2024 年 40 巻 2 号 p. 142-151
Abstract: This study aims to reveal the relationship between satoyama volunteer during university student days and their current sense of value and lifestyles. Nisshi-nonbiri-mura project is satoyama activities where can experience living in harmony with nature for 18 years. In the satoyama, students will have many experiences by interacting with participants and nature as volunteers. As a result, they realized the importance of interacting with nature.
里山は,原生的な自然と都市との中間に位置し,集落とそれを取り巻く二次林,それらと混在する農地,ため池,草原などで構成される地域として,農林業などに伴うさまざまな人間の働きかけを通じて環境が形成・維持されてきた.特有の生物の生息・生育環境として,また,食料や木材など自然資源の供給,良好な景観,文化の伝承の観点からも重要な地域である1).
しかし,1950年代から始まるエネルギー革命により,里山の樹木が燃料として伐られることが少なくなり,大きく環境が変化する.こうした状況の中,1980年代から里山を適正な状態にするため市民による里山保全活動が各地で盛んになった2).
現在,里山保全活動は市民によるボランティアに支えられている.その多くは高齢男性であり,里山の自然環境が保全されることを第一義として活動しているが,副次的な目的として,コモンズを共有する活動者コミュニティの形成3)や,身体を動かすことによる健康効果4)があげられている.こうしたことから,若い世代が里山保全活動に積極的な意味を見出し,新たに参入することが難しくなっている.結果として,活動団体はさらなる高齢化やメンバーの固定化により,活動の継続性が危ぶまれている.
そこで,若い世代が里山の本来の価値に気づき,関心をもち,時間的余裕があれば,里山での活動に参入することが求められるのではないだろうか.里山の本来の価値とは,これまでの活動で中心的に保全されてきた,特有の生態系や,良好な景観だけではない.我々が生活様式の近代化のもと置き忘れてきた,食料や生活用品の原材料の供給であったり,燃料の供給であったり,自然と共にある暮らしを豊かなものとする文化の共有ではないだろうか.こうした,自然を生かした生活の豊かさを見直すことで,若い世代が里山の活動に参入するメリットを享受することができると考える.
そこで本稿では,大きく2つのことを目的とする.
1つ目は,愛知県日進市で約18年間取り組まれた,里山を舞台に,自然とともにある暮らしを再現し,体験できる場づくりとしての「にっしんのんびり村プロジェクト」の活動を総括する.また,この活動に関わった,スタッフ,大学生ボランティア,参加者にとってどのような価値をもっていたのか,筆者自身が参与観察した経験をもとに考察する.
2つ目は,この活動に,大学生ボランティアとして関わった人が,卒業後,自然や市民活動に対し,①どのような価値観や態度を形成したのか,②現在どのようなライフスタイルで自然と関わっているのか,を明らかにする.
自然と関わることで体験者がどのように影響を受けるのかについての研究はこれまで数多くおこなわれてきた.その多くは大学の授業や企業研修などの環境教育プログラムを受講することで,環境意識や行動にどのような変化があるのかを検証している5)-8)が,定着性や持続性については明らかにされていない.
過去の自然体験がその後どのような影響を与えたかについての研究は,以下の2つがあげられる.少年期に行った自然体験活動が成年期の環境行動にどのような影響を及ぼすかについては岡田ら(2008)の研究9)がある.また,過去の自然体験が里山保全活動にどのように影響するかについては中村ら(2011)の研究10)がある.いずれも,環境や里山への意識は高めるものの,里山などの環境保全活動への行動実践にはつながりにくいことを明らかにしている.
本稿では,大学生時代という短い期間に,限られた回数のみ経験した里山ボランティアが,長い人生における価値観や態度,ライフスタイルにどのように関連するのかをみることで,大学生時代の里山ボランティア経験の価値を評価することにつなげたい.
