日本原子力学会誌
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放射線ホルミシス現象
服部 禎男
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1995 年 37 巻 4 号 p. 274-282

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抄録

10年あまり前に提示されたT.D. Luckey博士の「放射線ホルミシス」の主張に対して,電力中央研究所は科学的真実を求めて調査と動物実験などを始めた。第1フェーズの検討によって多くの興味あるデータを得て,いま全国の大学などの専門家の協力によって,研究はその第2フェーズに入っている。本稿では,これまでの知見と分析から,低レベル放射線と人体のかかわりについて述べる。
幸運なことにDNAの分析,遺伝子の研究が急激な発展をしつつある時に,ホルミシス研究を立ち上げたためにそのメカニズムの解明が予想外の速度で進展する気配をみせている。生化学,分子生物学,免疫学,がんの機構解明など,従来の放射線基礎医学の先生方に加えて広範囲の先生にご指導を仰いで,生命のメカニズムの本質に触れるような議論も登場している。本年(1995年)秋には,米国NIHやEPAの専門家を含めた国際シンポジウムも計画され,研究の進展によって多くのデータが得られるにつれ,この研究の重要性がいよいよ拡大しつつあるように思われる。

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