抄録
1. 治療面からみたX線診断の応用(TNM因子評価との関連):肺癌患者の治療に際しては, 臨床病期分類が治療方針の選択や治療成績の比較検討に重要であるが, X線診断法を駆使した臨床TNM分類の決定でも, 切除例で検討した病理TNMとの比較成績では一致率が5割に達していない. この不一致は, 主にN因子の評価に起因するので, 近年, 肺門・縦隔リンパ節腫大の診断に斜位断層写真(右下55°, 左下30°), 縦隔ゼロトモグラム, 胸部CT(造影剤によるenhanced CT)などが積極的に用いられている. 胸部CTは, 特に荒蕪肺や放射線性肺線維症の場合でも, リンパ節腫大を診断し得る利点がある.
N因子評価の限界としては, 腫大のないリンパ節の微小転移巣や, 反応性腫大で転移のないリンパ節の診断が可能でないことである.
胸壁浸潤度(P因子), 肺内転移(PM), 播種(D因子)についても, 胸部CTで, その診断は向上している.
2. 肺野病変の鑑別診断: ゼロトモグラムの活用で, 小型の肺野coin lesionの質的診断がより進み, 精検か経過観察かの判断に有用である. またリンパ管炎型など気管支壁の病的肥厚像も客観的な評価を下すことができるようになつた.
今後, CT, ゼロトモグラムその他のX線診断法の改良と共に, 肺癌の診断も, 各種機器による検査法を有機的に組み合せて総合的に向上するものと期待する.