JACET関東支部紀要
Online ISSN : 2436-1993
研究ノート
小学校英語検定教科書におけるイラスト及び写真から見た外国人の特徴
甲斐 順
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2024 年 11 巻 p. 46-66

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Abstract

The Course of Study for elementary schools, which was announced in 2017, was implemented in 2020. Since then, a foreign language has been taught as a school subject to fifth and sixth graders in Japan. The policy stipulates that students should learn English as a foreign language. Based on the official document, seven publishing companies have published authorized English textbooks for elementary schools. This study aims to examine and analyze the illustrations and photographs of foreigners in authorized English textbooks for elementary schools in terms of the characteristics of their appearance. The study finds that in terms of illustrations, more textbooks contain foreigners who are white while in terms of photographs, more textbooks contain foreigners who are non-white. The research also finds that textbooks deal with whites and non-whites living in different countries. Furthermore, the analysis of textbooks shows that the frequency of illustrations of main foreign characters is higher. The results indicate that there is a tendency toward white supremacy in authorized English textbooks for elementary schools.

1. はじめに

平成29年 (2017年) に告示された小学校学習指導要領が令和2年 (2020年) に全面実施され,小学校高学年 (5年生,6年生) に外国語科が導入された。外国語科においては,英語を履修させることを原則とすること (文部科学省, 2018) が明記され,小学校で英語が教科として指導されるようになった。これまでの外国語活動や学習指導要領の移行期間との大きな違いの1つは,授業で検定教科書が使用されていることである (佐藤, 2021)。高学年用の英語検定教科書は7社から出版され,小学校英語検定教科書に関する研究成果が近年次々と報告されている (大石, 2021; 小野, 2021; 佐藤, 2021; 高橋・柳, 2021; 田辺, 2021; 津村, 2021; 水澤, 2022; 和田, 2021)。

小学校の英語検定教科書は,イラストや写真などが多く,英単語や英文は非常に少ないことが指摘されている (佐藤, 2021)。イラストや写真などが多い背景の1つに,小学校学習指導要領の「英語」の言語活動に関する事項の「聞くこと」の中で「イラストや写真など」の視覚情報を用いて,聴覚による情報を理解・処理する言語活動を指導することが明記されていることが下地となっていることが挙げられるだろう。また,「読むこと」の言語活動に「音声で十分に慣れ親しんだ簡単な語句や基本的な表現を,絵本などの中から識別する活動」と明示され,「絵本」という言葉が見られる (田縁, 2023) ことも背景の1つと考えられる。児童が外国語に興味・関心を持てるよう,写真やイラストを多用し魅力的な紙面作りを各社が行っている (加藤, 2020) ことも大いに関係しているものと思われる。

イラストや写真などは視覚に訴え,時に鮮明な印象を与え,記憶としても残りやすい。英語を母語とするジャマイカ出身でカナダ国籍を有するNelson (2019) は,日本国内で英語のインストラクターとしてデモレッスンを行っている際に,若い男性から「カナダ人は白人だと思っていた」と言われたことがあると述べている。レッスンで使用していたビジュアル教科書のために,カナダ人が白人であるとその男性に確信させるようになったのではないかとNelsonは言う。

鳥越 (2019) は,大学生104名を対象に「外国人」「移民」「外国人労働者」という言葉を聞いてそれぞれどのような人物を思い浮かべるか調査した。その結果,「外国人」という言葉からイメージされる人物像についての回答の多くがヨーロッパ系白人というものであった。外見についての言及が多く,肌や眼の色,髪の色,骨格の違いなどについて描写しているものが多く見られ,回答例から,金髪・白人・眼の色が青いということが読み取れた。

こういった外国人に対するイメージはテレビや映画などの影響も考えられるが,Nelson (2019) が指摘するように教科書,とりわけ教科書で用いられているイラストや写真も少なからぬ影響を与えているのではないだろうか。大石 (2021) では7種類の小学校英語検定教科書を調査分析し,教科書内で描かれているALTの8人中5人が白人系であったと述べている。杉山 (2020) は,6種類の中学校英語検定教科書を調査分析し,過去の教科書と比較すると登場人物の出身国及び外見的特徴は多様になっていることを明らかにするとともに「白人至上主義的な傾向」も見られることを指摘している。

本研究では,小学校英語検定教科書7種類を対象に,イラスト及び写真に登場する外国人を抽出し,外見的特徴から小学校英語検定教科書で描かれている外国人を分析し,考察する。

2. 先行研究

本節では,小学校英語検定教科書に登場する人物についての先行研究を概観し,本研究の目的を述べる。

田辺 (2021) は,小学校英語教科書において異文化理解がどのように扱われてきたかを,外国語活動の共通教材『Hi, friends! 1, 2』 (以下,HF),指導要領の移行期間中の小学校5・6年生対象の『We Can! 1, 2』 (以下,WC),小学校英語検定教科書『NEW HORIZON Elementary English Course 5, 6』 (以下,NHE) の3種類の教科書を調査対象として,紙面と音声スクリプトに登場する外国と外国人を抽出し,その数や内容を比較するとともに,異文化理解を文化理解的アプローチと問題解決型アプローチの2つから分析を行った。その結果,登場する外国の数は,HFが15か国,WCが21か国,NHEが45か国で,NHEが最も多く,地域のバランスもとれていることが判明した。登場する外国人で名前のある人の数は,HFが3人,WCが13人,NHEが35人で,NHEが最も多いだけでなく,登場する外国人の背景設定が現実的で身近なものとなっていることを指摘する。異文化理解のアプローチの方法については,HF及びWCは文化理解的なアプローチが主流であったのに対して,NHEは文化理解的なアプローチにより異文化理解を多面的に扱うとともに,問題解決型アプローチを明示的に取り入れるなどの工夫が見られることが判明した。田辺 (2021) が認めているように,HF, WC, NHEの3種類を時系列,つまり縦の比較に焦点を当てて分析を行っているが,小学校英語検定教科書は1種類しか分析ができておらず,他の6種類の小学校英語検定教科書についても同様な比較分析することが望まれる。

