2026 年 13 巻 p. 41-56
This study examines Japanese university students’ perceptions of written corrective feedback (WCF) and the revisions of English essays when using writing assistance tools such as DeepL Write or Google Translator. It also explores which tools students employ during the revision process. Among thirty-two sophomores in a general English course, twenty-seven responded to a questionnaire about their essay writing practices. The results indicate that students prefer writing essays on their own, without relying on tools, recognize the benefits of revising with assistance tools, and generally enjoy writing activities. Most respondents reported improvement in their writing skills through revisions with such tools, and many learners showed a tendency to depend on a particular tool throughout the revision process.
第二言語ライティング指導における書記訂正フィードバック(WCF) は,その是非をめぐって1990年代の論争 (Ferris, 1999; Truscott, 1996, 1999) を経て,2000年代の最初の10年間にはWCFの有効性を示す研究が見られるようになる (Bitchener, 2008; Bitchener et al., 2005; Ellis et al. 2008; Sheen, 2007)。近年ではWCFにより学習者のライティングの正確性の向上につながることやWCFの効果が持続することがわかってきている (Hyland et al., 2018; 鈴木, 2024)。WCFに関する研究は,直接的WCFや間接的WCFといった種類だけでなく,WCFを受けた後の行動の効果に関する議論がなされるようになっている (齋藤・鈴木, 2022)。WCFを受けた後,学習者に英作文を書き直させることで,新たな作文の正確性の向上に効果があることを示唆する研究も見られる (Shintani et al., 2014)。近年ではテクノロジーの進歩に伴い,英作文の添削に活用する研究事例も見られるようになり,Google翻訳やDeepL Writeといった文章作成支援ツールを用いた英作文指導及びフィードバックに関する研究成果も報告されつつある (Barrot, 2023; 甲斐, 2025; 新美・梅木, 2024)。ただし,筆者の知る限り,教員からのWCFを受けて,これらの文章作成支援ツールを使用し,学習者に英作文の書き直しを行った研究は見られない。本研究では,教員からのWCFを受けて,文章作成支援ツールを使用し,英作文の書き直しを行った日本人英語学習者の認識を明らかにすることを目的として行い,調査の結果,どのような特徴が見られるのかを報告する。
近年,日本人英語学習者を対象としたWCFの書き直しに関する研究が報告されてきている。
青山 (2019) は,複数回与えるWCFが,同じ英作文の書き直しにおける自己訂正率と別の新しい英作文における正確さにどのような影響を与えるのかを文法項目 (仮定法と直説法) に焦点を当てて高校生を対象に研究を行っている。熟達度に応じて熟達度高位群と低位群に分け,それぞれの群で直接的訂正フィードバック (DCF) 群,メタ言語的訂正フィードバック (MCF) 群,統制群を設定し,相対的効果を検証した。pretest, post-test1, post-test 2それぞれにおける書き直しの機会を設け,合計3回の書き直しを実施した。なお,pretestとなる英作文課題終了後,DCF群には初めから学習者に正しい形式を与えるプリントが与えられ,MCF群には文法説明と使用例と学習者自らが正しい形式を考えるフィードバックシートが与えられた。