2.にっしんのんびり村プロジェクトの総括
2-1 活動の経緯
1960年代以前,愛知県日進市は名古屋市東部にある丘陵地域に開けた農村地域であった.1970年に線引きが行われる前から,旧住宅地造成事業法による宅地開発が進んだ.その結果,市街化調整区域にあたる市の東側には,丘陵地と農地,民家が混在する里山環境が残され,虫食い状に住宅団地が点在することとなった.
2001年,日進市は環境基本法のもと,日進市環境基本計画の策定に着手する(2004年3月策定).市民および市の職員(担当課以外の職員を含む)をまきこんだワークショップを3年計画で実施し,関わった人が計画策定後,実施に向け動く,実効性のある計画をめざした.このワークショップでは,最終的に「水」「緑」「まち」「ライフスタイル」「コミュニティ」「遊びと学び」の6つのテーマで議論され,その中から14の重点プロジェクトが提案された.そのうちの1つが,日進市の里山で行われてきた自然とともにある暮らしを再現し,体験できる場所づくりを行い,里山の魅力を伝える「にっしんのんびり村プロジェクト」である.
にんしんのんびり村プロジェクトは,環境基本計画策定ワークショップの3年目に始動し,策定委員の紹介により民有地(農地および山林)を候補地とした.当該地は数十年前,主に畑として活用されていたが,耕作放棄されており,再開墾しながら整備した.敷地内の山林についても,放置された灌木の間伐から,野菜の支柱用として植えられた竹藪の整理など,里山本来の姿に戻すための手入れを要した.最低限,里山の景観を感じられる程度に整備ができた2003年11月には,里山体験イベントとして「のんびり村まつり」の開催にこぎつけることができた.にっしんのんびり村プロジェクトとして正式な始動は翌2004年4月.以降,里山の環境整備を続けながら,年数回の体験イベントを開催し,コロナ禍および諸事情により活動継続が困難になった2021年3月まで約18年間の活動を行った.
2-2 活動内容
(1)活動メンバー
プロジェクトに関わったスタッフは入れ替わりながら推移した.環境基本計画策定ワークショップから関わった市民および市職員(当初8名),のんびり村の環境に魅力を感じて参加した市民など,全期間を通じて参加した人もいれば,数年間だけ関わった人もいる.また,専門知識を提供したスタッフとして,地域の行事食に詳しい郷土料理家,日進市で自然観察会を主催してきた環境専門家,無農薬栽培に造詣の深い専業農家など,多くの人の関りがあった.前述のように市職員がスタッフにいたことは,環境基本計画の重点プロジェクトとして推進するうえで大いに力となった.後述するが,イベントなどの際のボランティアとして,大学生の参加も重要な役割を担った.
尚,筆者は,専門家としてではなく一市民として(1)環境基本計画策定ワークショップに参加し,にっしんのんびり村プロジェクトの立ち上げからスタッフとして関わった.大学生の参加については,ゼミ活動の一環として,様々な市民活動やNPO活動等におけるボランティアに参加することを課題としており,その中の1つとして,にっしんのんびり村での里山ボランティアがあった(2).
振り返ってみると,長期間にわたり活動を継続できた理由の1つに,スタッフ間の親睦があったと考える.里山での作業や,イベント時,必ず里山で簡単な食事をとりながら,プロジェクトのことだけでなく,世間話や思い出話など様々な話しをすることができた.さらには,1年に1回以上,のんびりツアーと称して,他の地域の里山活動の視察を兼ねた親睦旅行や食事会を行った.後述するが,同じ釜の飯を食うことが活動の英気を養う効果となった.
逆に,何年か続けたスタッフが継続できなくなる理由の多くは,加齢による体調の問題であった.仕事をリタイアした後,この活動に参加した人も多く,何年か続ける中で体調が悪化することがあった.活動を持続可能にするには,継続的に新たなスタッフの参加を促す必要がある.
