抄録
1999年に土浦市矢作の農家敷地で見出された118の巣房をもつ国内最大級のキボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)の巣を観察し,巣の形成過程と利用の仕方,産卵位置,卵や幼虫および繭の出現が個体の生育に及ぼす影響, 巣房形成と気温との関係などについて調査した。巣房は片側方向に形成される傾向にあり,複数回再利用され,多い場合には同じものを3回利用するケースがあった。巣房中の産卵位置は,巣の外側に形成された新規の巣房では巣柄のある第1巣房方向の巣房壁に産み付ける傾向にあったが,巣房を再利用する場合(中間付近の巣房)では第1巣房方向とは限らず女王蜂の産卵のしやすさで位置が決まっていると推察された。また,創設期の卵と幼
虫を合わせた生育期間(卵/幼虫)はワーカー期や繁殖期のものよりも2倍以上長くなり,この時期の生育速度は気温とは別の要因が関係していた。また,造房や産卵は蛹化(繭化)や羽化のタイミングと関係があった。