医科器械学
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大学病院手術室空調設備の特徴と運用
粕田 晴之緑川 由紀夫樋山 和広堀田 訓久村石 修鈴木 和一野々瀬 恵司
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2003 年 73 巻 4 号 p. 197-

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抄録

〔はじめに〕自治医科大学附属病院は平成14年8月にリニューアルされたが,手術室空調の快適な運用が確立されるのに稼動開始後約2カ月を要した.〔新手術室空調の特徴〕手術室は3階で,4階が空調器械室階となっている.手術室ごとに空調機が設けられ,室内の設定器で運転/停止および室温設定ができる.外調機は4系統あり,陰陽圧可変型手術室を除く16の手術室の空調機へ処理外気を供給する.気流は,手術室天井中央のHEPAフィルタ付き吹出口から壁四隅の床レベルの吸込口に向かっている.換気回数は一般手術室が約30回/h,高清浄度手術室が約55回/hとなっている.〔問題点と対応〕問題点:新手術室の運用開始時,空調は手術室壁面の設定器の操作で自動制御されることになっていた.しかし,実際には設定通りに制御されるとは限らず,急に冷風が温風に,温風が冷風に変わったり,時に天井から蒸気が吹き出たりして,医師・看護師からクレームがついた.原因調査:自動制卸では設定温度を下げた時は冷風に,上げた時は温風に切り替わってしまうこと,設定温度に±1.5℃前後の幅があること,温度センサの反応と室温調節に時間を要すること,天井吹き出し口直下・手術台周辺と室温センサの設置されている壁面との間に約4℃の温度差があること等が判明した.対応:患者人室時は「暖房,26℃」でスター卜し,室温を変える場合は「暖房」のまま設定温度を上下させ,手術開始時は設定を「冷房」に変更してから設定温度を変える.〔結論:快適な手術室の空調〕室温制御の向上には,(1)温度幅の許容範囲をゼロに近づけて室温調節時間の短縮を図るとともに,(2)手術台周辺と壁面との間の温度差は手術室天井からの一方向流が維持されている証左であることから室温センサを天井吹き出し口直下・手術周辺に設置し,(3)湿度を外気の季節変化に応じて中央で調節する必要がある.

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© 2003 一般社団法人日本医療機器学会
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