2014 年 18 巻 p. 23-31
インドは世界第二のシルク生産国である。またインドは4 種類のシルクをすべて生産している国である。インドのエリシルクの生産は近年増加している。エリシルクはAHIMSA SILK というブランド名がつけられ,熱特性に優れているため,世界中で利用が増加している。インドのエリ蚕の生糸の年間生産量は,2000 年から2001 年にかけて1160t であったが,2010 年から2011 年では2760t に増加している。エリシルクはエリ蚕を飼育してつくられる。エリ蚕は非休眠性であり複数の植物を食べる昆虫である。古くから飼育されている。エリ蚕飼育は伝統的な小規模農業であり,他の農業の合間に実施されてきた。エリ蚕のサナギはタンパク質含量が55-60% と高いため,ヒトの食用に供され,ヒトの栄養補給に貢献している。インドの東北部の8 つの州において30000 ヘクタールの畑がエリ蚕の食草を栽培するのに使用されている。年間のエリ蚕のスパンシルクの生産量は,4000t である。
カンボジアへのエリ蚕飼育の導入は容易であると思われる。気候風土がエリ蚕飼育に適合している上に,エリ蚕の食草であるキャッサバが豊富にある。エリ蚕飼育をすれば地方の経済の活性化につながると思われる。エリ蚕飼育を実施するにあたって必要な投資はそれほど大きくない。家蚕の飼育に比べてエリ蚕飼育はより簡単であり,柔軟性がある。カンボジアには昆虫食の習慣があるのでエリ蚕飼育は有利である。