抄録
胸水貯留患者で診断可能であつた結核性胸膜炎16例と癌性胸膜炎23例について, 血清および胸水の免疫生化学的検査を行つた. 両疾患の血清値では, LDH, IgA, α1-Antitripsin, Haptoglobin, Adenosine deaminase活性に有意差を認め, 胸水値ではLAP, Glucose, IgA, Adenosine deaminase活性に有意差を認めた. これらの物質の測定は両疾患の鑑別に有用と考えられたが, 診断困難な症例のみの測定では, 胸水のAdenosine deaminase活性のみに両疾患で有意差が認められた. 両疾患の胸水・血清比で1.0以上を示したGOT, LDHについてisoenzyme patternの比較を行つたが, 疾患による特異性はみられなかつた. 両疾患において, 胸水値に特異性のない物質の胸水・血清比と分子量には負の相関が認められた.