(2)活動回数
全期間を通じた活動の回数としては,プロジェクト会議197回,里山作業143回,主催イベント109回,他団体受け入れ30回,視察ツアー24回であった.プロジェクト会議は,月1回の定例会のほか,全体計画策定のためのワークショップを含む.里山作業についてはスタッフ全体に共有したもののみで,個人的に作業したものはカウントされていない.他団体の受け入れとしては,他市町村からの視察や,のんびり村を使った子ども会活動や他NPOの受け入れなどである.
(3)活動資金
経常的な活動経費については,主にイベント参加費によって生み出していた.参加費は1人300~500円程度と安価であるが,スタッフは無償ボランティアであり,材料費等を差し引くと各回数千円程度の黒字となる.こうした資金は,畑の資材や発電機等の燃料などの購入にあてていた.
物置小屋や仮設トイレ等の構造物については,不要なものを譲り受け移設したり,廃材等を活用しスタッフが土木・大工仕事を行い設置した.
一方で,水道が無かったため必要であった井戸の掘削については,あいち万博の公益信託として設立された「あいちモリコロ基金」から,まとまった助成を受け実現した.
当初の構想では,古民家の移築を含めた里山拠点の整備が検討されていたが,市民活動としての建設は難しく,市の事業としての実現をめざした.全体計画の策定作業までは行ったものの,当該地が調整区域内にあったことや周辺地権者の協力が得られなかったことなどの理由で,市の事業体系から外れ,環境基本計画の見直しの際には重点プロジェクトからも外された.
百姓仕事の1つとしてお金をかけずに整備を行うことも,市民活動として少額の参加費をもとにボランティアの力で行うことも,里山活動を持続可能にするうえで重要といえよう.
2-3 自主イベントの内容
にっしんのんびり村プロジェクトは,自然と共にある里山の暮らしを再現し,多くの市民が体験できることを目指して活動を行った.最終的な目標としては,常設型の施設としての運営であったが,ボランティア中心の市民活動としては難しく,2か月に1度程度のイベントを開催し体験できる機会を創出した.ここでは,どのようなイベントを開催していたかを表1に整理した.
自主イベントは大きく2つに分かれ,「のんびり村まつり」として,里山の季節を楽しむイベント年3回,「のんびり風土(FOOD)」として,農村地域で食されていた行事食を再現したり,里山を活用した食料生産の体験をするイベントを年4回開催していた.
2-4 大学生が行った里山ボランティア
前述のとおり,ゼミ活動の一環として参加した里山ボランティアにおいて,大学生がどのような活動を行ったかを紹介する.
(1)里山整備活動「結の日」
にっしんのんびり村プロジェクトでは,通常の里山保全のための活動はスタッフで行っていたが,多くの人手がいる作業については,「結の日」として,大学生ボランティアを募った.
具体的な作業としては,竹木の伐採,畑の(再)開墾,道具小屋の建設(修復),井戸周辺整備,石窯の整備など.主に力仕事をスタッフの指導のもと行った.毎回ではないが,簡単な食事やお菓子が振舞われることも多い.
里山管理の知識を得ることができたり,達成感はあるものの,身体的な疲労が多く,スタッフの指示(危険が伴うので場合によってはきつい言葉)によって動く必要があるので,楽しいと感じることは少なかったのではないだろうか.
(2)イベント補助
前述のとおり,にっしんのんびり村プロジェクトでは年間を通してイベントを行っている.多くの参加者があるイベントでは,スタッフだけでは手が足りず,大学生ボランティアが貴重な戦力となっていた.
具体的な作業としては,イベント当日の準備作業(道具や材料の準備など),駐車場の誘導,参加者の受付,イベント進行時の参加者の誘導,食事の準備(畑から野菜の収穫,調理など),薪集め・火の番,子どもたちと遊ぶ,参加者と話す,スタッフと話す,後片付けなど.イベントプログラムを行っている間はスタッフの指示に従って作業を行う.食事が終わりゆったりした時間帯は,後片付けをしながら,大学生どうしで話したり,子どもたちと遊んだり,大人の参加者やスタッフと話したり,比較的自由な時間を過ごす.ただ,子どもたちが,大学生のお兄さんお姉さんにまとわりつき,身体的な疲労を伴う場合もある.
