2003 年 57 巻 3 号 p. 151-158
パルス・ドプラ法の普及にともない, 僧帽弁口および肺静脈血流速波形を用いて肺静脈―左房―左室連関としての左心系の血行動態異常を非観血的に評価することが可能となってきた. しかしながら, これらの波形から得られる指標はloading condition, 特にpreloadに影響されることが判明している. 近年, 新しく開発された組織ドプラ法は, 左室の心筋特性を容易に知ることができる手段として臨床面で応用され始めている. 特に本法は, 1) 短軸および長軸方向の情報が得られる, 2) 拡張早期指標は前負荷に影響されない, 3) 収縮早期指標は心筋の収縮性(contractility)を評価できる, 4) 左室の収縮期および拡張期asynchronyを検出できる, 5) 心筋速度勾配(myocardial velocity gradient)は心臓全体の動きに影響されない, 6) 心不全の予後の推定に有用である, などの特徴を有する. 今後, 機器の改良などにより, 虚血性心疾患や心筋症における心筋組織性状の評価が可能となることを期待したい.