医療
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押し出し式薬剤包装(PTP)誤飲によるS状結腸穿孔性腹膜炎の1例
―マルチスライスCTの3D再構成画像の有用性―
松元 恵輔吉廣 優子中尾 美也子古川 明日香吉村 未央野中 隆黨 和夫柴田 良仁本庄 誠司岡 忠之北村 慶福井 健一郎内藤 愼二
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2007 年 61 巻 8 号 p. 558-563

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抄録
症例は94歳, 男性. 腹痛, 嘔吐, 下痢を主訴に来院, 急性腸炎の疑いで保存的治療を行うも改善が認められなかった. 腹部CTの3D再構成画像にてS状結腸に押し出し式薬剤包装: press through package (PTP)様の人工構造物と思われる陰影とfree airを認めたため異物による穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術となった. S状結腸穿孔部には膿瘍形成が認められたため, 膿瘍を含め穿孔部を切除, 人工肛門造設術を施行した. 摘出した標本の膿瘍部からはPTP包装薬剤が採取された. 一般に消化管異物は乳幼児や高齢者に多く, 部位としては食道が90%と大半をしめる. 誤飲した異物のうち, 80-90%は自然排出されるが, 10-20%が内視鏡的に摘出され, 約1%が外科的処置を必要とする. 高齢者は, 本人の異物誤飲認識が低いことから病歴聴取での原因推測が困難な場合が多く, 腹膜炎症状を訴える高齢患者をみた場合には常に異物誤飲による腸管穿孔の可能性を念頭におき, 臨床症状と画像所見を入念に観察することが必要であると考えられ, CTの3D再構成画像はそれらの誤飲異物の検出に有用であると考えられた.
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© 一般社団法人国立医療学会
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