大学生はボランティアとしてイベントに関わることで,参加者以上に里山を知り,スタッフから仕事の仕方を学ぶことができる.また,イベントで提供される里山の恵みを,参加者同様に味わうこともできる.これについては,大学生だけでなく,スタッフについても里山での食事がボランティアとして参加し続けられる原動力となっている.農作業後に全員で食事をする,昔ながらの里山の働き方に近い.
2-5 にっしんのんびり村プロジェクトがもたらした価値
これまで紹介してきたように,にっしんのんびり村プロジェクトでは,自然とともにあった,昔ながらの里山暮らしを再現し,体験できる活動を展開してきた.この活動を端的に表す言葉として「ブリコラージ」(3)があげられる.そこにあるものを使って,人の力で作り上げ問題解決することだが,農家の人を「百姓」と表現したことと符合する.百姓は単なる農業従事者ではなく,農村(里山)で百の仕事ができなければ生活が成り立たないことを意味した.日進という大都市名古屋近郊の里山において,農家の人は自嘲気味に「ごんじゅう」と自分たちを呼ぶ.仕事の半分をお勤めに頼り,百姓仕事は半分の「五十」に過ぎないという意味である.現代のライフスタイルにおいて,野生の思考であるブリコラージュを半分は残すという生活文化こそが持続可能性を担保し,SDGsを実現するうえで重要となろう.
もう一つは,自然を「いただく」ことの再発見ではないだろうか.現代の暮らしでは多くの食料は,流通により手に入るものとなっている.食事の際に「いただきます」と言っても,命をいただいているという実感に乏しい.にっしんのんびり村では,多くの食材を田畑から自給し,野山に生えている野草やキノコを採取して「いただく」活動を行っていた.これらをおいしくいただくための調理についても,郷土料理のレシピから,里山にある薪を燃料とした煮炊きまで,里山の生活文化の結集により成り立っていた.それらの料理を,里山の自然の中で,スタッフ,大学生ボランティア,参加者が一同にいただく.「同じ釜の飯を食う」であり,「身土不二」(4)である.内山節が,「日本の共同体は自然と人間の共同体として作られている」11)と指摘するように,地域の食材や自然の食材を一緒に食べることを通してコミュニティが成立する.
このプロジェクトに関わった,スタッフは,里山の知恵を地域の人から教わりながら実践してきた.そして,その知恵は,大学生ボランティアに,イベントに参加した市民(その多くはファミリー層)に体験を通して伝えられたことが活動の意義といえよう.
3.アンケート調査の概要
大学生時代に里山ボランティアの体験をした人は,卒業後,自然や里山,食や農に対してどのような価値観や態度をもっているのか.また,地域の活動や,NPO・市民活動に対してどのように感じているのか.さらに,行動面では,どのように自然や里山と関係しながら生活しているのか.こうしたことを明らかにするために,当該活動において大学生ボランティアを派遣したA大学Bゼミナールの卒業生にアンケート調査を実施した.
3-1 調査方法
卒業生が現在どこに居住しているのか把握できないため,帰省先である住所宛てに,アンケートの依頼文と転送用の封筒を郵送し,同居していない場合は転送を依頼した.アンケートの回答については,Google Formsを使用したWebアンケートで行えるよう,依頼文に2次元コードを付けた.詳細については,表2に記した.
3-2 調査項目
アンケート調査で質問した項目については,表3に示す.里山ボランティア,これまでの自然に対する思い,現在の価値観,現在のライフスタイルについて,環境や自然,里山,農的暮らしに関連する質問を行った.また,比較のため,大学生時代に,里山ボランティアを行っていない卒業生にも,現在の価値観やライフスタイルについての回答を得た.