水澤 (2022) は,7種類の小学校英語検定教科書に描写されるジェンダーを分析し,多様性と画一性を探るために,教科書の絵 (写真) の部分とことばの部分を析出したのち,絵とことばといった異なるモードから作られる意味を考察した。その結果,成人と児童の描写の違いが顕著であることが判明した。成人に関しては,職業も含め,旧来の性的役割分担が多く描写されており,児童に関しては,多様性をもった描写が多かった。例えば,女子児童が暖色を好み,男子児童が寒色を好むといったステレオタイプ的な描写は見られず,児童が身につけるものの色合いは,多様性に富んでいた。料理する (to cook, to make) や助ける (to help) といった一部の行為では,従来の性的役割分担が確認された。教科書に描写されていることばや絵が,児童の社会化に影響を与え,固定化した性別役割分担の再生産となり,日本の男女共同参画社会の促進を妨げる一因となりかねないと水澤は警鐘を鳴らす。

津村 (2021) は編集方針,製本仕様,課の構成内容などの観点から7種類の小学校英語検定教科書について分析を行った。分析結果から,コミュニケーションを図る資質・能力 (知識及び技能,思考力・判断力・表現力等,学びに向かう力・人間性等) を育成すべく,4技能5領域 (「聞くこと」「読むこと」「話すこと (やり取り)」「話すこと (発表)」「書くこと」) の活動,複数の領域との統合的な活動,CAN-DO形式による学習到達目標の明示,音声や動画の二次元コード (QRコード) の設置,独自の手書き書体の開発,4本線の工夫 (幅・線種・色合い),他教科との横断的学習,カラーユニバーサルデザイン等の特別支援教育への配慮,小中連携など,新学習指導要領を遵守しつつも,各出版社では様々な創意工夫を随所に凝らした魅力的な教科書作成が行われていることが明らかになった。津村 (2021) は主要な登場人物の出身国別人数についても調査し,日本が29人,アメリカが9人,インド,オーストラリア,シンガポールが各3人,カナダ,フィリピン,ブラジルが各2人,イギリス,中国,フィンランドが各1人であることを明らかにするとともに,全ての教科書にモデルとしての英語を母語とする国の人物だけでなく,英語を第2言語として生活で使用している国の人物も登場していることを示している。

大石 (2021) も,7種類の小学校英語検定教科書について調査しているが,教科書に登場する外国人 (児童とALT) の出身地及び教科書で使用されている音声に焦点を絞っている。分析の結果, Kachru (1985) が提唱した中心円,外周円,拡張円の3つの分類で見ると,外国人児童については,アメリカとオーストラリアという中心円の国に加えて,外周円であるシンガポールとインド,さらに中国とブラジルという拡張円の児童が主要な登場人物として描かれていることが判明した。また,出身国が判明できるALTについては,全てが中心円の国の出身者で,8人中5人が白人系であることも分かった。こうした傾向から,教科書のALTの表象は「母語話者志向」的であると指摘する。さらに教科書で使用されている英語音声については,全てがアメリカ英語であり,日本人児童やアメリカ合衆国以外の出身の外国人児童の話す英語にも,アメリカ英語の音声が使用されている教科書があることが判明した。小学校英語教育における英語音声に関する「母語話者 (アメリカ) 志向」を強化する可能性を大石は指摘する。この研究で興味深いのは,出身国が確認できるALT全員が中心円を出身国としており,8人中5人が白人系であるという点である。これは,前節で触れたNelson (2019) のビジュアル教科書で学習した若い男性が,「カナダ人は白人だと思っていた」という日本におけるインストラクターの体験談に通じるものがある。英語を母語とする国出身のALTが白人として教科書で描かれていれば,「英語母語話者は白人である」といった誤ったイメージを学習者が抱いてしまう可能性がある。ただし,大石 (2021) の研究では,外国人児童については登場人物に関する説明が付与されているものだけを対象としており,国旗等の情報から判別可能な児童については分析を行っていない。

小学校の英語検定教科書ではないが,中学校の英語検定教科書に描かれるイラストの登場人物から,人種・民族の多様性を探った研究に杉山 (2020) がある。この研究では,6種類の中学校英語検定教科書を対象に,イラストや写真などで外見を判断でき,かつ名前や立場 (e.g. ~s mother) で他の人物と区別できる登場人物について分析を行った。その結果,登場人物の出身国及び外見的特徴がより多様になっていることが明らかにされている。それ以前の検定教科書と比べ,肌・髪・眼の色が濃い人物の割合が増えてはいるが,白人至上主義的な傾向が残っていることも指摘されている。その傾向の1例として,中学校英語検定教科書の中で英語話者のモデルとされているのは,肌・髪・眼の色が薄く描かれている「白人」と推定される人物が多く描かれていることを挙げる。まず,英語を第1言語もしくは公用語として使用する国 (アメリカ,イギリス,インド,カナダ,ケニア,オーストラリア,シンガポール,ニュージーランド,フィリピン,南アフリカ) の出身者について外見的特徴を分析したところ,5社の教科書では6割から7割程度の人物が肌・髪・眼の色が薄い人物であった。また,外国人教師であることが明らかな人物計14人について外見的特徴の分析を行ったところ,出身国が判明している人物7人全員が英語を母語とする国 (アメリカ,イギリス,オーストラリア,カナダ) の出身であり,先の14人中12人は肌・髪・眼の色が薄く描かれている人物であった。

これまでの小学校英語教科書における登場人物について触れた先行研究からジェンダーや主要な登場人物に関する出身国については調査が行われているが,主要な登場人物以外の外国人について行った研究は田辺 (2021) のみである。ただし,田辺 (2021) の研究は1社の英語検定教科書における外国人を調査しただけであり,他の6社の教科書については行っていない。また,杉山 (2020) の中学校英語検定教科書で行われたような外見的特徴から7社全ての小学校英語検定教科書に登場する外国人のイラストや写真を対象に調査を実施した研究は行われていない。杉山 (2020) は,中学校英語検定教科書では「白人」と推定される登場人物が多く描かれていると指摘し,小学校英語検定教科書では,大石 (2021) がALTにその傾向が見られることを指摘している。ただし,他の外国人については明らかにされていない。津村 (2021) では,主要な登場人物の出身国別人数を示しているが,教科書に登場する他の外国人については調査を行っていない。

