抄録
脳卒中片麻痺患者のリハビリテーシヨンを行う場合, 運動障害のみ論じられることが多い. 知覚障害も症例によつては重要である. 今回発症後1年以上経過した患者を対象に臨床的によく用いられる診察器具を用いて, 温覚(50℃), 冷覚(0℃), 痛覚, 振動覚, 2点識別, 指趾識別, 位置覚などの検査を行つた. 温覚は76%に障害があり, 振動覚や痛覚は比較的保存されていた. 歩行障害と比較してみると車椅子を必要とする患者に失調が多く, 両側指趾認知や位置覚の障害がしばしばみられ, 表在知覚(温・冷覚)障害では, 訓練により歩行まで可能な者が多くみられ, 被殻や内包部の障害者が多かつた. このことから表在知覚障害は歩行に対する障害どなることは比較的少なく, むしろ深部知覚や高次脳障害に対して多くの問題を残していた. 今後, これらの実態を把握しながら脳卒中のリハビリテーシヨンを行う必要があると考えられた.