1997 年 36 巻 4 号 p. 260-267
帯電プロセスをトナーからキャリア(正)およびキャリアからトナー(逆)への可逆的な電荷の移動と考え,速度論的モデルを導入した.一方,第4級アンモニウムタイプCCAをバインダー樹脂に付着させたモデルトナーを用いて二成分現像剤の帯電速度論を研究した.この速度論的モデルから飽和帯電量(qe)の逆数(1/qe)がトナー-キャリア重量比(mt/mc)に比例することが容易に導出され,1/qe軸の切片の逆数がキャリアからトナーへの電荷の移動がないときの帯電量(極限帯電量,α)であることがわかった.さらにこのモデルから導き出された1/qeとmt/mcとの関係式は,表面状態理論から得られたそれと,形式上,完全に一致した.モデルニ成分現像剤の速度論から,正-逆帯電速度定数比(k1/k-1=K)は一定であり,用いる材料固有の値であることもわかった.帯電速度定数(kobs)がArrheniusの式に従い,得られた活性化エネルギー(Ea)がVan der Waalsエネルギーに相当するものであることを初めて示した.この小さなEaの値から第4級アンモニウムタイプCCAでは,対イオンの移動が最も有利であると結論した.qeはkobsに依存せず,また極限帯電量,αは電荷発生部位の数に依らず,CCAの個体の性質に依存することがわかった.