結果として,熟達度高位群では,DCFとMCF共に書き直しへの効果が確認されたが,新しい英作文には確認されなかった。一方,熟達度低位群では,DCFは書き直しに対してすぐに効果を及ぼしたが,新しい英作文における正確さの向上はもたらさなかった。しかしMCFは,与えるごとに書き直しにおける自己訂正率を向上させ,3度目にはDCFと同程度の自己訂正率を獲得した。さらに新しい英作文では,2度目を与えた後の事後テストにおいて,DCFと比較し,正確さの向上を導いた。青山の研究では,MCF群にフィードバックシートを配付し,学習者が誤っている箇所を参照できるようなチェックポイントが設けられており,目標文法事項の事前説明の単なる反復にならないように工夫されているという点で注目に値する。ただし,1文レベルの和文英訳にとどまっており,まとまりのある文章を書かせた場合にはどのようなMCFを行えばよいのかといった点にまでは踏み込んでいない。また学習者が書き直しを通じて,どのようにWCFを感じているかまでは明らかにされていない。
齋藤・鈴木 (2022) は,WCF後の振り返りや書き直しを含む行動を説明するWCF認知モデルを提案し,(1) 高校時代と大学時代におけるWCF後の行動としての振り返りや書き直しの経験,(2) WCFの種類(直接訂正と間接訂正)に対する態度としての好みと有効性の認知,(3) WCFエピソードに基づいた思考の程度に関して,大学生を対象にアンケートを実施した。その結果,振り返りが大学時代よりも高校時代のほうがなされる傾向にあること,間接訂正よりも直接訂正を好むものの,必ずしも間接訂正の有効性を認知していないわけではないということ,書き直しがないとWCFについて考える程度がそうでない場合と比べて相対的に低減することが明らかとなった。齋藤・鈴木の研究は,WCF後の振り返りや書き直しを検討することの価値を示しているが,実際に学生に英作文を書かせたり,書き直しをさせたりといった調査までは行っていない。
坂本・古家 (2023) は,高校生が書いた自由記述式英作文をルーブリックで評価・フィードバックすることによって学習改善の効果があるかどうかを実証的に検証している。論題に対して,第1次ドラフティングを書かせ,ルーブリックに従って採点し,ルーブリックとともに返却後,同じ論題で書き直しをさせた。その結果,ルーブリックを用いたフィードバックは,生徒の学習改善を促すのにある程度有効な手段となる可能性があることが示唆された。ただし,教員に対するアンケートの結果,調査に使用したルーブリックが使いにくいという課題もあることが判明した。坂本・古家の研究では英作文において学習者が書き直しを行う上で,ルーブリックは一定程度効果があることを示している。なお,この研究では,1つの論題に対して,1次ドラフティングと2次ドラフティングしか書かせていないので,複数の論題に対して,同じ手続きで複数回英作文を学習者に書かせた場合,同様の結果が導き出されるかはわからない。
2.2 文章作成支援ツールを使用したWCFに関する研究より近年になり,GrammarlyやDeepL Writeといった文章作成支援ツールが普及してきたこともあり,ライティング活動において,文章作成支援ツールを使用した指導,書き直しに関する研究も見られる。本項で触れる先行研究では,ChatGPT,DeepL Write,Google翻訳,Grammarly,Transableが扱われているので,ここで簡単に各ツールについて触れておきたい。ChatGPTは米国OpenAI社によって開発された生成AIで,大規模言語モデルが用いられ,膨大なテキストデータから単語の意味や文脈を事前に学習することで,入力された情報に対して確率的に次の単語や文章を予測・生成する仕組みを持つ,ブラウザ上で直接利用できるアプリケーションである (水本, 2024)。翻訳,要約,パラフレーズ,文章生成,コーディングやアノテーションのサポートを得意とする (水本, 2024)。DeepL Writeは,AIを活用したライティングアシスタントで,文章力を向上させることが可能で,文法,スペル,句読点の修正に加え,代替語や表現の提案を通じて,文章作成をサポートする (DeepL, n.d.)。Google翻訳は利用するアプリを問わず,テキストをコピーしてタップするだけで,文字入力,音声入力,手書き入力で翻訳が可能なツールである (Google, n.d.)。Grammarlyは,作成された文章について,文法や表記,文章の一貫性や明瞭さ等を添削し,誤りや不適切な表現に赤や青の下線が引かれ,修正案が提示される (新美・梅木, 2024)。Transableは杉山 滉平氏が開発したもので,後述するように複数のAIツールが組み込まれており,利用者がそれらの支援を受けながら英文を書いていくことができる (山下ら, 2024)。
