抄録
急性腎不全で発症した多発性骨髄腫の1例を報告する. 症例は67歳男性, 約2週間前より労作時の呼吸困難があり近医受診したところ心拡大と前年には正常であった腎機能の悪化あり紹介され入院. 中等度の腎機能障害と貧血を認めた. 諸検査施行中に乏尿と腎機能の急速な悪化を認めた. 心拡大の増大と両側鎖骨, 上腕骨の骨融解像があり, 免疫電気泳動, 骨髄穿刺によりBence Jones型多発性骨髄腫(κ型)と診断した. 腎不全に対しては血液透析を施行したが, 化学療法施行前に急変し死亡した. 腎機能障害は多発性骨髄腫の経過中に約50%の症例にみられるとされているが, 急性腎不全で発症した多発性骨髄腫の症例はきわめてまれであり, 本邦では我々の調べ得た限りでは9例の報告しかなく貴重な症例と考えられた.