医療
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非観血と低侵襲を目指す医療工学
松浦 弘幸野田 信雄小井手 一晴根本 哲也中野 正博
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2006 年 60 巻 12 号 p. 773-779

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抄録

多くの医療機器は, 非観血と低侵襲を目指して, 患者さんのQOLを改善すべく発展卿してきた. 血糖値測定機器の臨床現場では, グルコースを特異的に加水分解するグルコースオキシダーゼという酵素を利用して, 血中のグルコース値を測定している. その代表的な測定原理には, 反射光度法と固定化酵素電極法がある. しかし, ヒトの体表面から立ち上るガス状化学物質を分析して, 血糖値を推定する皮膚ガス生化学分析法や, 新たに複合センサーを開発し, 生体の代謝に関する熱エネルギー, 酸素供給量, 血流量などの各種の生理学的パラメータから, 血糖値を推定する機器などは, 新規の非観血的低侵襲検査法といえる. 放射光を用いた位相差法やX線暗視野法は, 従来のX線撮像法では得られなかった軟骨, 乳癌細胞や小脳などの軟部組織に対する新たな観察法を提案した. さらに, フェムトテクノロジーとしての放射線治療は, 試験的ではあるが炭素イオンやネオンイオンなどの重粒子を用いた治療に重点が移動しつつあり, その成果が期待されている.

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© 一般社団法人国立医療学会
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