まず,新美・梅木 (2024) の研究から見ていく。新美・梅木は,「学習者の英語ライティングの語彙や文法的側面の改善を促すための方策として,Grammarlyを援用した修正活動をカリキュラムに組み込み,実践を通した学習者の英語ライティングの変容について理解を深めること」(p. 71)を目的として取り組んだ実践を報告している。大学生を対象に2つの英作文のトピックに関して,ピアフィードバック,Grammarlyを使用させた訂正活動を経ることで,学生の英語ライティングは,ピアフィードバック活動後には内容や構成面が向上し,Grammarlyを用いた修正活動後には,文法や表記法が大幅に向上したことが判明した。新美・梅木の実践では,Grammarlyの使用・修正方法についての教員からの説明はあるが,教員から学生への英作文に関してのWCFは特に行われていない。また,新美・梅木が認めているように,学生がGrammarlyの使用を通じて何を感じ,何を学んだのかについての質的調査については行われていない。
山下ら (2024) は,GrammarlyやDeepL翻訳,ChatGPTといった複数のAIツールを搭載した英文作成支援ツールTransableを大学生に使用させた研究を報告している。3回の授業の一部を使い,次のような手順で行った。1) 授業内の20分で学生に英語の質問文に対する意見をマイクロソフト社のワードファイルに何も参照させずに書かせた。2) その後,Transableを起動させ,書いた英文を入力し,GTECとCEFR基準で評価させた。3) 授業の宿題として,授業内に書いた英文をTransableを使用させて適宜修正,「表現を調べる」箇所でChatGPTに質問するなどして加筆させた。4) 修正後の英文を再度GTECとCEFRで評価させ,初稿,修正稿それぞれの英文と評価をワークシートに記録させた。また,Transableの機能を用いた修正稿に修正部分を赤で記させ,修正理由や使用感を毎回記録させた。調査の結果,自動採点・評価の点で課題はあるが,自動添削の点では有用性が確認され,学生の満足度も高かった。自力で学生がまず英文を書いてTransableの支援を受けて書き直しをさせるという点で,主体的な学習であると言える。ただし,一連のライティング活動では,教師からのWCFは特に行われていない。
書き直しをさせた研究ではないが,甲斐 (2025) は学習者が英作文を行う際に,DeepL Writeを活用することを勧め,アンケートを通じて学習者に感想を書かせた実践を報告している。使用教科書の章ごとのwritingセクションの論題について,大学生に半期間で6回英作文を書かせた。初回と最終回を除く4回のライティング活動ではDeepL Writeを活用することを勧め,英作文を書かせた。甲斐は学生の英作文をパソコンに入力し,DeepL Writeに添削させ,元の英作文とDeepL Writeによる訂正版の両方が比較できる形で印刷した。その用紙と学生が提出した原文にコメント及びDeepL Writeが未修正の部分を訂正した上で,学生にフィードバックした。AIツールの利用の有無や授業でのライティング活動に関するアンケートを実施し,回答結果からAIツールの活用に肯定的な意見が多く見られたが,使い方には工夫が必要であることがわかった。また,アンケートの結果から,自力で書くことを重視しAIツールを敢えて活用せずに英作文を行っている学生も見られた。甲斐の研究は複数回のライティング活動を行い,フィードバックに関してはDeepL Writeの訂正候補について学習者に検討させているが,書き直させる段階までは実施していない。また,学習者は書き直しのないライティング活動を肯定的にとらえているが,書き直しをさせた場合,学習者がどのように感じているのかといった質的研究までは行っていない。
先行研究から,文章作成支援ツールは学習者が書き直しを行う上で,文法や表記法の向上や学習者の使用に関する高い満足感や肯定感を得ることを助けるといったことが示唆されている。先行研究では文章支援ツールを用いた英作文活動が見られるが,教員からのWCFを受けた後で,学習者が文章支援ツールを用いて書き直しを行っているという研究は報告されていない。また,学生が文章作成支援ツールを使用した際にどのような感想を持ち,ツールに対する好みがあるかといった点に関しての調査は行われていない。
本研究では,第二言語学習者に複数の論題で英作文を書かせ,教員からのフィードバックを基に文章作成支援ツールを使って書き直しをさせることで,WCFに関する学習者の認識を調査することを目的として行う。そこで次の4つの研究課題を設定した。