3-3 回答者属性
回答者のおおよその年齢層が5歳刻みになるように分類し整理したものが表4になる.卒業したばかりの20代前半もいるが,卒業後15年以上経つ回答者もみられる.回答者の職業(図1)は約3分の2が会社員で,次いで公務員・団体職員となっている.家族構成(図2)は,もっとも多いのが未婚で親世代と同居であり約3分の1を占める.次いで,夫婦と子どもの世帯が約4分の1となっている.
4.調査結果
4-1 里山ボランティア参加の有無と回数
学生時代に里山ボランティア活動を行ったかどうか,行った人には何回程度行ったかをたずねた(図3).約8割(62名)が参加したことがあり,約2割(15名)は参加経験が無い.参加回数としては約半数が「2~3回」と回答した.
4-2 里山ボランティアでの活動内容
里山ボランティアに参加した62名を対象にどのような活動を行ったのか,複数回答可でたずねた(図4).最も多かった活動は,「子どもと遊ぶ」であり約4分の3が回答した.次いで,「ご飯や料理の給仕」,「木や竹を切る・切った木や竹を運ぶ」となっている.逆に,少なかったのは「大工・土木作業など建設作業」「田んぼの作業」「畑の手入れ」であった.体力が要求される作業を行った人は回答者の中では少なかった.
4-3 里山ボランティアで感じたこと
里山ボランティアに参加した62名を対象に活動を通してどのように感じたのか,各項目のあてはまりの程度を4件法でたずねた(図5).「すごくあてはまる」「ややあてはまる」と回答した人の合計でみると,「楽しかった」が最も多く9割以上の人が回答した.次いで,「里山のことを知れた」「環境への関心が高まった」「成長できた」の順となった.逆に少なかった項目をみると,「里山が嫌いになった」にあてはまるとした人は1人もいなかった.次いで少ないのは,「将来を考えるきっかけになった」「大変だった」となった.少なかったものの「将来を考えるきっかけになった」とする人が5割を超えているのは注目に値する.
| 表2 アンケート調査実施概要 | |
|---|---|
| 調査期間 | 2023年6月6日~6月30日 |
| 調査対象 |
2007年~2023年 卒業生238名 内18名は宛先不明,有効220票 |
| 回収数・回収率 | 77票 35.0% |
| 表3 アンケート調査項目 |
|---|
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里山ボランティアについて ・大学生時代の里山ボランティア経験の有無 ・活動回数 ・活動内容 ・参加して感じたこと |
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これまでの自然に対する思いについて ・自然が元から好きだった ・自然に対して子どもの頃の良い思い出がある ・自然に対して学生時代の良い思い出がある |
|
現在の価値観・態度について ・環境/自然/里山/農的暮らし/地産地消に対する重要度 ・地域活動/NPO・市民活動に対する態度 ・子どもの自然・里山体験への参加意向 |
|
現在のライフスタイルについて ・自然の中でのレジャー/自然に触れるイベント/農的暮らし/里山保全活動/仕事として自然との関わり |
|
個人について ・入学年度 ・性別 ・職業 ・住んでいる地域の特徴 ・家族形態 |
| 表4 回答者属性 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 卒業年 | 男性 | 女性 | 合計 | 凡その年齢層 |
| 2007~2011年卒 | 5 | 3 | 8 | 30代後半 |
| 2012~2016年卒 | 17 | 8 | 25 | 30代前半 |
| 2017~2021年卒 | 21 | 7 | 28 | 20代後半 |
| 2022年卒~ | 12 | 4 | 16 | 20代前半 |
| 合計 | 55 | 22 | 77 | |


| 図1 職業(N=77) | 図2 家族構成(N=77) |
|---|

| 図3 里山ボランティア参加の有無と回数(N=77) |
|---|

| 図4 里山ボランティアでの活動内容(N=62) |
|---|
5.分析結果
ここでは,里山ボランティアの参加の有無,回数が,現在の価値観やライフスタイルとどのように関連しているのかをクロス集計およびカイ二乗検定によって検証する.尚,図6から図10には,カイ二乗検定でのp値を示している.上段は回数による違いをみた値,下段カッコ内は参加の有無による違いをみた値となる.
