抄録
1975年から1989年までの15年間に経験した空腸導管2例について臨床的検討を加えた. 空腸導管報告例は非常に少なく, なぜなら空腸導管症候群といわれる電解質のアンバランスを伴う合併症を発生する危険性があるからである. 症例1は73歳男で, 膀胱癌による膀胱全摘および尿管尿管皮膚痩術をうけたが, 両側水腎症と腎機能障害を認めた. その原因は, 尿管尿管吻合部の結石症によるものであったので, 結石除去術を施行した. 周辺の癒着が著明で, 尿路再建のために, 空腸約30cm利用した空腸導管を作製した. 症例2は, 61歳女で子宮癌による子宮全摘およびコバルト照射後両側水腎症と腎機能低下で入院した. 下腹部腸管は蒼白色であり, 約25cmの空腸を用いて空腸導管を作製した. この2症例は, 退院後の経過をみて, 重曹1日2gおよび4gを約8ヵ月間継続投与して, 血液ガス分析の改善を認めた.