日本の私立大学で英語を専攻としない文系学部に所属する大学2年生で,筆者が指導する後期の一般英語クラスの32人を調査対象者とした。このクラスの授業は,英語の4技能 (聞く,読む,話す,書く) を向上させることを目的としている。半期15回の授業で,1回あたりの授業時間は90分である。この大学の一般英語科目は,習熟度クラスで編成されている。2年次のクラスは,1年次のアチーブメントテストの結果に基づいており,筆者の担当クラスは上位クラスに割り当てられた学生で構成されていた。英検の取得状況は2級が7人,準2級が11人,3級が4人,英検未取得者が10人であった。なお,調査対象者となる学生からは,本研究の目的を説明し,協力への了承を得ている。
4.2 手順一般英語クラスの使用教科書は Lynch and Shitori (2018) Trend watching 2 である。全20章で各章は,Pre-Reading Vocabulary Task,Reading,Comprehension Questions,Vocabulary Practice,Read and Listen,Writing から構成されている。後期授業では,Chapter 9から開始し,2週で1つの章を終えるようにし,上記タスクの順で実施した。参考までに,Chapter 9は,Waiting in Line for Delicious New Food で日本人が新規開店の店に数時間並ぶ様子に関する内容である。この章のWritingセクションの設問は“Would you wait in line for two or three hours to try food at a new restaurant? Explain your answer.”である。
ライティングの活動は,後期授業15回のうち,8回実施した。8回のうち,奇数回は学生が自力で,偶数回は筆者からの語彙・文法などの正確性に焦点を当てたフィードバックを基に書き直しを行うという手順を踏んだ。別の言い方をすると,題目は4種類あり,1種類につき学生は1回自力で英作文を行い,筆者からの間接的WCFの返却に基づき,2回目に書き直しを行い,筆者が直接的WCFを加えて返却するという流れで実施した。
奇数回では,携帯電話や辞書等を参照させずに英作文に取り組ませた。まず,学生に英作文用紙を配付した。英作文用紙は,各課の質問と「携帯や辞書等を使わずに書いてみよう。」という指示文,英作文作成用の数行に渡る罫線,「構成・内容」,「理由・説明」,「語法・文法」の3つの観点に対して4つの基準を設けたルーブリック,学籍番号と名前の記入欄から構成されていた (付録)。学生は90分の授業のうち15分程度を自力で英作文に取り組み,教員が英作文を回収した。授業後に,間接的WCFとして英作文の誤りのある箇所に下線を引く (例,Second, it is reasonable for me. Reebok is cheep than NIKE, adidas and so on.) とともに,ルーブリックの各観点の該当項目に〇をつけ,作文の内容に関してコメントを記入した。
偶数回に当たる翌週,学生に英作文を返却した。その際,「前回の原稿を書き直しましょう。DeepL Write等を使って構いません。使ったツール名は必ず書いてください。」という指示文,英作文作成用の数行に渡る罫線,ルーブリック,学籍番号・名前の記入欄からなる英作文用紙も併せて配付した。よく書けている英作文をマイクロソフト社のパワーポイントを用いて全体に紹介した後,DeepL Write等の文章支援ツールを使用させ,返却された英作文の書き直しを行わせた。よく書けている英作文を全体に紹介したのは,学習者の作文の中から模範となる作文を選び,クラスに紹介することがあらゆるレベルの学習者にとって有意義であると思われるからである (鈴木, 2017)。また,学習者にとっては紹介されることで,書く意欲の向上や自信につながるといった指導上の効果も期待して全体に紹介した。書き直しには90分の授業のうちの15分から20分程度の時間を与えた。その後,英作文を回収し,授業後に誤っている箇所については直接的WCFを施す (例,Reebok is cheaper than NIKE, Adidas and so on. ➡Reebok’s sneakers are cheaper than those of other brands such as Nike or Adidas.) とともに,ルーブリックの該当項目に〇をつけ,英作文の内容に関する簡単なコメントを書いて,次の週に返却した。返却時には,共通して見られる誤り,および学生の名前を伏せた上でよく書けている作文をパワーポイントを用いて紹介した。よく書けているものを紹介した理由は先述した通りである。
