医療
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高令者の上腹部術後落痛とモルフイン硬膜外注入
山下 滋小野 章深井 清子巌 康秀長沼 芳和川添 太郎
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1983 年 37 巻 5 号 p. 517-519

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抄録
高令者の手術後合併症は時に重篤な症状を伴うことがある. 特に上腹部の術後には疼痛による腹式呼吸の障害, 分泌物の喀出困難, 機能的残気量の低下, 換気血流比の不均衡などが知られている.
今回, 我々は術後, 硬膜外腔に微量モルフインを注入し, 術後疼痛の除去を試み, その鎮痛効果と動脈血ガス分析結果, 並びに術後合併症について検討し, 良好な結果を得たので報告する.症例は上腹部手術を行つた60才以上の患者15例で, その内5例は術後全く婆痛の愁訴なく, 他の効果良好な7例の平均除痛時間は10.3時間であつた. 他の3例は注入後, 1-2時間後に不安感を訴えたため, 他の鎮痛剤を投与した. 全例共, モルフィンの副作用とする呼吸抑制も著明でなく, 嘔気,嘔吐, 排尿障害, 排ガス遅延もなく, 又肺合併症も見られながつた. モルフィン注入後, 呼吸, 循環系も安定しており, 硬膜外微量モルフィン注入法は術後終痛対策として優れた方法と考えられる.
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© 一般社団法人国立医療学会
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