そこで本研究では,イラスト及び写真に登場する外国人を抽出し,外見的特徴から小学校英語検定教科書で描かれている外国人の出身国及び登場する頻度を分析し,考察する。ただし,出身国が不明の場合は,外見的特徴からのみ分析を行う。また,外国人の先生 (ALT) やそれに纏わる「英語」に関しても分析を行う。

3. 方法

3.1 分析対象

本研究で分析対象とする小学校英語検定教科書は,表1に示した小学校高学年用に発行されている7社の14冊である。

表1 小学校英語検定教科書名及び出版社

検定教科書名 出版社
NEW HORIZON Elementary English Course 5, 6 (以下,NHE)
Junior Sunshine 5, 6 (以下,JS)
JUNIOR TOTAL ENGLISH 1, 2 (以下,JTE)
CROWN Jr. 5, 6 (以下,CJ)
ONE WORLD Smiles 5, 6 (以下,OWS)
Here We Go ! 5, 6 (以下,HWG)
Blue Sky elementary 5, 6 (以下,BSE)
東京書籍
開隆堂
学校図書
三省堂
教育出版
光村図書
新興出版社啓林館

3.2 分析範囲

本研究では,表紙の裏から裏表紙の裏までとし,目次なども含めて分析を行う。教科書によっては,表紙の裏に主要登場人物の紹介,国旗や言語などとともに人物の紹介が行われているからである。主要登場人物が表紙及び裏表紙に登場している教科書もあるが,表紙については水澤 (2022) で言及されているため分析範囲からはずした。

3.3 分析方法

本研究では,杉山 (2020) を参考に,イラストや写真などで外見を判断でき,紙面やQRコードで入手した音声から名前や立場 (e.g. ~’s mother),国旗やコメントから国名が判断できる外国人,店員など単元内で描かれている出身国が不明の外国人について分析を行う。ただし,写真の中には多人数で掲載されているため,特定することが不可能な人物は分析から除外した。また,世界中で知られている有名人 (例,マララ・ユスフザイ) は分析から外した。登場する外国 (出身国),外国人 (特に主要登場人物) の頻度についても分析する。外見的特徴については,杉山 (2020) で用いられている肌の色素タイプのスケールであるFitzpatrick scaleを参考に,肌・髪・眼の色が薄い人物 (Type1-2に相当),濃い人物 (Type3-6に相当),判別困難な人物の3段階に分類した。

4. 結果

表2は,イラスト及び写真で登場する外国人を外見的特徴から小学校英語検定教科書ごとに示したものである。

表2 イラスト及び写真で登場する外国人の外見的特徴

外見的特徴 NHE
(N = 144)
JS
(N = 103)
JTE
(N = 136)
CJ
(N = 127)
OWS
(N = 270)
HWG
(N = 223)
BSE
(N = 136)
肌・髪・眼の色が薄い 64 (44.4) 34 (33.0) 91 (66.9) 58 (45.7) 122 (45.2) 76 (34.1) 69 (50.7)
肌・髪・眼の色が濃い 79 (54.9) 66 (64.1) 44 (32.4) 69 (54.3) 141 (52.2) 143 (64.1) 61 (44.9)
判別困難 1 (0.7) 3 (2.9) 1 (0.7) 0 (0.0) 7 (2.6) 4 (1.8) 6 (4.4)

注. ( ) 内の数字は%を表す。

「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書はJTE,BSEの2社で,他の5社はいずれも「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多い。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は514人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は603人で,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計が多い。

より詳細にみるため,イラストと写真に分けてみていく。表3は,イラストで登場する外国人の外見的特徴を示したものである。

表3 イラストで登場する外国人の外見的特徴

外見的特徴 NHE
(N = 30)
JS
(N = 35)
JTE
(N = 123)
CJ
(N = 78)
OWS
(N = 148)
HWG
(N = 138)
BSE
(N = 97)
肌・髪・眼の色が薄い 21 (70.0) 16 (45.7) 83 (67.5) 40 (51.3) 85 (57.4) 64 (46.4) 58 (59.8)
肌・髪・眼の色が濃い 9 (30.0) 19 (54.3) 39 (31.7) 38 (48.7) 63 (42.6) 70 (50.7) 36 (37.1)
判別困難 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (0.8) 0 (0.0) 0 (0.0) 4 (2.9) 3 (3.1)

注. ( ) 内の数字は%を表す。

イラストの場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書はNHE,JTE,CJ,OWS,BSEの5社となっており,先ほどよりも3社増えている。JSとHWGは「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が引き続き多い。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は367人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は274人で,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計が多い。

次に写真の場合をみていく。表4は,写真で登場する外国人の外見的特徴を示したものである。

表4 写真で登場する外国人の外見的特徴

外見的特徴 NHE
(N = 114)
JS
(N = 68)
JTE
(N = 13)
CJ
(N = 49)
OWS
(N = 122)
HWG
(N = 85)
BSE
(N = 39)
肌・髪・眼の色が薄い 43 (37.7) 18 (26.5) 8 (61.5) 18 (36.7) 37 (30.3) 12 (14.1) 11 (28.2)
肌・髪・眼の色が濃い 70 (61.4) 47 (69.1) 5 (38.5) 31 (63.3) 78 (63.9) 73 (85.9) 25 (64.1)
判別困難 1 (0.9) 3 (4.4) 0 (0.0) 0 (0.0) 7 (5.7) 0 (0.0) 3 (7.7)

注. ( ) 内の数字は%を表す。

写真の場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書はJTEのみとなり,他の6社の教科書はすべて「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多くなっている。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は147人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は329人で,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計が多い。

イラストと写真を合わせると「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書は2社であったが,イラストだけをみると「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書は5社となり,増加している。合計数を比較した場合も,写真の方が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人が多数登場していた。

次に出身国が判明している外国人の外見的特徴をイラストの観点からみてみる。表5はそれを示したものである。

表5 出身国が判明している外国人の外見的特徴 (イラスト)