英作文作成用紙内にあるルーブリックについては,初回の授業でこのような観点で英作文を見ると簡単に触れた。ただし,「必ず参照するように」といった明確な指示は出さなかった。
4.3 データ収集と分析方法研究課題1, 3, 4については,15回目の授業時にライティング活動に関するアンケートを実施した。回答にあたって,成績評価とは一切関係ないこと,無記名であること,回答するかどうかは自由参加であることを伝え,できるだけ協力するように依頼した。
アンケートは3つの設問で構成されていた。研究課題1を調査するために,設問1では「2週間にわたり1つのトピックの英作文を行いました。まず,第1週の授業で,自力で英作文を書いてもらいました。第2週には返却された教員のコメントや下線部を参照して,DeepL Write等を用いて書き直しを行い,再提出してもらいました。このことについて,どう思いましたか。」とたずね,自由記述で回答させた。研究課題3を調べるために,アンケートの設問2で「この授業で取り組んだ英作文について楽しかったですか。」,研究課題4については,設問3で「この授業で取り組んだ英作文を通じて英語を書く力はついたと思いますか。」とたずね,それぞれ選択形式の5件法 (「とても当てはまる」,「やや当てはまる」,「どちらともいえない」,「あまり当てはまらない」,「全く当てはまらない」) でたずね,回答してもらった。
アンケートの自由記述以外の設問 (設問2, 3) については単純集計し,必要に応じてグラフ化した。自由記述の設問 (設問1) に対する回答については,似たような回答が複数含まれている場合,カテゴリーに分類し,分析を行った。
研究課題2については,8回のライティング活動のうち,書き直しを行った偶数回で使用したツール名を書かせた。使用したツール名が書いてある場合は具体名を,書いていない場合は不明として,学習者ごとに,マイクロソフト社のエクセルに4回分のデータを入力・保存し,使用状況を分析した。なお,学習者が欠席した場合は何も入力しなかったが,出席した回数での使用状況を把握するため分析に活用した。
調査対象者32人のうち,無記名のアンケートに回答したのは27人であった。アンケートの設問1は,奇数回で自力で英作文を書いた後,教員からのフィードバックを受けて,DeepL Write等を使用して書き直しを行ったことについて自由記述で回答するものであった。記述から次の4つのカテゴリーに分類することができた。
(1) 自力による英作文の重要性の認識
記述式アンケート回答者27人のうち,7人がこのカテゴリーに該当する回答をしていた。学生は,最初に自力で英作文を書くことの重要性を認識していることがわかる。自分の力で書くことで,どのように表現するかを考える機会が得られ,文法や語彙の理解が深まると感じている。特に,最初の週に自力で書いた後,教員からのフィードバックを受けることで,自分の弱点を認識し,改善点を明確にすることができたと述べている。以下に3例ほど自由記述を示す。
一方で,自力で書くことの負担感を訴える声も見られた。以下に2例ほど示したい。
(2) フィードバックと書き直しの学習効果
記述式アンケート回答者27人のうち,9人がこのカテゴリーに該当する回答をしていた。学生は教員からのフィードバックを基に,書き直しを行うことで,自分の誤りを認識するとともに,英語力がついたり,正しい用法が定着していることがわかる。以下に4例ほど自由記述を示す。
一方で次のように,書く力の伸長を認識しているものの,書き直し後にどのように自分の中で定着させるかについて課題を感じ,3回目に自力で英作文を行うことの必要性を挙げているコメントも見られた。
(3) 文章作成支援ツールの活用と学習効果
記述式アンケート回答者27人のうち,9人がこのカテゴリーに該当する回答をしていた。DeepL WriteやGoogle翻訳といった文章作成支援ツールを使用することで,学生は自分の書いた文章を見直し,正しい文法や表現を学ぶことができたと感じている。特に,文章作成支援ツールを使うことで,間違いを確認し,次回の作文に活かすことができた点が評価されている。以下に3つの例を示したい。
中には,DeepL Write等を書き直しに使用するのを肯定的にとらえている一方で,筆者のフィードバックにおけるコメントの文字が判読できないといったコメントも見られた。丁寧に学生が判読できるようにコメントを書く必要性があるだろう。こういった例は,1例しか見られなかったが,以下に示しておきたい。
