抄録
特発性パーキンソン病は黒質―線状体系の変性以外に広く脳室系や皮質の異常を伴うことが報告されてきている. CTスキヤンの導入により容易に脳室系や大脳実質の病変が把握できるようになり, 我々はパーキンソン病におけるこれらの異常を明らかにすることを目的とした. 臨床経過及び神経学的諸検査より, 特発性パーキンソン病と診断された48例にCTスキヤンを施行し, そのCT像と臨床症状, 各種薬剤効果とその副作用及び脳波との関連を調べた. CT像を客観的に表現するため脳室比及び皮質線条数を算出し, CT上明らかな大脳病変を有さない他の神経疾患を対照として検討した. 得られた結果は, (1)痴呆を認める症例及びYahrの分類による重症例(IV, V度)に脳室系の拡大がみられた. (2)各種薬剤の副作用は脳室拡大例に出現しやすかつた. パーキンソン病におけるCTスキヤンで脳室系の拡大は臨床上及び各種薬剤使用において注目すべき所見であつた.