セッションを担当した各座長による総括を以下に記す.
<A1> 環境共生各論「SDGSと意識・行動」
座長 松本 亨(北九州市立大学)
(1) 地域循環共生圏におけるローカルSDGs活動評価の枠組みの検討
原理史(環境創造研究センター)
古澤礼太(中部大学)
水上聡子(アルマス・バイオコスモス研究所)
堺勇人(環境市民プラットフォームとやま)
(2) ローカルSDGsの創造に向けた地域の共創手法に関する研究
東海林伸篤(世田谷区)
早川大悟(ネイチャーアシスト)
遠藤伸・栗原樹(東北ソーシャルデザイン研究所)
風見正三(宮城大学)
(3) 中山間地域における農業経営の持続可能性について
牛尾菜花・高野雅夫(名古屋大学)
(4) 産学連携によるサステナビリティ人材育成講義の効果検証:日本における若年者の環境意識向上と行動変容の促進
谷口浩二(武庫川女子大学)
(5) 地方都市における買物⾏動と環境意識:大分市を対象にして
岩見昌邦(和光大学)
石橋健一(愛知学院大学)
(6) コミュニティ菜園によるサステナブルなライフスタイル形成の可能性に関する研究~ソーシャルキャピタル,ウェルビーイング,環境意識の視点から~
村瀬嶺於・明石修(武蔵野大学)
「SDGsと意識・行動」では,ローカルSDGsやサステナブルな社会形成に向けた評価・共創手法,意識と行動の関係等について研究報告が行われた.
(1)の論文は,地域循環共生圏(ローカルSDGs)を目指す取組みを評価する枠組みを検討したものである.評価のための価値基準を「ローカルSDGs活動の効果が環境,社会,経済の各分野に波及し,それにより3つの分野の融合と共進が進み,環境資本,社会資本,経済資本のそれぞれが蓄積されること」とし,達成度・貢献度・成長度の3つの分類により評価することを提案している.さらに,EPO(環境パートナーシップオフィス)中部における地域循環共生圏に貢献する活動成果の可視化の試みが報告された.これに対して,指標選定の考え方やSDGsとの関係に関する議論が交わされた.
(2)の論文は,欧州における地域主導のイノベーション・エコシステムの構築として「スマート・スペシャリゼーション戦略」等の政策の背景として考えられるヘリックス理論の構造を明らかにしたものである.現地ヒアリング調査を通じて,ロランCTF(Lolland Community Testing Facility)において進められた産官学民-環境連携(Quintuple Helix)の実践と仕組みを明らかにした.また,知識触媒組織としてのBaSS(Baltic Sea Solutions)が,自治体の戦略的パートナーとして技術的支援,資金調達,関係するステークホルダーの連携の促進等の重要な役割を果たしたこと等を明らかにした.これに対して,中間支援組織の財政基盤等に関する議論がなされた.ローカルSDGsの取り組みにおいても,自治体の戦略的外部パートナーとしての中間支援組織の必要性が指摘されており,今後その位置づけや役割,展開手法が分析されていくことが期待される.
(3)の論文は,中山間地域での持続可能な農業経営の検討と提案を目的とし,従来型の農業経営と農業の「新しい挑戦」を行う複数地域で,農業経営のあり方を比較したものである.農業経営統計調査のデータを用いて日本の平均的な農業経営状況を把握し,また中山間地域での農業経営の実態を明らかにするために,農業経営体の関係者に対して半構造化インタビーを実施している.ヒアリング対象地域では,いずれも生産者と消費者がつながっており,米を市場相場より高値で取引先に販売していること,政府からの中山間地域等直接支払の交付金等を加えることで利益を上げていることを明らかにしている.生産側の雇用確保,消費側の契約者の確保と維持が課題であるとともに,今後ヒアリング調査結果から得られた示唆の汎用性が分析・考察されることが期待される.
(4)の論文は,産学連携による気候変動教育プログラムを設計・実施し,その効果を評価したものである.プログラムは,大学教員が担当する基礎講義と,企業のサステナビリティ担当者が担当する実践講義から構成された.受講後のアンケート調査では,環境意識と行動変容に対して高い効果が示された.その一方で,被験者の事前知識のばらつきや行動変容の持続性といった課題にも言及している.これに対して,到達度を評価する際の能力要件について議論があった.これらの課題に対処しつつ,効果的な教育プログラムの構築が期待される.