(4) ルーブリックに対する肯定的評価
記述式アンケート回答者27人のうち,2人がこのカテゴリーに該当する回答をしていた。アンケートではルーブリックに関する設問を設けていなかったが,自由記述からルーブリックを肯定的に見ていることを窺わせるコメントが見られた。具体的には以下の2例が該当する。
英作文用紙には「ルーブリック」という言葉は用いていなかった (付録) ので,1つ目のコメントに見られる「1回目の評価から2回目で評価が上がる所」,2つ目のコメントの「先生の評価」という箇所は,英作文用紙に記載しておいた表,つまりルーブリックの構成要素のことを指すと思われる。筆者は先述したように学習者が自力で書いた奇数回の英作文については,内容に関するコメントと誤っている箇所に下線を施し,ルーブリックの該当項目を〇で囲んで返却するだけであった。ルーブリックが学習者の英作文を書くのに一定程度の効果があることを示唆するコメントである。
自由記述から,「学生の自力による英作文・提出」→「教員による添削とフィードバック」→「ツール活用の書き直し英作文・再提出」→「教員による再添削とフィードバック」といった段階的な英作文指導が効果的であることが示唆された。教員が文章作成支援ツールの適切な活用方法を教えることで,学習効果を最大化できるとともに,語彙力・文法力の強化を継続的に支援する必要性があることも判明した。一方で,教員が最初に書かせる段階で文章作成支援ツールの使用を制限することやフィードバックにおける教員の文字の可読性に課題があることも判明した。
続いて,研究課題3, 4に関するアンケート結果について報告したい。アンケートの設問2は授業で取り組んだ英作文について楽しかったかどうかをたずねる設問であった。図1はその結果を表したものである。

結果は「とても当てはまる」と「やや当てはまる」を合わせて17人で,約60%の学生が英作文を楽しかったと実感していた。一方,「あまり当てはまらない」と「全く当てはまらない」の合計が4人で約15%の学生は英作文を楽しいとはとらえていなかった。残る6人は「どちらともいえない」と回答した。書き直しを行っていない甲斐 (2025) でも英作文の楽しさに関してのアンケート調査を行っているが,回答者28人中,肯定的評価が約60%で,否定的評価が25%であったことからすると本研究では否定的評価が減っている。
アンケートの設問3は授業で取り組んだ英作文を通じて英語を書く力がついたかどうかに関する設問で,図2はその結果を表したものである。

結果は「とても当てはまる」と「やや当てはまる」を合わせて22人で,約80%の学生が書く力がついたと実感していた。一方,「あまり当てはまらない」と「全く当てはまらない」の合計が1人しかいなかった。残りの4人が「どちらともいえない」と回答していた。書き直しを行っていない甲斐 (2025) でも英語を書く力に関してのアンケート調査を行い,回答者28人中,肯定的評価が約64%で,否定的評価が約21%であったことからすると本研究ではいずれも改善が見られる。
これら2つの結果から,文章作成支援ツールを使用させての「書き直し」がライティング活動にプラスの効果が見られることが示唆される。
次からは,学生が書き直しをした際に使用していた文章作成支援ツールの使用状況について見ていきたい。表1は,8回のライティング活動のうち,書き直しを行った各回で使用したツール名を書かせた結果をまとめたものである。
| 書き直し1 | 書き直し2 | 書き直し3 | 書き直し4 | |
|---|---|---|---|---|
| DeepL Write | 12 | 13 | 12 | 16 |
| Google翻訳 | 10 | 10 | 12 | 12 |
| Line通訳 | 1 | 1 | 1 | 0 |
| Google翻訳+Line通訳 | 0 | 1 | 0 | 0 |
| 不明 | 4 | 4 | 1 | 1 |
| 合計 | 27 | 29 | 26 | 29 |
多くの学生がDeepL Writeまたは,Google翻訳を使って書き直しを行っている。DeepL Writeを使用している学生数がGoogle翻訳を使用している学生数より上回る回数が多い (書き直し1,書き直し2,書き直し4) が,ほぼ人数は拮抗している。
各学生が書き直しをする際,どのツールを使用しいて書き直しを行っていたかをまとめたのが表2である。なお,表2のデータにはアンケート回答者以外の学生も含む,各回の課題提出者全員を対象としているため,表1の合計数と表2の合計数が異なっている。
| 使用したツール | 人数 |
|---|---|
| DeepL Writeのみ | 12 |
