クスサンの成長,営繭,繭糸の特性,などについて観察を行った。繭層は,数十本の繭糸が密着して構成された太い糸により網目状の繭が作られ,繭の一端は成虫が脱出できるように網目が崩れ通路となっている。幼虫が吐糸する繭糸は超太繊度であり,繭層切片の光顕観察から見ると多孔性と緻密性繭糸が混在し,その割合は後者が高い。多孔性繭糸のフィブロイン中には小型から中型の小孔が散在するが比較的少数である。
クスサンの繭層は軽く,フィブロインの分泌量も少ないため後部絹糸腺の内膜の退化がヤママユガ科の中では少し遅れているものと推察される。