医療
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成育医療ネットワーク
―その将来像と実現への課題について―
柳澤 正義伊藤 拓
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2001 年 55 巻 11 号 p. 543-544

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抄録
厚生省の政策医療ネットワーク計画に基づき, 成育医療の分野においても推進3力年計画案が作成されているが, 実際の各ネットワーク施設間協力体制の事例は臨床研究, 教育研修の分野を除き未だ少ない. このネットワークを計画通り機能させるためには, 施設間での成育医療の理念, 目的と, ネットワーク将来像についての共通認識が不可欠であり, その上で実現のために解決すべき問題点を明らかにし, 対策を考えて行く必要がある.
本シンポジウムにおいてはまず成育医療の理念と国立成育医療センター(仮称)の概要を紹介し, 成育医療ネットワーク推進計画の内容について検討頂いた.
次いで具体的なネットワーク体制の診療研究面について検討した. 診療面, 臨床研究面の協力においては各施設の医療レベルの均一化が不可欠であり, そのための研修教育体制の整備が重要であること, また, 重心担当施設と急性疾患医療施設など異なった機能をもつ病院間の人事, 研修交流がネットワークの維持・活性化に必要であることが指摘され, その対策が提案された. 次いで成育医療ネットワーク体制を維持するための重要な課題である医師の確保の問題, 医師の人事交流の実現性について報告頂いたが, 状況はきわめて深刻であり, 医療行政側の包括的な対応が強く要望された.
最後に医師, 看護婦の研修の現状と課題について報告頂いたが, 基幹病院の研修教育に対する積極的姿勢と抱負を提示頂いたこと, 成育医療看護教育体系の基本的考えを明確に整理, 提示頂けたことが有益であった.
以上, 成育医療ネットワークの進むべき道については, 診療研究, 教育の各分野でほぼ方向性が示されているが, それを実現するために現在の国立病院療養所の医療レベルを向上させ, 維持するための人的, 財政的支援が不可欠であることを痛感した次第であり, 関係各分野のご理解, ご支援を心よりお願いする次第である.
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© 一般社団法人国立医療学会
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