環境共生
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公開シンポジウム「地域の食文化の持続を目指して」
開催趣旨
村田 尚生
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2024 年 40 巻 2 号 p. 182-183

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1.趣旨説明

 テーマ,タイトルとしては,「地域の食文化の持続を目指して」ということで,今,われわれが置かれている現在社会の現状として,食をめぐる様々な課題があろうかと思っております.

 例えば,食料自給率という点でとらえてみますと,われわれ日本というのは,常に低い状況にあります.カロリーベースで38%といっていますから,62%は海外からやってきている状況にあります.これは,先進国の中でも飛び抜けて低いです.例えば,フランスは131%,アメリカは121%で,このような国々は,輸入しているより輸出している方が多いです.ドイツが84%で,同じ島国のイギリスでも70%ですから,日本の38%がいかに低いのかを考えていただくと,ある意味,食料安全保障という観点からも非常に問題です.

 そのような中で,ロシアによるウクライナ侵攻が起こりました.世界の穀倉地帯であり,世界中の小麦の大半がその地域で作られている状況の中で,日本だけではなく,本日お話にも出てきますアフリカ諸国も非常にあおりを食って,食料自給の課題が大きくのしかかってきているということが,現状としてあるでしょう.

 このような中で,まさにグローバルな食料供給体制から,自給の方向をいかに探っていくのかは,日本の国としても重要ですし,世界の,まさに持続可能性という意味でも大きな意味があるのではないかと思います.

 2つ目の問題として,日本は,世界の中で飛び抜けてフードマイレージが高くなっています.フードマイレージとは何かと言いますと,われわれの口に届くまでに,食べ物がどれだけ長い距離を運ばれてきたのかを計算したものです.数字的に言いますと,なかなかピンと来ない部分がありますので,あえて今日は数字を言いませんが,日本は世界一です.2位が韓国で3位がアメリカなのですが,2・3位の韓国・アメリカに比べて,日本のフードマイレージは3倍以上です.日本だけが飛び抜けて,とんでもなく高い数字になっております.これはまさに,環境共生学会,あるいは,昨今のSDGsという観点からも,おおいに課題として取り組んでいかなければいけない問題となってくるでしょう.

 もう一つは,国内における農業従事者の高齢化という課題があろうかと思っています.現在,日本の農業従事者の平均年齢は68.4歳です.平均年齢が高齢化の基準である65歳を超えているわけです.そのような中で,食をいかに持続可能にしていくかという観点でとらえますと,担い手をどのように作っていくのかに真剣に取り組んでいかなければなりません.これから10年20年しますと,この68歳が,78歳になり88歳になり,まさに持続不可能な世の中に突入していくことになります.

 そのような側面から,このシンポジウムの中では,まさにエコロジカル・フットプリントをいかに低減するのか,低炭素社会や地域循環共生圏を実現していくためにどのようにしていけばいいのか,ということを考えていければと思っています.

 本日は,様々な解決のための方向性が示されると思っています.幾つかポイントだけを確認できたらと思っておりますが,1つ目は,地域の食文化をいかに見直していくのかということになってきます.ユネスコが和食を無形文化遺産に登録しましたが,そのような中で,われわれは,地域の食文化を,はたしてどれだけきちんと大切にしているのだろうか.食育を通じた食文化どのように継承していくか.世界の動きとして,「スローフード」というキーワードがあると思います.例えば,今日ご紹介いただきます話の中には,3年かかって漬ける守口漬という愛知県独自の食文化があります.そういうものを,われわれはどれくらい知っていて大切にしているのでしょうか.そして,そのような食文化をもう少し外の人に発信しながら,評価してもらうという意味で,「ガストロノミーツーリズム」という考え方があります.例えば,これで有名なものに,スペインのバスク地方のバスク料理というのは,世界中から観光客を集めていると言われています.われわれの食文化である「和食」が世界から注目を集めている中で.われわれ自身がその食文化をどのように大切にできるか,という視点が必要になってくるのではないかと思います.

 もう一つは,農業生産を継続して,食を大切にしていこうとしますと,やはり経済的にも回っていかなければいけません.つまり,いかに高付加価値化するかということになります.例えば,農業の6次産業化があります.ただ生産する1次産業ではなく,それを一体的に加工や流通まで持っていけるのか.さらには,生産者と消費者をどのようにつないでいくのかという視点も大事になってくると思います.例えば,地産地消を進めていく中で,直売所というものが,愛知県の中にもたくさんあります.これは,単に食の消費ということだけではなく,コト消費にもつながっています.その中で,消費者と生産者とが顔の見える関係を築いていけば,生産者も勇気づけられ,積極的に食料生産に励むことができるようになってくるだろうと考えております.

 そのような中で,このシンポジウムでは,地域の食文化に注目して,政策面と実践面での現状を多面的に知り,将来へつなげる方策を考えていくことを目的として実施したいと思っております.それでは,皆さん,よろしくお願いいたします.

 
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