骨折は骨の強さと荷重で発生が規定される. 骨の強さは厳密には求めることが困難であるが, 臨床的には高い相関を有する骨密度で代用できる. 荷重は高齢者では主に転倒が原因で, その大きさが高齢者の骨の強さを越えるものであることが, 高齢期の骨折頻度上昇の基礎となる. そこでその予防を実現するには, 骨の強さを制御する方法がまず重要で, 最近の薬剤は骨密度増強効果だけでなく骨折予防のエビデンスを備えたものが増えつつある. これらは実際骨折を減少させるであろうが, 80歳以上の高齢者にも同様な効果が得られるのかにはまだ疑問がある. さらに荷重の制御による予防法として, 転倒予防策やヒッププロテクターなどがある. 環境条件や身体的因子を調整することで転倒を防ぎ, 骨折を予防しようという試みは大変重要である. また, ヒッププロテクターは転倒してしまったときに荷重減衰効果を発揮し, エビデンスも備えた手段として認められつつある.