医療
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進行性核上性麻痺患者の転倒・転落
―多施設共同研究―
村井 敦子饗場 郁子齋藤 由扶子沼崎 ゆき江外尾 英樹松下 剛松岡 幸彦湯浅 龍彦
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2004 年 58 巻 4 号 p. 216-220

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抄録

今回われわれは, 国立療養所に入院中の進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy: PSP)患者の転倒・転落について調査し, パーキンソン病(Parkinson disease: PD)患者と比較検討した.対象は平成14年7月1日から9月30日の3ヵ月間に国立療養所30施設に入院していたPSP 79名およびPD 432名. 転倒・転落した患者の割合はPSP 15%, PD 13.1%であった. 1人当りの転倒・転落回数はPSPでは平均2.1回/月, PDでは平均0.8回/月であり, PSPはPDに比べて有意に頻度が高かった(P<0.01).
PSPではPDに比べていずれのADLレベルにおいても1人当りの転倒・転落頻度が高く, 昼夜を問わずおこしていた. PSP・PDともに, 外傷の頻度は1/4以上で, 受傷部位は顔面・頭部・体幹に多かった. さらに, 入院1ヵ月以内の患者の転倒・転落の割合が半数近くであり, 排泄に関係して転倒・転落につながる場合が多いことが明らかになった. 防止策としてベッド柵を紐で固定したり, 車椅子に移乗する際にベルトを着用するなどをしているにもかかわらず防げず, PSP・PDでは, 転倒・転落を完全に無くすことは困難である. そして受傷を和らげるためにも個々の症例・要因に合わせた予防策が必要であり, また援助を中断せずともすむように充分な看護要員の配置が望まれる.

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© 一般社団法人国立医療学会
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