医療
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大量の経口モルヒネ投与を必要とした末期癌の1症例
小林 敏信柴田 正俊
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1991 年 45 巻 1 号 p. 93-96

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抄録
我々は乳癌術後10年目に発症した54歳の女性の血管肉腫の痛みに対して, WHO癌疼痛治療指針に基づいて除痛を試み, 他の鎮痛法を併用せずに死亡までの4ヵ月余りの疼痛をコントロールすることができた. 病巣は右鎖骨部にあり, 範囲は頸部から右肩関節に及ぶ深さ約6cmの開放創であった. 麻酔科に依頼されるまでの鎮痛法は, 非麻薬系鎮痛薬の疼痛時筋注であり, 使用量は1日ブプレノルフィン0.6mg, ペンタゾシン90mgであった.
我々はモルヒネ水溶液投与を1日240mgより開始し, 1ヵ月目に900mg/日, 2ヵ月目には1320mg/日, 3ヵ月目には3000mg/日, そして死亡直前の4ヵ月目には4200mg/日と痛みの増強にしたがって増量し, 良い鎮痛を得ることができた. 副作用としては呼吸抑制はみられず, 便秘は下剤に反応した.また悪心・嘔吐は全期間を通じて見られなかったが, 激しい口渇感, 舌の痛み, 見当識障害や幻覚に対しては良い治療法がなかった.
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© 一般社団法人国立医療学会
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