外見的特徴 NHE
(N = 16)
JS
(N = 19)
JTE
(N = 32)
CJ
(N = 20)
OWS
(N = 17)
HWG
(N = 20)
BSE
(N = 28)
肌・髪・眼の色が薄い 4か国 (9)
アメリカ (1)
シンガポール (6)
スウェーデン (1)
ブラジル (1)
3か国 (6)
イギリス (1)
オーストラリア (1)
カナダ (4)
8か国 (16)
アメリカ (2)
イギリス (5)
イタリア (2)
オーストラリア (1)
カナダ (1)
ドイツ (3)
ニュージーランド (1)
ロシア (1)
7か国 (9)
アメリカ (2)
イギリス (2)
イタリア (1)
オーストラリア (1)
スロバキ (1)
フィンランド (1)
ロシア (1)
5か国 (5)
イギリス (1)
イタリア (1)
スペイン (1)
フランス (1)
ロシア (1)
7か国 (7)
イタリア (1)
オーストラリア (1)
カナダ (1)
フィンランド (1)
ブラジル (1)
フランス (1)
ロシア (1)
8か国 (12)
アメリカ (1)
イギリス (1)
イタリア (3)
インド (1)
オーストラリア (2)
ニュージーランド (1)
フランス (2)
ロシア (1)
肌・髪・眼の色が濃い 7か国 (7)
インド (1)
ガーナ (1)
韓国 (1)
ケニア (1)
タイ (1)
トルコ (1)
モンゴル (1)
7か国 (13)
アメリカ (5)
インド (1)
カナダ (1)
ケニア (1)
シンガポール (1)
トルコ (1)
ブラジル (3)
10か国(16)
アメリカ (1)
アルゼンチン (1)
イギリス (1)
イタリア (1)
インド (6)
エチオピア(1)
中国 (2)
ネパール (1)
ブラジル (1)
ベトナム (1)
7か国 (11)
アメリカ (1)
インド (2)
韓国 (2)
ケニア (1)
スロバキア(2)
中国 (2)
ブラジル (1)
7か国 (12)
インド (2)
オーストラリア (2)
カナダ (1)
中国 (1)
トルコ (1)
ブラジル (1)
ベトナム (4)
7か国 (11)
アメリカ (3)
インド (2)
カナダ (2)
韓国 (1)
ドイツ (1)
フィンランド (1)
ブラジル (1)
13か国 (15)
アメリカ (1)
イタリア (1)
インド (1)
韓国 (1)
ケニア (2)
シンガポール (1)
スペイン (1)
中国 (1)
ニュージーランド (1)
フィリピン (1)
ブラジル (1)
フランス (1)
メキシコ (2)
判別困難
1か国 (2)
オーストラリア (2)
1か国 (1)
中国 (1)

注. ( ) 内の数字は人数を表す。

「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の出身国は,3か国が1社 (JS),4か国が1社 (NHE),5か国が1社(OWS),7か国が2社 (CJ,HWG),8か国が2社 (JTE, BSE) となっている。アメリカ,イギリス,オーストラリア,フランス,ロシアなど欧米系を中心とした国々が見られる。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の出身国は,7か国が5社 (NHE,JS,CJ,OWS,HWG),10か国が1社 (JTE),13か国が1社 (BSE) となっている。出身国はアメリカ,インド,カナダ,韓国,ケニア,中国,トルコ,ブラジル,ベトナムなどで,ケニア出身者は4社 (NHE,JS,CJ,BSE) も取り上げられている。ガーナ (NHE) やエチオピア (JTE) やネパール (JTE) などの国々も取り扱われ,出身国は多様化している。判別困難な教科書は2社 (HWG,BSE) だった。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は64人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は85人で,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計が多い。

次に出身国が判明している外国人の外見的特徴を写真の観点からみてみる。表6はそれを示したものである。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の出身国は,3か国が2社 (JTE,BSE),4か国が2社 (CJ,HWG),7か国が2社 (NHE,OWS),8か国が1社 (JS) となっている。イラストの場合と同じように,アメリカ,イギリス,イタリア,オーストラリア,フランス,ロシアなど欧米系を中心とした国々が見られる。イスラエルを取り上げている国も1社 (JTE) 見られる。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の出身国は,2か国が1社 (JTE),5か国が1社 (BSE),7か国が1社 (CJ),10か国が1社 (HWG),13か国が2社 (NHE,JS),18か国が1社 (OWS) となっている。出身国はアメリカ,インド,オーストラリア,カナダ,韓国,ケニア,中国,トルコ,ブラジル,フランス,ベトナムなどで,エジプト (OWS),パラグアイ (HWG),南アフリカ (HWG) などの国々も取り上げられており,写真の方がイラストよりもさらに出身国は多様化している。判別困難な教科書は2社 (NHE,OWS) だった。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は70人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は163人で,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計が多い。

表6 出身国が判明している外国人の外見的特徴 (写真)

外見的特徴 NHE
(N = 56)
JS
(N = 44)
JTE
(N = 7)
CJ
(N = 29)
OWS
(N = 66)
HWG
(N = 20)
BSE
(N = 15)
肌・髪・眼の色が薄い 7か国 (21)
アメリカ (10)
イギリス (5)
イタリア (1)
オーストラリア (2)
カナダ (1)
トルコ (1)
ロシア (1)
8か国 (10)
アメリカ (1)
イタリア (1)
オーストラリア (1)
スペイン (1)
ドイツ (2)
ブラジル (1)
フランス (1)
ロシア (2)
3か国 (5)
イスラエル (3)
オーストラリア (1)
ロシア (1)
4か国 (8)
イタリア (1)
フィンランド(5)
フランス (1)
ロシア (1)
7か国 (18)
アメリカ (2)
イタリア (2)
オーストラリア (3)
スペイン (1)
フィンランド(7)
ルーマニア (1)
ロシア (2)
4か国 (4)
アメリカ (1)
イギリス (1)
オーストラリア (1)
フランス (1)
3か国 (4)
アメリカ (2)
イギリス (1)
フランス (1)
肌・髪・眼の色が濃い 13か国 (34)
アメリカ (7)
イタリア (1)
オーストラリア (2)
ガーナ (7)
ケニア (7)
サウジアラビア (2)
スウェーデン(1)
中国 (1)
ドイツ (1)
ニュージーランド (2)
フランス (1)
ベトナム (1)
ペルー (1)
13か国 (34)
アメリカ (4)
インド (10)
オーストラリア (1)
カナダ (1)
韓国 (5)
ケニア (2)
サウジアラビア (1)
スペイン( 1)
中国 (2)
トルコ (1)
ブラジル (4)
ペルー (1)
メキシコ (1)
2か国 (2)
イスラエル (1)
ロシア (1)
7か国 (21)
アメリカ (1)
インド (1)
韓国 (1)
ケニア (9)
中国 (1)
ブラジル (7)
フランス (1)
18か国 (45)
アメリカ (5)
イタリア (2)
インド (1)
エジプト (1)
オーストラリア (4)
韓国 (1)
シンガポール(5)
スペイン (10)
タイ (6)
中国 (1)
フィンランド(1)
ブラジル (2)
フランス (1)
ベトナム (1)
ペルー (1)
南アフリカ (1)
メキシコ (1)
ルーマニア (1)
10か国 (16)
イギリス (2)
スペイン (1)
タイ (4)
中国 (1)
トルコ (1)
パラグアイ (1)
フィリピン (1)
ブラジル (3)
マレーシア (1)
南アフリカ (1)
5か国 (11)
アメリカ (6)
インド (2)
スペイン (1)
ニュージーランド (1)
ブラジル (1)
判別困難 1か国 (1)
アメリカ (1)
1か国 (3)
アメリカ (3)

