抄録
日常臨床に従事するものとして, 患者の治療の際に, 薬物の開発と普及の増大とともに, 副作用による症状発現には常にますます心しなければならないことは言をまたない. キノフオルムによるSMONの発症はその好例で, 端的に顕著なものといえよう. パーキンソン病患者に大量投薬する1-Dopaも秀れた最近の治療法の1つであるが, 薬物の副作用は決して軽視できないことは私どもの日常よく経験するところであり, 既に諸家の報告によつても明らかである. ここに述べる症例は, 1-Dopa内服中, ほぼ時期を同じくして, 多彩な臨床症状を発現した後に死亡するに至つたもので, このように激烈な症状の発現を認めた症例は極めて希と考えられたので報告し, 併せて本邦における1-Dopaの副作用に関する文献的考察を加えた.