5-1 大学生時代の里山ボランティアと大学生までの自然に対する思いとの関連
ここでは,大学生までの自然に対する思いが,里山ボランティアの参加と関連するのかをみる(図6).「自然が元から好きだった」については,参加の有無・回数との関連性はみられない.また,「自然に対し子どものころの良い思い出がある」についてみると,参加回数には関連性がみられないものの,参加の有無については,良い思い出がある方が参加する傾向がみられる.
また,大学生時代の里山ボランティアへの参加の有無・回数と,「自然に対して学生時代に良い思い出がある」かの関連をみると,里山ボランティアに参加した回数が多い人の方が有意に高く学生時代に良い思い出があると回答している.
5-2 学生時代の里山ボランティアと現在の価値観・態度の関連
ここでは,大学生時代の里山ボランティアへの参加の有無・回数と,現在の価値観・態度に関連があるのかをみる(図7).
「環境は大切だ」についてみると,参加した方がやや高い傾向があるものの,参加回数とは関連がない.「自然は大切だ」については,参加した方が有意に高いものの,参加回数とは関連がない.「里山は大切だ」に関しては,有意差はみられない.「農的な暮らしは大切だ」については,有意な関連がみられない.「地産地消は大切だ」については,参加回数が増えるほど高まり,参加の有無による有意差がみられた.「地域の活動を大切にしたい」については,参加回数が増えるほど高く,有意差がみられた.「NPO・市民活動を大切にしたい」については,参加の有無による有意差がみられた.
また,自分の子どもに対し自然・里山体験をさせたいかとの関連をみると(図8),参加回数が増えるほど子どもにも体験させたいとする割合が高いものの,有意差はみられなかった.
こうした価値観・態度の形成が,大学生以前に形成されていた可能性についてみるために,大学生までの自然に対する思いと現在の価値観・態度の関連をみた(図9).上段のグラフは「環境は大切だ」との関連を,中段は「自然は大切だ」,下段は「里山は大切だ」との関連をみている.大学生までの自然に対する思いによる「環境は大切だ」,「自然は大切だ」への有意な関連はみられないが,「里山は大切だ」については有為な関連がみられる.里山ボランティアへの参加と現在の価値観・態度への関連(図7)と逆の結果となった.
5-3 大学生時代の里山ボランティアと現在のライフスタイルの関連
ここでは,大学生時代の里山ボランティアへの参加の有無・回数と,現在のライフスタイルに関連があるかをみる(図10).多くの項目で,学生時代に里山ボランティアに参加した方が,自然と関わりのあるライフスタイルを送る傾向があるものの,統計的な有意差はあまりみられなかった.弱い関連がみられたのは,学生時代に里山ボランティアに参加した方が「里山保全活動」を行っていた.また,「自然と触れるイベントへの参加」については,参加回数が多いほどイベントへ参加する特徴がみられた.
6.考察
にっしんのんびり村プロジェクトに関与したゼミナールの卒業生へのアンケート調査を元に分析を行ったもので,バイアスを排除できないものの,その上での知見として考察を行う.
その中で,里山ボランティアへの参加回数の多かった人と少なかった人とでは,元から自然が好きだったり,子どものころの自然体験に良い思い出があったりしたかについて有意差はなく,大学生時代の里山ボランティアへの参加の有無・回数の違いによる価値観や態度,ライフスタイルへの関連をみる意味はあると考える.


図9 大学生までの自然に対する思いと現在の価値観・態度(N=77)

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図10 大学生時代の里山ボランティアの参加と 現在のライフスタイル(N=77) |
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里山ボランティアに参加した大学生に「環境は大切だ」,「自然は大切だ」という特徴がみられたこと,大学生までの自然に対する思いに有意な関連がみられなかったことから,大学生時代の里山ボランティアの経験により,現在の環境や自然に対する価値観・態度に影響を与えたと考えられる.里山ボランティアを振り返った自由回答には,「普段の生活では体験できないことを経験して,環境のことを考えるようになった」,「自然と触れ合うきっかけになった」など複数の人が里山ボランティアをきっかけに環境や自然への意識や態度を獲得するに至ったことをあげている.