注. ( ) 内の数字は人数を表す。

今度は出身国が不明の外国人の外見的特徴をイラストの観点からみてみる。表7はそれを示したものである。

表7 出身国不明の外国人の外見的特徴 (イラスト)

外見的特徴 NHE
(N = 14)
JS
(N = 16)
JTE
(N = 91)
CJ
(N = 58)
OWS
(N = 131)
HWG
(N = 118)
BSE
(N = 69)
肌・髪・眼の色が薄い 12 (85.7) 10 (62.5) 67 (73.6) 31 (53.4) 80 (61.1) 57 (48.3) 46 (66.7)
肌・髪・眼の色が濃い 2 (14.3) 6 (37.5) 23 (25.3) 27 (46.6) 51 (38.9) 59 (50.0) 21 (30.4)
判別困難 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (1.1) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (1.7) 2 (2.9)

注. ( ) 内の数字は%を表す。

「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書はHWGを除く6社となっている。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は303人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は189人で,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計が多い。

次に出身国が不明の外国人の外見的特徴を写真の観点からみてみる。表8はそれを示したものである。

表8 出身国不明の外国人の外見的特徴 (写真)

外見的特徴 NHE
(N = 58)
JS
(N = 24)
JTE
(N = 6)
CJ
(N = 20)
OWS
(N = 56)
HWG
(N = 65)
BSE
(N = 24)
肌・髪・眼の色が薄い 22 (37.9) 8 (33.3) 3 (50.0) 10 (50.0) 19 (33.9) 8 (12.3) 7 (29.2)
肌・髪・眼の色が濃い 36 (62.1) 13 (54.2) 3 (50.0) 10 (50.0) 33 (58.9) 57 (87.7) 14 (58.3)
判別困難 0 (0.0) 3 (12.5) 0 (0.0) 0 (0.0) 4 (7.1) 0 (0.0) 3 (12.5)

注. ( ) 内の数字は%を表す。

「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書はなく,JTE及びCJは同数であった。他の5社 (NHE,JS,OWS,HWG,BSE) は「「肌・髪・眼の色が濃い」外国人を多く扱っていることがわかる。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計は77人,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計は166人で,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計が多い。イラストでは「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数の合計数が「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数の合計数を上回っていたが,写真では逆転していた。

ここからは教科書ごとに頻度が多い外国人についてみていく。まずはNHEからみていく。NHEで1位はEmily Smithの頻度62回が最高で,2位はLucas Silvaの45回,3位はLisa Greenの11回,4位はEmilyの母の9回,5位は,Emilyの父の5回,以降4回が1人,3回が2人,2回が10人,1回が125人であった。表9はNHEに登場する上位5位までの外国人である。

表9 NHEに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 Emily Smith シンガポール 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 62
2 Lucas Silva ブラジル 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 45
3 Lisa Green アメリカ 肌・髪・眼の色が薄い 英語の先生 11
4 Emilyの母 シンガポール 肌・髪・眼の色が薄い 不明 9
5 Emilyの父 シンガポール 肌・髪・眼の色が薄い パン職人 5

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

表9からわかるように「肌・髪・眼の色が薄い」外国人で上位5位までを占めている。また,主要登場人物が3位までを占めている。上位2人の小学生が頻繁に登場することがわかる。田辺 (2021) では,1位のEmily Smithが頻度54回,2位のLucasが33回,3位のLisa Greenが32回,4位のMartin (スウェーデン) が6回,5位のDeepa (インド) が5回となっており,本研究の調査結果と異なっている。これは,田辺 (2021) との調査方法の違いにあると考えられる。田辺では,「紙面または音声スクリプト」に登場する名前がある外国人を抽出しているだけでなく,何らかの情報を発信した者だけを抽出し,歌やチャンツも同様に扱っているのに対して,本研究ではイラストや写真などで外見を判断でき,紙面やQRコードで入手した音声から名前や立場 (e.g. ~’s mother),国旗やコメントから国名が判断できる外国人,店員など単元内で描かれている出身国が不明の外国人について,表紙の裏から裏紙の裏まで分析を行っており,頻度に差が生じていると思われる。なお,「教室英語」 (NHE 5, p. 8) では,ALTと思われる先生 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」) が描かれている。

次にJSに登場する外国人をみていく。JSで最も登場頻度が多かったのは,ハンナ・クラークの28回で,2位はジム・ヤンの26回,3位はエイミー・ブラウンとボブ・デイビスの2人で6回,5位は5年生用の教科書の中で扱われる教科の科目「英語教科書」の表紙に描かれている金髪の白人の女の子 (「肌・髪・眼の色が薄い」) と黒髪の黒人の男の子 (「肌・髪・眼の色が濃い」) の2人で4回,以降頻度3回が2人,2回が10人,1回が85人であった。表10はJSに登場する上位5位までの外国人である。

表10 JSに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 ハンナ・クラーク アメリカ (ハワイ) 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 28
2 ジム・ヤン シンガポール 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 26
3 エイミー・ブラウン カナダ 肌・髪・眼の色が薄い 先生 6
3 ボブ・デイビス アメリカ (ニューヨーク) 肌・髪・眼の色が濃い 先生 6
5 不明 不明 肌・髪・眼の色が薄い 不明 4
5 不明 不明 肌・髪・眼の色が濃い 不明 4