(5)の論文は,大分市の中心市街地とその周辺の郊外ショッピングセンターを対象に,SCP(持続可能な消費と生産)の実現度を消費者意識と行動の視点から明らかにしたものである.具体的には,大分市及びその周辺居住者の買物行動と環境意識に着目し,中心市街地への出向(買物)頻度と環境意識(SDGs認知度)の高さとの間に関係性があることを明らかにした.この結果より,中心市街地の商業システムが,SCP実現に向けて変容し始めていると結論づけている.これに対して居住地の関係や中心市街地の性格に関する議論があった.中心市街地におけるSCP対策との関連についてより深い分析がなされることが期待される.
(6)の論文は,校舎屋上のコミュニティ菜園におけるオープンワークへの参加が,参加者のウェルビーイングやソーシャルキャピタル,環境意識にどのような影響を及ぼすのか明らかにすることを目的とした研究である.調査の結果,コミュニティ菜園がソーシャルキャピタル,ウェルビーイング,環境意識を同時に向上させる可能性があり,コミュニティ菜園が人々のつながりを促進し,環境への配慮を深めることで持続可能なライフスタイルの形成に寄与する可能性が示唆されると結論づけている.これに対して,サンプル数や調査方法に関する議論がなされた他,継続的な調査に対する期待が表明された.
<B1> 環境共生各論「エネルギーと温暖化」
座長 藤井実(国立環境研究所)
(1) 複合商業施設の外気温度を用いたコージェネレーションシステムの運用改善手法の提案
水谷彩葉(慶應義塾大学環境情報学部)
中山俊・厳網林(慶應義塾大学)
(2) 熱中症と水害を対象とした気候変動リスクの評価
田近柊(関西大学)
島田舜太(元関西大学)
木下朋大・尾崎平(関西大学)
(3) 次世代エネルギー・ビークルを対象とした産業連関分析:経済と環境への影響に着目して
富樫大生・崔明姫・渋澤博幸(豊橋技術科学⼤学)
(4) 日本の小水力発電コミュニティパワーにおける所有者共同体の在り方
藤波楓夏・高野雅夫(名古屋大学)
(5) 夜間光データに基づく都市域と環境影響の将来推計
岡野義則・松本邦彦・紀伊雅敦
(6) ゲームを用いた脱炭素に関する市民の意識と行動変容
石河颯也・後藤尚弘・荒巻俊也・大塚佳臣・ 平松あい・花岡千草(東洋大学)
「エネルギーと温暖化」では,温暖化の影響が顕在化しつつあり,カーボンニュートラルの早期達成が求められる社会情勢を反映して,エネルギーの効率性,新たなエネルギーシステムの評価,エネルギーシステムの運営主体,市民の意識,衛星データの活用,気候変動リスクの評価など,幅広いテーマについての発表と質疑が行われた.
水谷ら(1)の報告では,複合商業施設において,電熱併給システムの利用と,外部の系統電力の利用とを最適化することにより,CO2排出量の削減が可能になることが示された.今後再生可能な電力の割合が増大する中で,従来とは異なる電熱併給システムの利用方法を検討する必要が生じると考えられる.
田近らの報告(2)では,兵庫県を対象にして熱中症,洪水,内水氾濫の気候変動リスクを自治体単位で可視化することにより,政策担当者や市民がリスクの大小,対策の必要性やその優先順位を判断する資料を提供している.2024年の世界平均気温は産業革命以前と比べて既に1.5℃を超えていたことが報告されており,気候変動リスクを把握し,適切に備えることの重要性が益々高まっていると考えられる.
富樫らの報告(3)では,脱炭素社会の実現にとって重要となる,次世代エネルギーやビークルの導入が,産業連関を通してどのように経済や環境に波及的に影響するのかを分析している.電源の脱炭素化を進めつつ,電気自動車への転換を進めて行くことが有効であるという結果に加えて,地域によって電源構成や生産割合が異なるため,適切にエネルギーミックスを進めていくことの重要性が示されている.
藤波らの報告(4)では,世界においてコニュニティーパワーが増加している状況を踏まえて,日本国内でポテンシャルの大きな小水力発電を対象にして,事業実施プロセスにおける住民参加や意思決定の進め方,事業の所有や利益配分等について調査している.その結果,地域共同体構成員が出資した開発主体(所有者共同体)が意思決定プロセスを主導し,地域共同体全体に便益を還元していることが示されている.