| Google翻訳のみ | 9 |
| DeepL Write ➡ Google翻訳 | 2 |
| Google翻訳 ➡ DeepL Write | 1 |
| Line通訳 ➡ DeepL Write | 1 |
| 不明 ➡ DeepL Write | 2 |
| 不明 ➡ Google翻訳 | 3 |
| 不明 ➡ Google翻訳+Line通訳 ➡ Google翻訳 | 1 |
| 不明 | 1 |
| 合計 | 32 |
注.➡は切り替えたことを表わす。
DeepL Writeを最初から最後まで使用し書き直していたのは12人,Google翻訳を一貫して使用していたのは9人であった。DeepL WriteからGoogle翻訳に切り替えた学生が2人,逆にGoogle翻訳からDeepL Writeに切り替えた学生は1人であった。Line通訳からDeepL Writeに切り替えた学生が1人であった。どのツールを使用したのか最初不明だったが,途中からDeepL Writeに切り替えた学生が2人,Google翻訳に切り替えた学生が3人,Google翻訳及びLine通訳を経て,Line通訳,最終的にGoogle翻訳へとツールを変えていた学生が1人であった。書き直しの最初から最後まで使用ツール名を記載しない学生が1人 (表2の中の「不明」)見られた。
本研究では4つの研究課題を設定した。研究課題1「学習者は1度目に自力で英作文を書き,フィードバックを受けて文章作成支援ツールを使用して書き直しを行い,どのように感じているか。」については,アンケートの自由記述から「自力による英作文の重要性の認識」,「フィードバックと書き直しの学習効果」,「文章作成支援ツールの活用と学習効果」,「ルーブリックに対する肯定的評価」の4つのカテゴリーに分類できた。学生は,①英作文を自力で書いて提出し,②教員からのコメントと誤っている箇所に関する間接的WCF及びルーブリックを参照し,③文章作成支援ツールを活用して書き直し再提出し,④教員からの直接的WCFを受けるといった段階的な過程を経ることで,自分の語彙や文法などに関する誤りを認識し,英語力がついたと実感していることがわかる。最初のフィードバックの段階で教員からの直接的WCFを受けないことに学生は不満を感じるのではという懸念があったが,むしろ間接的WCFとルーブリックを基に,文章作成支援ツールを活用して書き直すことを肯定的に受け止めていることが窺える。その一方で,最初から文章作成支援ツールを活用したり,日本語で文章を書いてから英文に直したいという考えを持つ学生もおり,学生の要望に配慮した指導が必要かもしれない。また,フィードバックにおける教員の文字の可読性に課題があることも判明し,より丁寧なフィードバックを心がけることで学習者の英作文に取り組む意欲をそぐことのないように努めることも必要である。
研究課題2「学習者は書き直しをする際に,どのような文章作成支援ツールを使用しているか。また,特定のツールを使用する傾向が見られるか。」については,DeepL WriteとGoogle翻訳を利用している学生が多かった。Google翻訳よりDeepL Writeを使用している学生の数が多い回も見られたが,人数はほぼ拮抗していた。どちらかのツールを最初から最後まで書き直しをする際に用いている学生も一定程度見られた。その一方で,途中からどちらかのツールに最終的に切り替えている学生も見られた。DeepL Writeは前期の授業で活用させていたこともあり,使用していたものと思われる。Google翻訳は学生が普段から使い慣れ,利便性を感じていることもあり,使用していた可能性がある。今後の展望として,学習者のツールの好みや利便性などを調査することで,書き直しを行わせる際の英作文指導に資するものと思われる。
研究課題3「学習者は授業で取り組んだ英作文について楽しいと感じたか。」については,約60%の学生が,自力と文章作成支援ツールを用いた書き直しの英作文活動を楽しかったと実感していた。一方,約15%の学生は英作文を楽しいとはとらえていなかった。
研究課題4「学習者は授業を通じて書く力がついたと感じたか。」については,約80%の学生が書く力がついたと実感していた。否定的な回答は1人しかおらず,多くの学生は今回のライティング活動を通じて書く力が伸びたと感じていることがわかる。