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

いずれも主要登場人物である外国人4人が上位を占め,上位2人は小学生で,3位と4位の先生を大きく離している。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の方が多いことがわかる。

次にJTEに登場する外国人についてみる。JTEで最も登場頻度が多かったのは,Emmaの142回,2位はNeilの129回,3位はMs. Jonesの94回,4位はLilyの53回,5位はAnnaの21回,以下18回,17回が1人ずつ,11回が3人,8回が3人,7回が4人,6回が1人,5回が3人,4回が3人,2回が14人,1回が97人だった。表11はJTEに登場する上位5位までの外国人である。

表11 JTEに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 Emma 不明 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 142
2 Neil 不明 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 129
3 Ms. Jones オーストラリア 肌・髪・眼の色が薄い 英語の先生 94
4 Lilly
(Emmaの妹)
不明 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 53
5 Anna
(Emmaの母)
不明 肌・髪・眼の色が薄い 不明 21

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

主要登場人物の外国人が上位3位までを占めている。これまでの2社の登場人物とは異なり2位までは頻度が100回を超えている。2位に入っているNeilを除くと他の4人は,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人となっている。この5人に続くのは,Shaggy’s Storyというイギリスのコッツウォルズに住む犬のShaggyを中心としたお話で,その飼い主であるBella (女,「肌・髪・眼の色が薄い」) の18回となっている。なお,‘speak English’ (JTE 1, p. 89) と書かれた英語の横に,‘Hello’と言っている外国人 (女,「肌・髪・眼の色が薄い」) が描かれている。レストランなどの注文をとるウエイター (JTE 1, p. 110) やアイスクリームの店員 (JTE 1, pp. 107-108) が「肌・髪・眼の色が薄い」人物として描かれている。

次にCJに登場する外国人についてみる。CJで最も登場頻度が多かったのは,「教室で使う英語」のやり取りを表したイラストで,金髪で肌の白い男性が主要登場人物の外国人の27回,2位はNick Jonesの24回,3位はKatie Adamsの23回,4位はTanya Kumarの20回,5位はWang Mingの16回,以下8回が2人,7回が8人,6回が3人,5回が2人,4回が8人,3回が3人,2回が11人,1回が84人であった。表12はCJに登場する上位5位までの外国人である。

表12 CJに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 不明 肌・髪・眼の色が薄い 先生
(教室で使う英語)
27
2 Nick Jones アメリカ 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 24
3 Katie Adams オーストラリア 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 23
4 Tanya Kumar インド 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 20
5 Wang Ming 中国 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 16

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

1位を除く,2位から5位までは主要登場人物である外国人が占めている。1位は「教室で使う英語」のやり取りを表したイラストで,金髪で肌の白い男性が主要登場人物の外国人をおさえて,27回も登場している。この他に先生は,He is a teacher.のHeをなぞり書きする英文の横の写真が,金髪で青い眼をした白人の先生 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,CJ 5, p. 48) となっている,児童と談笑する金髪の先生 (女,「肌・髪・眼の色が薄い」,CJ 6, p. 25, p. 97) や青い眼で金髪,白い肌のALTと思われる外国人 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,CJ 6, p. 26, p. 28, p. 30, p.32),サントス先生 (女,「肌・髪・眼の色が濃い」,CJ 5, p. 39) が見られる。

次にOWSに登場する外国人についてみる。OWSで最も登場頻度が多かったのは,Tomの14回,2位はEllyの11回,3位はDanの9回,4位はHannaとMs. Greenの6回,以下5回が1人,4回が4人,3回が2人,2回が32人,1回が226人であった。表13はOWSに登場する上位5位までの外国人である。

表13 OWSに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 Tom 不明 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 14
2 Elly 不明 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 11
3 Dan
不明 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 9
4 Hanna
不明 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 6
4 Ms. Green
不明 肌・髪・眼の色が濃い 先生 6

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

上位4位までを主要登場人物の外国人が占めている。「肌・髪・眼の色が薄い」人物が2人に対して,「肌・髪・眼の色が濃い」人物が3人となっている。4位のMs. Green (女,「肌・髪・眼の色が濃い」,OWS 5, p. 40 / OWS 6, p. 29, p. 51, p. 71, p. 79, p. 91) はActivityやLet’s Thinkなどのコーナーで登場する。この上位4位の5人に次ぐのは主要登場人物のMike (男,「肌・髪・眼の色が濃い」) の5回となっている。主要登場人物である外国人の先生Mr. Santos (男,「肌・髪・眼の色が濃い」) は4回となっている。先生は他にMs. Jones (女,「肌・髪・眼の色が薄い」,OWS 6, p. 5, p. 46, p. 93) が3回,ALT (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,OWS 5, p. 20 / OWS 6, p. 61, p. 100) が3回,写真の中で黒板に板書している外国人 (女,「肌・髪・眼の色が薄い」,OWS 6, p 97),Classroom Englishの中の「英語での言い方を聞く」の先生 (女,「肌・髪・眼の色が薄い」,OWS 6, p. 4) ,英語部の顧問 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,OWS 6, p. 111) がある。巻末資料の中の ‘speak English’ という語彙の中では外国人 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,OWS 5, p. 133) と男の子が英語でやりとりしている様子が描かれている。

次にHWGに登場する外国人についてみる。HWGで最も登場頻度が多かったのは,Nicholas Riosの102回,2位はLily Smithの71回,3位はAsha Bindraの32回,4位はMs. Olivia Millerの29回,5位はTinaの19回,以下17回,12回がそれぞれ1人,11回が2人,10回,9回が1人ずつ,8回が6人,7回が2人,6回,5回,4回がそれぞれ4人,3回が11人,2回が28人,1回が154人であった。表14はHWGに登場する上位5位までの外国人である。

表14 HWGに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 Nicholas Rios
アメリカ (ニューヨー) 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 102
2 Lily Smith オーストラリア (シドニー) 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 71
3 Asha Bindra
インド (ニューデリー) 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 32
4 Ms. Olivia Miller カナダ (トロント) 肌・髪・眼の色が濃い 英語の先生 29
5 Tina
(Nicholasの姉)
アメリカ 肌・髪・眼の色が濃い 中学生 19

