抄録
私たちは, 夏期の耐熱性の低下と環境温上昇に伴う体温上昇を主訴とした症例を経験したので報告する.
症例は5才4ヵ月男児. 入院時, 身体所見, 血液生化学所見で異常を認めなかつた.
Minor氏法による発汗部位測定では, 前額, 手掌, 左膝外側, 上肢伸側, 腹~腰部, 下肢屈側, 足底に中等度の発汗を認めるのみであつた.
アセチルコリン誘発発汗試験では, 同年令健康男児の対象と比較し, 症例は汗腺のアセチルコリン反応性の低下が認められた.
組織学的検索では, 発汗部には正常構造を持つ汗腺を認めた.
症例は胎生初期における遺伝因子, 環境因子が複雑に影響し合つた結果生じた, アセチルコリン反応性の低下した汗腺が, 不規則に限局性に存在している低発汗型外胚葉形成不全症の一型である