Journal of Human and Environmental Symbiosis
Online ISSN : 2434-902X
Print ISSN : 1346-3489
[title in Japanese]
[in Japanese]
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2025 Volume 41 Issue 1 Pages 1-2

Details

巻頭言

2024年度・第27回学術大会・公開シンポジウムは日本環境共生学会主催,立命館大学日本バイオ炭研究センター*1共催にて立命館大学大阪いばらきキャンパスにて2024年9月14日(土)および15日(日)の両日に約百名の参加を得て盛会となりました.発表や質疑・議論・聴衆,また大会運営にご参加いただいた会員の皆様,理事及び準備に活躍していただいた委員やスタッフのみなさまに感謝を申し上げる次第です.

共催の立命館大学日本バイオ炭研究センターは,2022年11月17日に設立されました.このセンターは,地球温暖化防止と脱炭素社会の実現を目指し,バイオ炭の研究と社会実装を推進するための拠点です*2 .同研究センターは,バイオ炭の環境保全機能を活用し,地球温暖化防止と脱炭素社会の実現に向けた研究を推進しています.バイオ炭のCCS機能や土壌改良効果,LCA手法の開発,社会実装のためのプラットフォーム構築など,多岐にわたる研究活動を通じて,持続可能な未来を目指しつつ,立命館大学日本バイオ炭研究センターはバイオ炭の研究と社会実装を通じて,環境保全と持続可能な社会の実現に貢献しています.

バイオ炭は,有機のバイオマスを高温で熱分解して得られる無機炭素固形物であり,土壌改良材としての効果や炭素貯留効果が実証されています.立命館大学日本バイオ炭研究センターは,バイオ炭の環境保全機能を最大限に活用し,温室効果ガスの排出削減に貢献することを目的としています*2

センターの設立背景には,2015年に採択された「パリ協定」に基づくカーボンニュートラルの目標達成があり,特にバイオ炭の農地施用が注目されています.脱炭素分野の「炭素除去」に資する有効な方法として,2019 年改良版のIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)ガイドライン(1.5℃特別報告書: SR15)においてCDR (Carbon Dioxide Removal)として認められたことを契機に,「バイオ炭の農地施用」が2020 年 9月に温室効果ガスの排出削減量や吸収量を環境価値として取引が可能な「クレジット」として日本国政府が認証する制度「J-クレジット」の対象となったため,温室効果ガスの排出削減量や吸収量をクレジットとして取引できるようになりました*3.この世界でも類のない初めてのバイオ炭の農地貯留を通じた二酸化炭素削減方式とその認証とIPCCで認められた日本政府データベースへの登録,またESG投資や環境統合報告書に記載可能な排出量取引が開始されたというシステム全体と共に,このシステムがもたらす農山村の地域開発への多大な貢献が開始されています*4

2024年時点での立命館大学日本バイオ炭研究センターの研究は,以下の3つの主要な領域に焦点を当てています.

  1.    バイオ炭の環境保全機能に関する研究:
    •   

      CCS機能: バイオ炭は,二酸化炭素の回収・貯留(CCS)機能を持ち,地表上のCO2の絶対量を削減する手法として注目されています.未利用バイオマスを利用することで,地域の林業・農業振興にも寄与します.

    •   

      土壌改良効果: バイオ炭は,土壌の透水性や保水性を改善し,農業生産性を向上させる効果があります.特にブラジルのテラプレタのような事例が示すように,バイオ炭の土壌改良効果は国際的にも高く評価されています.

  2.   

    ライフサイクルアセスメント(LCA)手法の開発・事例研究:

LCAは,サプライチェーン全体を通じて環境影響を評価する技法であり,バイオ炭の長期的な環境影響を定量化するために重要です.立命館大学では,LCAに必要な基礎データの蓄積が進められており,バイオ炭のLCAに関する研究が国内で先駆けて行われています.

  1. 3.  

    カーボンマイナスに向けたバイオ炭の炭素貯留による社会実装:

経営学のプラットフォーム戦略やビジネス・エコシステム戦略を活用し,バイオ炭の社会実装を推進しています.産官学民の連携により,バイオ炭の生産・販売,農地への施用,カーボンオフセットの活用など,多様なステークホルダーが協力して価値創造を行うモデルを構築しています.

 農林水産省や環境省とともに,世界初の地域の未利用バイオマスを活用した地廃地活というバイオ炭を用いた農地貯留と,日本での排出量取引(ボランタリーマーケット)の実効ある取引を始めているという環境共生地域開発システムにご関心のある会員諸氏はぜひ立命館大学日本バイオ炭研究センターのwebサイト*1あるいは日本バイオ炭コンソーシアムのwebサイト*5からコンタクトをお願いいたします. (Email: rbrc@st.ritsumei.ac.jp).

<参照先URL 2025年3月3日時点>

*1 立命館大学日本バイオ炭研究センター(2022〜)

https://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=578514&f=.pdf

*2 https://www.ritsumei.ac.jp/research/brc/top/

*3 https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=2928

*4立命館大学カーボンマイナスプロジェクト (2007〜)

https://www.ritsumeikan-carbon-minus.org

*5 立命館大学日本バイオ炭コンソーシアム(2023〜2025)

https://www.ritsumei.ac.jp/research/brc/BC/member/

 
© Japan Association for Human and Environmental Symbiosis
feedback
Top