理論と動態
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Print ISSN : 2185-4432
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寛容な場としての〈路上〉
野宿者の生活保護利用が進むなかで路上生活を肯定すること
室田 大樹
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2017 年 10 巻 p. 6-23

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抄録

 野宿者支援・運動は、2000年代以降行政による野宿者支援が制度化されるにつれ、行政との協働による路上脱却に力を注ぎ、路上生活の肯定という理念を後景化させてきた。生活保護を受けずに路上生活を継続するという野宿者の選択は、ますます非合理的で支持しがたいものとみなされている。本稿はこうした状況でなお路上生活を肯定し続けている支援・運動団体に着目し、路上生活を肯定する意義やそのための実践を明らかにするものである。

 参与観察によって明らかになったのは、〈路上〉に積極的な意味を見出す支援者の姿であった。〈路上〉には、施設から飛び出してくる者や「我慢」の足りない者など、いわゆる一般社会になじめない人々が存在している。もしくはうまく言葉にできない何らかの理由によって生活保護を望まない/望めない人々も存在する。この事実から出発する支援者は、多様な背景をもつ人々を受け入れる寛容な場として、また避難場所として〈路上〉を肯定的に捉えている。

 しかし〈路上〉は行政や世間から承認を得られていないため、日々縮小の危機(排除、襲撃、再開発など)に晒されている。そのため野宿者同士がつながり、日々の問題を共有、時として抵抗運動をつくりあげる場が必要となる。〈共同炊事〉とよばれる炊き出しは支援者と野宿者が共に公園で食事を作ることで、濃密なつながりを生んでいる実践である。また支援者は、新規参入者が入りやすいよう、また関係性が抑圧的なものにならないよう秩序を保つことで、多様な人々を受け入れる寛容な場を構築している。

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