抄録
肺血栓塞栓症は, 重症例では致死性が高いにもかかわらず, その臨床症状に特異的なものが少ないために診断が看過されやすい疾患であると考えられる. 今回, 画像上は肺血栓塞栓症を示唆する所見を認めないものの, 臨床経過と, グレーブス病, プロテインC活性の低下という血栓性素因を有したことより, 深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症の存在が強く疑われた症例を経験した. 肺血栓塞栓症は致死性が高く, また, 決して稀な疾患ではないことを常に念頭に置き, 臨床的に疑われる際には積極的に鑑別疾患として挙げていくことが重要である.