目 的:精神科病棟において、1年間、身体面から働きかける補完代替療法(以下CAM)をケアに取り入れた際、看護師に生じる変化を明らかにし、精神科看護へCAMの普及を支援するための示唆を得る。
方 法:CAM導入の初回、1ヶ月後、6ヶ月後、1年後において、CAMを実施した看護師の実施前後のストレス状態(唾液アミラーゼ値)と気分状態(POMS2短縮版)を比較した。
結 果:4施設5病棟の看護師10名を対象とした。測定時に行われたCAMはすべて精油を用いたマッサージ(アロママッサージ)であった。唾液アミラーゼ値の平均値は、初回、1ヶ月後は低下、6ヶ月後、1年後は増加し、1年後は有意差を認めた。POMS2短縮版において、ネガティブな気分状態を測定する各尺度の平均値は、すべての測定時期で低下し、特に[混乱–当惑][緊張–不安]は初回と1ヶ月後、ネガティブな感情全般の推定値であるTMD得点と[疲労–無気力]は初回、1ヶ月後、1年後に有意差を認めた。
考 察:1年後の唾液アミラーゼ値の変化は、看護師が不快なストレス状態となったことを示唆し、導入において注意が必要である。一方、POMS2短縮版における得点の変化は、年間を通して、ネガティブな気分の改善や自覚的な疲労の軽減に効果がある可能性があることを示唆している。これらの効果を明確にしていくためには、比較対照群を設けるといった工夫が必要である。