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

上位4位までを主要登場人物の外国人が占めており,1位のNicolasは100回を超えて登場している。5位のTinaはNicholasの姉である。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の方が「肌・髪・眼の色が薄い」外国人よりも多くなっている。この5人の次に頻度の多いのは,Lilyの兄のDan (男,「肌・髪・眼の色が薄い」) で,バスケットボールを手にして,車椅子に乗った青年として描かれ17回登場する。車椅子を使う理由はイラストからは不明だが,車椅子バスケットボールが上手であることは本文で紹介されている (HWG 5, p. 112)。なお,英語の先生はMs. Olivia Miller以外には,「教室で使う英語」で,頻度は1回であるが,Ms. Collins (女,「肌・髪・眼の色が濃い」,HWG 5, p. 16),Mr. Jones (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,HWG 6, p.14),巻末のActivitiesの中で教室の黒板にappleと板書する外国人 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,HWG 5, p. 130) が見られる。HWGでは出身が異なり,肌・髪・眼の色と名前が判明している12人の外国人が写真でそれぞれ10回前後取り上げられているのも特徴である。例えば,Arushi (女,「肌・髪・眼の色が濃い」) はインド系のイギリス人で11回も登場する。

最後にBSEに登場する外国人についてみる。BSEで最も登場頻度が多かったのは,Emmaの40回,2位はJimmyの35回,3位はMr. Richard Smithの21回,4位はRyanとGrandpaの9回,以下8回,7回が各1人,6回が2人, 4回が3人,3回が3人,2回が14人,1回が106人であった。表15はBSEに登場する上位5位までの外国人である。

表15 BSEに登場する外国人 (頻度順上位5位まで)

順位 名前 性別 出身国 外見的特徴 職業 頻度
1 Emma 不明 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 40
2 Jimmy 不明 肌・髪・眼の色が薄い 小学生 35
3 Mr. Richard Smith 不明 肌・髪・眼の色が薄い 先生 21
4 Ryan 不明 肌・髪・眼の色が濃い 小学生 9
4 Grandpa 不明 肌・髪・眼の色が薄い 不明 9

注. 名前に下線が引かれている人物は主な登場人物である。

上位3位までを主要登場人物が占めている。4位のRyanは,学校に行く日の日課を紹介する中 (BSE 5, p. 36) で,起床から下校までの日課に加えて食事やサッカーをするイラストが9回描かれている。GrandpaはThe Very Big Turnip (BSE 6, pp. 96-99) に登場するお年寄りで,畑に植えたカブを引き抜く物語となっているため,連続して登場している。この5人に次いで頻度の多いのはケニア出身のAmana (女,「肌・髪・眼の色が濃い」) で8回登場する。AmanaはRyanと同じページ(BSE 5, p. 36) で,学校に行く日の日課を紹介する中でこの頻度で描かれているが,イラストが1つ不足しているため,Ryanと同数になっていない。外国人の先生は主要登場人物のMr. Richard以外には,ABCと綴りの書かれた板書を背にチョークを手にする先生 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」,BSE 5, p. 24) しか見られない。Englishの綴りの上に外国人 (男,「肌・髪・眼の色が薄い」) と女の子 (BSE 5, p. 22, p. 27, p. 107, p. 121 / BSE 6, p. 107, p. 121) が描かれている。Activityの中で,ウエイター (女,「肌・髪・眼の色が薄い」,BSE 5, p. 89) が金髪で青い眼をした白人女性として描かれている。

表9表15の教科書別の分析に基づき外見的特徴別に見た各社の教科書に登場する外国人 (上位5位) の出現頻度を総括すると表16のようになった。

表16 外見的特徴別に見た各社の教科書に登場する外国人 (上位5位) の出現頻度

教科書 肌・髪・眼の色が薄い 肌・髪・眼の色が濃い
NHE 132 (100) 0 (0)
JS 10 (14.3) 60 (85.7)
JTE 310 (70.6) 129 (29.4)
CJ 74 (67.3) 36 (32.7)
OWS 20 (43.5) 26 (56.5)
HWG 71 (28.1) 182 (71.9)
BSE 105 (92.1) 9 (7.9)

注. ( ) 内の数字は%を表す。

「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が,NHEでは100%を占め,BSEでは92.1%,JTEでは,70.6%,CJでは67.3%,OWSが43.5%,HWGが28.1%,JSが14.3%となっているのに対して,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人が,JSでは85.7%,HWGでは71.9%,OWSでは56.5%,CJが32.7%,JTEが29.4%,BSEが7.9%,NHEが0%となっている。「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の占める比率が高く,4社の教科書 (NHE, BSE, JTE, CJ) で約7割から10割占めている。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人は最も多く占めるJSが85.7%で,NHEに至っては0%であり,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が出現する頻度が多いことがわかる。

NHEからBSEまで全体を通してみると,特に主要な登場人物の外国人,それ以外のイラストで描かれる外国人も複数回の頻度で登場するのに対して,写真の場合,1人の外国人が複数回登場する教科書は少なかった。写真の場合はほとんどが頻度1であった。なお,教科書によっては,1つのページに3人の外国人の写真が掲載され,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の写真だけが明らかに他の2人の写真よりも大きいものが見られた。

5. 考察

小学校英語検定教科書を対象に,イラスト及び写真で登場する外国人を外見的特徴から分析した結果,全体として「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書は2社で,5社は「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多かった。しかし,イラストだけに特化すると「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書は5社,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数は2社となった。写真だけみると「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が多い教科書は1社となり,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多い教科書は6社となることがわかった。これは,写真に登場する外国人,特に「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多いためである。写真の場合,1枚の写真の中に複数の外国人が写っているものが数多く見られ,全体的に人数を押し上げているものと思われる。

出身国が判明している外国人の外見的特徴については,イラストの場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の出身国は,最も少ない教科書で3か国,最も多い国で8か国となっており,アメリカ,イギリス,オーストラリア,フランス,ロシアなど欧米系を中心とした国々が見られる。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の出身国は,最も少ない教科書で7か国,最も多い教科書で13か国となっており,出身国はアメリカ,インド,カナダ,韓国,ケニア,中国,トルコ,ブラジル,ベトナム,アフリカの数か国などとなっており,多様化している。総数では「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多かった。

