1986 年 40 巻 4 号 p. 329-333
先天性疾患のほとんどが染色体と関係をもつて発生することが最近の研究から明らかにされつつあり, 重症心身障害児に関しても, これまで原因不明とされていたもののなかに遺伝的発生要因をもつものがあることが明らかにされてきている.
当院では重症心身障害児病棟に入院中の患児について染色体学的研究を行つているが, 本稿では15番染色体の部分トリソミーをもつ12才男子の症例を報告する.
患児は精神発達遅滞, 言語発達遅滞, 行動異常, 難聴, 耳介下方付着, 後頭部扁平などの臨床所見を示し, 染色体検査でY染色体の短腕の過長(Yp+)が見い出された. 父親の染色体分析により, 父親の均衡型挿入転座が遺伝したことによる15番染色体の長腕の部分トリソミー(46, XY, der(Y) ins(Y;15) (P11;q11q13) pat)であることが明らかにされた. これまでに報告された15番染色体部分トリソミーについての文献と比較し, 考察した.