岡野らの報告(5)では,衛星で観測される夜間光のデータを用いて,都市を類型化した上で都市域を推計し,都市が拡大する地域の土地被覆の構成を明らかにすることで,農作地や森林が消失する恐れのある地域を示している.カーボンニュートラル実現のための対策には,土地利用や森林の炭素蓄積量等に大きな変化をもたらすものが多いため,効果とのトレードオフを慎重に検討することが必要と思われる.
石河らの報告(6)では,脱炭素をテーマにしたゲームを開発し,ゲームの参加を通して環境意識が高められることを示している.特に10代,20代で行動変容にも大きな期待が持てるとの考察が示されている.社会を変革するには,市民や企業の行動変容が大きな駆動力になるはずである.環境に関わる効果的な情報提供が重要な役割を果たすと考えられる.
セッションを通して,気候変動の緩和と適応に関わる幅広いテーマについて,分析方法及びその結果や,対策を推進するためのプロセス等に関わる実践や考察が示されており,大変興味深いものであった.この分野の研究と社会の更なる発展に期待したい.
<A2> 環境共生各論「自然と農業」
座長 伊東英幸(日本大学)
(1) 日本における国内外来種研究の特徴と意義
平木雅(大阪大人間科学研究科)
太田貴大(大阪大人間科学研究科)
(2) 鳥取県中西部における国道9号の⼀般道とバイパス道路のロードキル発生状況の比較
末次優花(日本大学)
伊東英幸(日本大学)
(3) 奄美大島におけるアマミノクロウサギのロードキル発生要因の分析
大森涼太(日本大学大学院)
伊東英幸(日本大学)
末次優花(日本大学)
(4) 日本の篤農思想から学ぶ持続可能な農業モデルの研究―稲作を通じて築かれる生産者と消費者の新たな関係の考察―
餅田宏喜(⼀般社団法⼈東北ソーシャルデザイン研究所)
鈴木佳文(⼀般社団法⼈東北ソーシャルデザイン研究所)
風見正三(宮城大学事業構想学群)
(5) Urban Forest Dynamics and Age Distribution Analysis: A Case Study in Nagoya, Japan
Sun Zixin (Nagoya University)
Kiichrio Hayashi (Nagoya University)
Niu Wei (Nagoya University)
Kiyoshi Takejima (Chubu University)
本セッションにおいては,5論文の発表が行われた. 以下に,セッションにおける論点および今後の期待について述べる.
(1)の論文は,国内外来種に関する諸問題点を踏まえ,日本における国内外来種研究を包括的に整理し,国内外来種研究の特徴を考察し,国内外来種研究の意義を示したものである.「国内外来種」は国内に起源を持つ外来種を指しているが,その認知度は高くないことから,その存在や影響そのものをあまり知られていない.このような背景から,国内外来種として他地域に侵入し定着しても,その存在自体が顕在化しない,あるいは認識されない可能性が高く,対策が遅れる懸念がある.また,国内外来種は国外外来種と比べて定着しやすいことや見分けにくいことや,生態系被害防止外来種リスト等で包括的に整理されているものの,国内外来種は認知度が高くないことから影響な顕著な種のみが情報整理されている可能性も指摘されている.
本研究では,日本国内の国内外来種に関する研究を整理するために Google Scholar, CiNii Artcles とJ-Stage を用いて2002 年以降の計 82 本の文献を抽出し,文書タイプや研究対象,研究分野,研究地域,「国内外来」を意味する英語表現にそれぞれ分類し,傾向や特徴,研究意義を検討した.その結果,わが国では2010年以降に国内外来種研究が出現して以降,増加傾向にあり,研究分野は「生息/生育状況・分布」や「産地記録」に関連した文献が多かったことが示された.分類群では「魚類」や「両生類」,「植物」に関する研究事例が多く,地域的には「両生類」研究の多い北海道が最も多く,関東や関西でも研究事例が多いことが示された.また,特に研究事例が多くない地方においては,研究者と市民の協働による情報収集が重要であり,地域の生物に詳しい在野研究者を巻き込む形の市民科学が望ましく,顕在化しない国内外来種の存在や影響をいち早く発見する仕組みや手法が必要であると述べている.
質疑応答では,国内外来種の移入経路や国内外来種の英語表記に関する質疑,意見交換がなされた.