学習者が文章作成支援ツールを使用して,英作文の書き直しを行った先行研究では,文法や表記法の向上や学習者の使用に関する高い満足感や肯定感を得ることが示唆されていた。本研究では,文法や表記法の向上といった点について焦点を当てて数値化した実証研究は行っていないので向上したかどうかは言うことができない。ただし,本研究では,学習者自身が,自分の語彙や文法などに関する誤りを認識し,英語力がついたと実感していることが示唆される結果を得ることができたので,これは先行研究を支持する結果と言えるだろう。また先行研究では,教員からのWCFを受けて,学習者が文章支援ツールを用いて書き直しを行っている研究は報告されていなかったが,本研究では,「教員からのフィードバック」と「文章支援ツールによる書き直し」の組み合わせによる有効性を提供している点で,新たな知見を得られたと言えるだろう。
甲斐 (2025) では,学生に書き直しをさせていなかったが,DeepL Write等の文章作成支援を使用してのライティング活動を楽しいと感じていたり,書く力がついたと実感していた。本研究では,文章作成支援ツールを使用させて書き直しをさせても,学習者は英作文活動を楽しいと感じるとともに,英語を書く力がついたと実感していることがわかる。結果の欄でも紹介したが,「第1週は自力,第2週は直すべき点や改善点を書いてもらって返却される方法はとても良いなと思った。しっかり自分はどこがだめなのか理解してアプリ等使って書き直しできるのは自分に英語力が身につくなと感じた。」のコメントに見られるように,学習者は自力で書いた英作文を間接的WCFを受けて,文章作成支援ツールを活用して書き直すことで,書く力を育成することにつながる可能性がある。
本研究では,第二言語学習者に複数の論題で英作文を書かせ,教員からのフィードバックを基に文章作成支援ツールを使って書き直しをさせることで,WCFに関する学習者の認識を調査することを目的として行った。アンケートの結果から,文章作成支援ツールを使用した段階的なWCFが効果的であり,学生は楽しんで英作文活動を行い,書く力がついているという実感を得ていることが示唆された。また,学生が使用していた文章作成支援ツールについては,DeepL WriteやGoogle翻訳といった特定のものを使用し続ける傾向が見られた。
本研究の限界点をいくつか指摘しておきたい。本研究では,最初に提出させた英作文の誤りの箇所に下線部を施していたので,書き直しの英作文のどこを各学生が訂正したのかは把握できている。しかし,間接的WCFを受けて,学生自らが誤っている内容を理解し,自力で訂正したのか,それとも文章作成支援ツールを用いた上で,訂正したのかまでは調査することができなかった。学習者の訂正方法,訂正内容を把握することで,文章作成支援ツールをどう使用させたらよいかという指導面に資することになるだろう。また,英作文用紙のルーブリックの該当項目を,学習者がどの程度参照し,どのような印象を持っていたのかまでは検証しきれていない。さらに32人を対象とした小規模な実践のため,今回の結果は一般化はできない。プレテスト・ポストテスト法を用いて,文章作成支援ツールを使用して書き直しを行うことで,実際に学習者の英語力が,どの程度伸びているのかといった検証も必要である。書き直しの回数を増やすことで同様な結果が見られるのかといった点も含めての検証も必要と思われる。今後の研究課題として取り組んでみたい。
本稿の完成にあたり,貴重なご意見をくださった2名の匿名査読者及び紀要編集委員会に,この場をお借りして厚く御礼申し上げる。
Q: Would you wait in line for two or three hours to try food at a new restaurant? Explain your answer.
携帯,辞書等は使わずに書いてみよう。
| 構成・内容 | 理由・説明 | 語法・文法 |
| 英語の論理構成に則り,かつ論理的に明確に考えを述べている。(A-1) | 理由・説明が複数あり,明確になされている。(B-1) | 適切な表現を使用し,ほぼ誤りがない。(C-1) |
| 英語の論理構成に則っているが,論理性,または明確性に欠ける。(A-2) | 理由・説明が1つずつあるが不十分である。(B-2) | 適切な表現を使用しているが,複数の誤りがある。(C-2) |
| 英語の論理構成に則っておらず,論理性も明確性も欠ける。(A-3) | 理由または説明が1つしかない。(B-3) | 適切な表現を使おうとしているが,major errorがある。(C-3) |
| 英語の論理構成に則っておらず,意味・内容が不明である。(A-4) | 理由・説明が全くなされていない。(B-4) | 適切な表現が使えず,綴り等の誤りが多い。(C-4) |
major errorとは,文法・語法や文構造などの誤りにより内容理解を妨げるものを指す。
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