また前述のように,にっしんのんびり村プロジェクトは,自然や畑の中から食を通して命のありがたさを感じられる体験を大切にしてきた.里山ボランティアへの参加を通して,「地産地消は大切だ」という態度に影響したと考えられる.自由回答には,「自分達で採った山菜を,天ぷらにして食べるという経験は,都会で生まれ育った私には初めてで,とても感動した」,「畑作業などを通して自然と触れ合う楽しさがとても良かった」,「自然のありがたみを知ることができた」など,複数の人が野草の天ぷらや,七草粥,畑作業などを通して自然の恵みを感じていたことをあげている.
さらに,このプロジェクトが地域の人の知恵と市民活動の力によって実施してきたことを,参加した学生ボランティアが実感し,「地域の活動を大切にしたい」「NPO・市民活動を大切にしたい」という価値観・態度に影響したと考えられる.自由回答には,「学外の大人たちと知り合えたこと.木を切る,重たいものを運ぶなどの重作業により,多様な人が集まる場で一体感が生まれていた」,「集まる方々のあたたかさに触れることで自分の中のボランティア活動への動力源を知ることができた」など,里山ボランティアを通して協働の大切さを実感していたことがわかる.
一方で,ライフスタイルの面でみると,回答者の多くがサラリーマンで,年齢層が30代までであるため,自然との関わりに割く時間的余裕はないのが現状であろう.自由回答には「インドアであり虫も嫌いなため,野外活動への興味は少なかったが,里山活動に参加し,自然の中で友人等と食事をしたり,話したりすることは楽しく,良いものだと思えた.キャンプ等,趣味として野外での活動にも興味をもつようになった」と回答した人もいる.また,里山ボランティアに参加した人の中には,里山保全活動や,仕事としての関りとして取り組んでいる人が,わずかながらみられたことは,里山ボランティアの効用と考える.
7.おわりに
里山活動である,にっしんのんびり村プロジェクトを総括し,食を通した命への感謝と,市民活動および百姓仕事により成立していたことを明らかにした.
同プロジェクトに関与した大学のゼミナール卒業生に対するアンケート調査からは,同プロジェクトへの参加の有無・回数で,その後の人生において,自然とのつながりの必要性に差があることがわかった.
今後の課題として,本稿では分析できなかった,里山ボランティアの参加者の中で,どのような活動を行った人が,環境意識を高め,環境行動につながるのかを明らかにする必要がある.また,新たな里山保全活動の担い手につながる因果構造を明らかにしたい.
補注
引用文献
著者連絡先
村田 尚生
〒470-0195 愛知県日進市岩崎町阿良池12
愛知学院大学総合政策学部
E-mail: tmurata@psis.agu.ac.jp
2023年8月3日受付 2024年3月20日受理
©日本環境共生学会(JAHES) 2024
(1) 筆者の専門分野は,都市計画・まちづくりであり,市民参加やNPO活動の一環として当該プロジェクトに関与した.
(2) 大学生(大学院生なし)がゼミ活動として参加したボランティアは,環境,福祉,子育て,コミュニティなど,任意団体やNPOといった非営利組織,地縁組織,行政から依頼されたもので,希望する活動に参加することとなっていた.
(3) ブリコラージュとは,文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースが1962年に発表した『野生の思考』で取り上げた概念.フランス語で「ありあわせの道具,材料を用いて自分の手でモノをつくること」を意味する.
(4) 仏教用語としての身土不二(しんどふに)は,今までの行為の結果としての「身」,よりどころとしている環境としての「土」は切り離せないという意味.また,大正時代に「食養会」が食養運動のスローガンとした身土不二(しんどふじ)は,地域の旬の食材や伝統食を取り入れようというもの.