えることで、これまでよりさらに鑑賞者と密接な空間を成すことができると考えている。