(2)の論文は,鳥取県中西部の一般国道 9 号の一般道とバイパス道路(以下,BP)におけるロードキル発生実態を把握し比較するとともに,ロードキル発生地点の周辺環境等から事故多発要因を考察したものである.使用したデータは2013~2017 年度(5 年間)の道路上の動物遺体回収記録とし,記録内容は動物種名(例:タヌキ,ネコ等),動物遺体回収年月日と時間帯(昼間・夜間),動物遺体回収位置の道路標番号(10m 単位)と上下線の別となっている.また,道路周辺環境のデータとしては,環境省の第 6 回・第 7 回自然環境保全基礎調査の植生図を用いて①植生自然度,②森林,農地,開放水域,市街地等の景観要素に分類し,R9,R9BP の道路中心線から 500m 円バッファ内に占める①②それぞれの指標の面積を算出した.
その結果,哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類のロードキルが確認され,特に哺乳類が多くみられた.1km あたりの年平均件数を算出した結果,R9はイエネコ,R9BP はタヌキ sp.が最も多かった.R9 沿線は市街地や農地が多いためイエネコが多く,R9BP 沿線は森林などの生息環境の多さからタヌキ sp.が多かったと考えられた.R9BP は R9よりトビの件数が多く,遺体の食餌利用による二次被害の可能性が示された.発生件数上位 3 種の季節変化をみると,タヌキ sp.は R9,R9BP ともに 9~11 月に件数が多く,イエネコは R9 は 7 月,R9BP は 9 月にピークを示した.この理由として,繁殖や子供が親の行動圏を出て独立する分散行動などライフステージに伴う行動が影響していると考えられた.一方でイタチ sp.は目立ったピークはなく 1 年を通して発生しており,通年で定常的に道路を利用している可能性が考えられた.以上より,R9,R9BP のロードキル発生状況は周辺環境等の違い により異なることが明らかとなった.
質疑応答では,ロードキルに関するデータの収集方法やドライブレコーダーのデータの活用の可能性,分析結果の政策への活用などについて質疑,意見交換がなされた.
(3)の論文は,奄美大島においてロードキル発生件数が多い 4 区間(湯湾,網野子,阿室釜,三太郎峠)の道路を対象として,上下線別に収集した道路構造や道路環境のデータを基にポアソン回帰モデルを用いた分析を行い,ロードキル多発地点の特徴とその因果関係を明らかにしたものである.鹿児島県奄美大島は,特別天然記念物および絶滅危惧ⅠB類に指定されているアマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)の生息域となっており,ロードキル発生件数は年々増加傾向にあり,深刻な問題となっている.本研究では,2008 年 4 月~2022 年 3 月のロードキルデータを被説明変数とし,現地調査により得られた道路構造と道路環境データを説明変数として100m,300m,500m の区間長のデータを用いたポアソン回帰モデルによる分析を実施している.
その結果,500m 区間長での分析結果が最も当てはまりが良く以下のような考察がなされた.①道路構造は,平坦よりも盛土と切土の方が見通しが悪くなるため事故リスクが高くなった.また,道路構造の係数が他の説明変数と比較して大きく,ロードキル発生件数の増加には道路構造が特に影響している可能性が示された.②道路線形は,直線と比較して左カーブ,右カーブともにドライバーからの見通しが悪くなるため事故リスクが大きくなる結果となった.③道路幅員が広い区間は,自動車の速度が高くなり,ドライバーの反応が遅れるため,ロードキルリスクが増加する.④法面の種類は,走行車線の左側が土壌法面では,アマミノクロウサギが出現しやすく,飛び出してきた際にドライバーの反応が遅れるため,ロードキルリスクが増加する.⑤縦断勾配の影響はあまり大きくないが,ロードキル発生件数は下り勾配で増加し,逆に上り勾配で減少する傾向がみられ,上下線における勾配の違いによる速度変化が結果に表れた.⑥道路上に飛び出した植物の有無は,アマミノクロウサギが植物に隠れて発見しづらくなるため,ロードキルリスクが増加する.
質疑応答では,今回の分析結果の活用方法やカメラの設置による事故データの収集方法などについて質疑,意見交換がなされた.