出身国が判明している外国人の外見的特徴が写真の場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の出身国は,一番少ない教科書で3か国,一番多い国で8か国となっており,イラストの場合と同様,アメリカ,イギリス,オーストラリア,フランス,ロシアなど欧米系を中心とした国々が見られる。「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の出身国は,一番少ない教科書で2か国,一番多い教科書で18か国となっており,その差は16もある。一番少ない教科書はイラストの分量が多いことから,写真が少なくなっているようである。出身国はアメリカ,インド,オーストラリア,カナダ,韓国,ケニア,中国,トルコ,ブラジル,フランス,ベトナム,アフリカや南米の国々などとなっており,イラストの場合よりもさらに多様化している。写真の方がイラストよりも本物らしく見えることもあり,多様化しているものと考えられる。

イラスト及び写真の分析から,出身国が判明している外国人をみると,英語を母語とする国々だけでなく,英語を第2言語または外国語として学習する国々も見られる。このことは,津村 (2021) でも指摘されていたが,主要な登場人物以外の外国人を分析対象とした本研究でも同じ傾向が見られることがわかった。これは,小学校学習指導要領の外国語「英語」でも明記されていることであり,「世界の人々を理解するには,英語以外の言語を使う人々の日常生活も取り上げることが大切である」 (文部科学省,2018, p. 134) ことが反映され,各教科書ができるだけ多様な地域を取り上げようとしていると考えられる。それでも世界には外務省のホームページで確認すると令和5年3月20日の時点で,日本を含めて196の国があり,世界の人々を理解するためにもより多くの国や地域の外国人を取り上げていく必要があるだろう。

出身国が判明していない外国人の外見的特徴をイラストの観点からみた場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多かった教科書は6社となっていた。写真の場合は,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書はなく,2社が同数で,5社は「肌・髪・眼の色が濃い」外国人を多く扱っていた。イラストの場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人をほとんどの教科書が扱っており,写真の場合は,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人を多くの教科書が扱う傾向があることがわかる。

教科書毎に見ていくとほとんどの教科書で頻度が高いのは,イラストで描かれている主要登場人物の外国人であった。OWSのように順位が1位でも14回の頻度でしか登場しないものから,JTEのように順位が1位で142回も登場するものまであり差が大きい。頻度が多ければ多いほど,学習者である小学生が目にする機会が増えることになる。各教科書の上位5位を「肌・髪・眼の色が薄い」外国人と「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の2つに分けて合算して示した表16では,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人がNHEで100%,BSEで92.1%,JTEで70.6%,CJで67.3%と高い比率なのに対して,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人はJSで85.7%,HWGで71.9%,OWSで56.5%となっていた。ここから [「肌・髪・眼の色が薄い」 NHE > BSE > JTE > CJ > OWS < HWG < JS「肌・髪・眼の色が濃い」] という序列を作成することができ,相対的に「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が多く登場することから,小学校英語検定教科書には「白人至上主義的な傾向」が見られると言えそうである。

大石 (2021) は,ALTは「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が多いことを指摘しているが,大石よりも対象を広げて実施した本研究でも英語を教えている先生は「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が多い傾向が見られた。‘speak English’という表現では「肌・髪・眼の色が薄い」外国人と話をする子どものイラストが2社で,Englishの綴りの上に「肌・髪・眼の色が薄い」外国人と女の子がやり取りをするイラストが1社見られた。ウエイターなども「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が見られる。こんなところからも杉山 (2020) が用いる「白人至上主義的な傾向」が見られると言えるのではないだろうか。「はじめに」で触れた「カナダ人は白人だと思っていた」ではないが,「英語を話す人は白人である」といったようなイメージが育まれる可能性がある。車椅子に乗った「肌・髪・眼の色が薄い」外国人を扱っている教科書も見られたが,車椅子に乗った「肌・髪・眼の色が濃い」外国人は見られなかった。社会には様々な生活を送る人が存在するので,さらに配慮した教科書作りも必要かもしれない。

全体を通して,イラストで登場する外国人は頻度が高い傾向にあるが,写真では1人の人物が複数回登場する教科書は少ない。ただし,1社の教科書では出身国が異なり,肌・髪・眼の色と名前が判明している複数の外国人が写真で取り上げられ,複数回登場している。こういった試みも今後増えてもよいのではないだろうか。

6. おわりに

本研究では,イラスト及び写真に登場する外国人を抽出し,外見的特徴から小学校英語検定教科書で描かれている外国人の出身国及び登場する頻度を分析した。イラストでは,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数より多い教科書が多く,写真では,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の数が多い教科書の方が多かった。出身国が判明している外国人の外見的特徴については,イラストの場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の出身国は,3か国から8か国,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の出身国は,7か国から13か国,写真の場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の出身国は,3か国から8か国,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人の出身国は,2か国から18か国で,英語を母語とする国々だけでなく,英語を第2言語または外国語として学習する国々も見られ,国・地域とも多様性が見られた。出身国が不明の外国人の外見的特徴をイラストの観点からみた場合,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人の数が多い教科書が多く,写真の場合は,「肌・髪・眼の色が濃い」外国人を多く扱っている教科書の方が多かった。教科書毎にみるとほとんどの教科書で頻度が高いのは,イラストで描かれている主要登場人物の外国人で,頻度の上位5位以内では「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が多かった。外国人の先生や ‘speak English’などの言葉とともに対話をしているイラストに描かれている外国人は,「肌・髪・眼の色が薄い」外国人が多かった。小学校の英語教科書には,「白人至上主義的な傾向」が見られるととらえられる可能性がある。「白人至上主義」に陥らないためには,イラストに描かれる外国人に多様性を持たせることで,児童が公平なものの見方を育んでいくことと思われる。今後改訂される小学校英語検定教科書を引き続き注視していきたい。

本研究では7社の小学校英語検定教科書に登場する外国人を外見的特徴からイラスト及び写真の分析を行ったが,教科書を使用している小学生を対象に特定の国の外国人にどのようなイメージを抱くかを質問紙法や面接を実施することで,さらに研究が深まるだろう。

謝辞

本稿の完成にあたり,貴重なご意見をくださった 2 名の匿名査読者及び紀要編集委員会に,この場をお借りして厚く御礼申し上げる。

引用文献
 
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