抄録
食道平滑筋腫は比較的まれな疾患である. 発生部位は, 中―下部が大部分であり, 食道胃接合部(以下「ECJ」)に発生したものは極めてまれである. 著者らは, ECJ部および食道下部に生じた平滑筋腫の2症例を経験し, いずれも内視鏡的切除が可能であつたので, 報告する. 症例1は57才男性で, 吐血を主訴に入院. 胃潰瘍の他にECJ直上に黄色調の隆起があり, 内視鏡的切除を施行した. 症例2は53才男性で, 胃透視にて食道にポリープがみとめられ, ポリペクトミーを目的に入院し, 内視競下に切除を行つた. 2例とも組織学的診断は平滑筋腫であつた.
食道の平滑筋腫は比較的まれで, 特にECJ部に発生したものは, 現在までに24例報告されているにすぎない. 食道の粘膜下腫瘍に対して, 内視鏡的切除を積極的に施行することは有意義と考える.