抄録
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者の知的能力と認知処理特性を明らかにするため, 全国の国立療養所筋ジストロフィー施設において, 心理アセスメントを実施した. カウフマン心理・教育アセスメントバッテリー(K-ABC)の結果では, 継次処理尺度に比べ同時処理尺度優位の傾向がみられたものの有意差はなく, DMD固有の認知処理特性は認められなかった. また, 日本版WISC-III知能検査(WISC-III)では, 過去の報告とは逆に, 動作性IQ (PIQ)に比べ, 言語性IQ (VIQ)優位の傾向がみられた. その原因として上肢機能障害の進行等による動作性IQ (PIQ)の低下が考えられたが, さらに詳細な検討が必要である.
DMD患者の療育指導にあたっては, 個々の患者の優れた認知処理特性を活かした指導法の工夫により, 長所を伸ばし, 成功体験を積み重ねていくことが重要と考えられた.