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安全ながん薬物療法におけるがん専門薬剤師の役割
加藤 裕久
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2008 年 62 巻 11 号 p. 604-608

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抄録
がん治療の高度化と集学的治療が発展し, 多種多様な抗がん剤の治療効果に関する知識と指導力そしてがん薬物療法の研究開発能力を併せ持つ「がん専門薬剤師」が求められている. このため, 日本病院薬剤師会の「がん専門薬剤師」認定制度が平成17年度より暫定的に, 平成18年度より正式に発足した. さらに, 平成19年度にはがん専門分野に係る一定水準の知識と技能を有する「がん薬物療法認定薬剤師」制度が新設された.
「がん専門薬剤師」の役割は, がん薬物療法の安全確保の向上, がん薬物療法の最適化の推進, 医療従事者への教育と情報提供, 臨床薬学的研究の推進と導入に集約できる.
がん薬物療法において医療安全を確保するためには, がん薬物療法の根幹をなすレジメン管理が非常に重要である. まず, 施設内でレジメンの審査・登録システムが構築されなければならない. そして, 抗がん剤に支持療法薬を加えたレジメンの院内標準化も重要となる. とくに, がん患者のQOLを考慮した外来化学療法が普及する中で, レジメン内容が統一化されなければ, 混合調製を担当する薬剤部門や患者への投与を担当する看護部門での医療安全と業務の合理化を十分に担保することができない. そのためには, 医師を含めた関連部門との相互的な協力体制の確立と専門分野の役割分担が必要となる.
多職種の専門スタッフががん薬物療法に参画することにより, 患者教育や患者からの要望を把握できれば, 医療安全管理のうえで意義深い. がん薬物療法に関わる医療従事者の専門性のさらなる充実が求められる.
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© 一般社団法人国立医療学会
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