国際ジェンダー学会誌
Online ISSN : 2434-0014
Print ISSN : 1348-7337
小児期発症女性1型糖尿病者の語りにみられる疾病の受容過程
―他者との関係性のなかで変容する「生きづらさ」―
髙口 僚太朗
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2021 年 19 巻 p. 91-111

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抄録
本稿は,小児期に1型糖尿病を発症した女性当事者の「生きづらさ」とはどのようなものかを明らかにすることを目的としている。しかし,その「生きづらさ」は必ずしも当事者自身が明確に意識しているわけではなく,それゆえ,限られた診察時間内での聴き取りからでは医療者はそうした「生きづらさ」をとらえることが難しいとされている。とはいえ,そうした明確に語られたり,意識することの少ない「生きづらさ」こそ,実は当事者自身の実存にかかわる問題としてとらえる必要があるのではないかとするのが本稿のねらいである。 本稿でとりあげる小児期発症1型糖尿病の当事者は,発症当初から学校社会での生活を重要視しており,そこでのクラスメイトとのかかわり合いのなかで「普通に生きる」自己像をそのつど構成‐挫折‐再構成しながらすごしている。そこで本稿は,そうした当事者の様子を疾患の受容過程という時間的視点から読み解いている。その結果,一方で病者である自己に直面し,他方で健康な女性であるためのふるまいを考えながら生活を送らなければならないという,いわば「病者」と「健常者」の間で揺れ動くかたちでの生きづらさを受け容れながらすごしていることが明らかとなった。
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© 2021 国際ジェンダー学会
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