日本沿岸域会議論文集
Online ISSN : 2758-3678
論文
海洋波集波レンズの流体力学的特異点分布について
木下 健村重 淳
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 2 巻 1 号 p. 39-49

詳細
抄録

海洋波集波レンズは波浪制御技術の一つであり,波の向きを変えることによって波をある一点に集めることができ,静穏海域の確保,波浪エネルギー有効利用のための要素技術として期待できる。本論文では,無限水深中にレンズを入射波の波頂線に対して平行に設置することにより波を集め,レンズの形状を細長体として, レンズの幅を波長と同程度であると仮定して, レンズを表現する特異点分布をmatched asymptotic expansion 法により求めた。すなわち,入射波がレンズを通過した後に焦点に集まる流場の解析解を与えた。得られた特異点分布により,集波を実現するレンズの断面形状は,入射波を反射せず透過波が入射波に対してある位相差をもつ効果を与えることが明らかになった。その位相差は,焦点とレンズ上の点との間の距離と波数により決まり,幾何光学における光路差で決まる。得られた特異点分布を利用して自由表面変位を計算した結果によると,波長iとレンズの長さLと焦点距離Qの関係が, L/2=Q23えであれば適当な集波効果が得られ,焦点では,入射波の約5倍の波高が得られることがわかった。

著者関連情報
© 1990 日本沿岸域学会
前の記事
feedback
Top