1990 年 44 巻 11 号 p. 1101-1105
視床失語の言語症状および改善傾向について検討を行った. 対象は, 最近5年8ヵ月間に国立療養所宮城病院に入院した視床出血210例中, 失語症状が陽性で, 標準失語症検査(SLTA)を施行した22例であった. 全例左側病巣であった. 長谷川・種村らが提唱したSLTA総合評価法を用いて, これら22症例の入院時, および10例での退院時総点数, 書字・発話・言語理解の各因子別分布を検討した. 入院時重症度の上で, 言語理解から発話さらに書字に連続する性質を示し, 書字障害が失語症一般に比べ重度である可能性が示唆された. 退院時は, 発話・言語理解障害は軽度で, 全般性重症度が書字因子に決定される症例が大部分であった. 改善度は, 発話・言語理解は共に良好で, これに比べ書字の改善は不良であった. 総点数が0点でまったく改善のなかった1例を除き, 他は全般に良好な改善を示し, 言語理解・発話では日常生活にほとんど支障なく退院した.