抄録
癌患者における癌のひろがりの実態を追求することは予後を推測するのみならず, 治療法の個別化についても有益な示唆を与えると考えられる. 今回我々は広汎性子宮全剔出術をうけた678例の別出物について組織学的検索を行い5年予後との関連から治療上有益な知見を得ようと試みた. まず癌の側方へのひろがり, リンパ節転移及び転移経路の問題, 腟壁や子宮体部への浸潤, また膀胱, 子宮付属器へのひろがりを検索することによつて頸癌における癌のひろがりの実態及び予後因子としての重要性の評価を行つた. 更に色々な組織学的因子の検索, 臨床進行期と実際の癌のひろがりとのギヤツプ, 再発の実態などを検索し, これらを総括して頸癌治療のあり方について考察を加えた. その結果, 同程度に根治能力のある手術及び放射療法はその特性に応じて用いるべきであること, 更に治癒率と障害の両面からみて個別化治療を行うべきであると結論された.