(4)の論文は,持続可能な農業モデルの確立を目指し,大正末期から昭和初期までの篤農家を中心に活動した「農村更生運動」を基点として,現代農業に応用する方法について探求することを目的としている.篤農家は,農業者が自らの生業を誇りとし,技術の向上や地域社会への貢献を目指す思想である「篤農思想」を実践する模範的な農業者のことであり,①技術力,②環境配慮,③地域貢献,④持続型経営の4つの特徴を持っている.本研究では,現代の篤農家として23代目として活動している有機米栽培農家を事例として取り上げ,有機栽培を通じた環境との調和を重視した農法や思想が与える生産者への影響や,消費者が篤農家による「農体験・自然体験」などから,食と農へ関わる想いの変化や両者の相互理解や自然共生などについて着目し考察している.大正末期から昭和初期において衰退する農業に対して「農村更生運動」を展開しており,山崎延吉 らは「農村指導者として「農本思想」をもとに優れた知識と技術を持ち,その実践を通じて地域全体の農業発展を地域経済の安定を目指す献身的な農家を「篤農家」と定めている.また「篤農家懇親会」として全国の篤農家を訪問した山路虎吉らが全国の篤農家活動をとりまとめた「篤農家研究」では「農村自治」という観点から環境,経済,社会について「篤農思想」と「実践的な農業」の指導を通じて,多面的な価値へ導く地域農業の復興に繋がると論じられている.また,農業政策として「みどり食料システム戦略」が 2021 年に制定されて以降,持続可能な農業モデルについて様々な議論が論じられており,このなかで農業体験プログラムは篤農家として現在も活動している生産者が保有している水田稲作圃場を活用し,「水田稲作の多面的機能」の観点から,新たな自然共生農法や生産者が育んできた地域環境,歴史文化を取り込んだプログラムとなっている.消費者が実際に稲作を体験することから,生産過程を理解し,農・食・環境や地域住民への配慮などへの意識を醸成させる.生産者は消費者と直接対話をすることで信頼関係を築く場となり,水田稲作の栽培技術の向上や品質評価と改善に繋がる.この農業体験プログラムは単なる体験に留まらず,「哲学に基づく啓蒙」により消費者と生産者の関係を良好にしていく効果がある.哲学に共感した消費者と「篤農コミュニティ」を構築することは,持続的な食と環境への配慮や地域農業の活性と自然環境の保全など地域の活性化にも寄与することが期待され,持続可能な農業モデルの事例としても評価できると考察している.
質疑応答では,篤農家の単収や収益確保のための工夫,通常の農業体験との違いなどについて質疑,意見交換がなされた.
(5)の論文は,LandTrendrから推定した林齢区分を用いて,リモートセンシングで得られた植生指標の季節変化が森林の成熟度によってどのように異なるかについて分析することと,森林の成熟度と植生指標の関係を分析することである.都市の森林は,都市での重要な役割を果たし,生態系に多くの恩恵をもたらしている.その成熟度を理解することは,効果的な管理と保全に不可欠である.正規化湿潤指数(NDMI)のようなリモートセンシングから得られる植生指標は,森林の状態に関する貴重なデータ洞察を提供しているが,これらの指標と都市林の成熟度との関係,特に季節変化との関係については,更なる研究が必要である.また,Google Earth Engine(GEE)のなかで,LandTrendr(Landsat-based Detection of Trends in Disturbance and Recovery)アルゴリズムは,マルチバンドのランドサット画像の時系列を使用して,ピクセル値の変化を識別する高度なツールであり,森林の損失と増加の検出を可能にするものである.分析には,1985年から2022年までのランドサット衛星データを用いてLandTrendrアルゴリズムをGEEに実装し,推定年齢範囲を4つのグループに分けた.また,1999年から2022年までの月別ランドサット7データをGEEからダウンロードし,精度を高めるために大気の影響を除去した植生指数を算出した.解析には,Spyder IDEのPython 3.11を用い,各座標について,ある月に複数のランドサット観測値がある場合には,その平均値を月値とし,季節ごとに集計し,森林面積はそれぞれの年齢グループに割り当てた.また,Shapiro-Wilkの正規性検定を用いて,各年齢群および季節群における植生指標の分布が正規分布に従うかどうかを評価した.その結果,すべての指標は季節と年齢群にわたって非正規分布を示したが,その分布パターンは季節や年齢群によって異なっていた.また,すべての林齢層で,NDMIは一貫して夏に高い値を示し,冬は低い値を示した.このパターンは,名古屋周辺の冬は乾燥し,夏は雨が多いという気候の特徴によるものと考えられる.さらに樹齢の高い森林ほど,すべての季節で一貫して高いNDMI値を示すという明確な傾向も見られた.このパターンは,森林の成熟度と保湿能力との間に強い相関関係があることが示唆された.
質疑応答では,分析手法や分析結果の活用方法などについて質疑,意見交換がなされた.
