日本地下水学会会誌
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宮城県沖地震の前後における地下水位変化
江川 良武
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1980 年 22 巻 3 号 p. 119-128

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抄録
1978年2月20日,及び6月12日に宮城県沖で馳震が発生したが,著者はこれらの前後における地下水位変化を研究した.用いた資料は建設省が地下水資源保全を目的として,宮城県内に設置した16-18本の井戸である.地下水位には多くの「ノイズ」が含まれているため,自記記録紙上に引いた傾向線の向きを主たる検討対象とした.傾向線は地震に先行する30日,10日,0.5-1日の期間の変化曲線を対象としたが,いずれにも地震の前兆とみなせる「異常」な変化は認められない.変化がある場合にも,その状況は他の期間に普遍的にみられるものである.地震と同時に生ずる地下水位変化は全ての井戸に認められ,その様式は地震時に急激に変化する「急性型」と地震を契機として徐々に変化をみせる「漫性型」の2型に分類できる.地下水位変化の向きは一般に上昇であり,地震波初動の向きから判断した地殻応力場とは一致しない.一方,地下水位の上昇度はストレーナの深度とともに減少する傾向がみられ,地震による推積物の締め固めが推定される.
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