<B2>環境共生各論「地方と社会」
座長 豊田祐輔(立命館大学)
森 保文 (国立環境研究所)
淺野 敏久 (広島大学大学院人間社会科学研究科)
前田 恭伸 (静岡大学工学部)
多田 羅佑太((株)建設技術研究所)
山中 英生(徳島大学大学院)
板橋 将気(日本大学理工学部)
押田 佳子(日本大学理工学部)
石田 愛奈(日本大学大学院理工学研究科)
崔 明姫 (豊橋技術科学大学建築・都市システム学系)
鈴木 勢七 (豊橋技術科学大学 建築・都市システム学課程)
渋澤 博幸 (豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系)
嶋田 寧々(日本大学理工学部)
押田 佳子(日本大学理工学部)
石田 愛奈(日本大学大学院理工学研究科)
「地域と社会」では,コロナ禍(報告1,4)や現在の社会情勢(報告2:サイクリツーリズム,報告3,5: ペットブーム)を背景とした発表であった.それぞれテーマは異なるが,どれも時期を得ており,基礎研究として大変興味深い発表であり,今後の研究成果への期待が高まるものばかりであった.
森らの報告(1)では,マスク作りなどの自宅でできるボランティア活動が多く報道された一方,感染不安から多くの団体が行事を自粛したためボランティア参加が減少した可能性があることを出発点として,コロナ禍がボランティア活動の参加者数や活動の種類に及ぼした影響を示したものである.3度にわたるウェブ調査から,コロナ禍によりボランティアの減少が見られること,そして,ボランティア活動の多くは団体に所属する必要のないオンラインで行われるものが多かったことが示されている.今後は収益を伴う動画作成など,ボランティアとそうでない活動の定義を明確にした活動実態の把握に期待したい.
多田羅らの報告(2)では,持続可能な未来社会を目指すために社会の構造転換を促す方策が必要であるとして,その方法論の1つとして「トランジション・マネジメント(TM)」に注目している.本研究では,TM手法の加速・成長期に着目し,人や組織の関係を「オルグウェア」とされる視点から捉え,現在進行中の全国5地区のサイクルツーリズムに関わってきた8名へヒアリング調査を実施することで,オルグウェア形成の初期段階では横の繋がりの構築などが重要であり,次の段階では連携意識強化などが重要であること,さらにオルグウェア形成過程では自立分散型のネットワークの形成が重要などの示唆を導出した. 初期段階では地域のコーディネーターの存在も重要であることが示されているが,本知見をどのような制度・仕組みに落とし込んでいけるのかについての今後の研究に期待したい.
板橋らの報告(3)では,ペットブームやコロナ禍に伴う在宅時間の増加を受けて犬同伴可の商業施設が増加しつつあることを背景に,ある運営会社が運営する南関東圏のアウトレット5施設における犬の受け入れ体制の把握を試みた研究である.これら施設の基本情報やペット連れ訪問者へのルール,そして1施設の空間整備から,犬嫌いやアレルギーのある利用者との棲み分けが進んでいることや,店舗でも犬同伴もしくは同伴不可であってもリードフックが設置されているなどの対策が進んでいることを示した.今後は対象を拡大することで,一部の運営会社にとどまらない対策や,屋外型アウトレット以外の施設の傾向などの把握に期待したい.
崔らの報告(4)では,位置情報ビッグデータを用いて,曜日や天気などの影響を考慮した上で,コロナ禍の感染拡大と関連政策が東京駅・大阪駅・名古屋駅という主要駅周辺の滞在人口に与えた影響を明らかにしている.その結果,感染拡大や緊急事態宣言は駅周辺滞在人口を減少させ,ワクチン接種は増加させる効果があることが示された.また感染拡大が続いた時期のGo Toトラベルキャンペーンの前半と,後半ではそれぞれマイナスとプラスという異なる効果が見られるなどの知見が得られた. 対象となっている主要駅の中でも大阪駅は地下街が蜘蛛の巣状に伸びていることから,地下街も対象に含めたより包括的な研究に期待したい.
嶋田らの報告(5)では,ペットブームを背景にペットツーリズムが注目されているなか,関東圏の鉄道会社46社中ペットについて記載がある39社のペット持ち込み方法の規約から,ペット持ち込みの実態を把握することを試みた研究である.ケージサイズや総重量,ペットの種類の記載に基づき分類した結果,首都圏を通る鉄道会社はJR東日本の規約に統一している傾向が見られた一方,地方を通る鉄道会社は独自の規約を導入している傾向を見出した.今後は,規定が昔のまま変わっていないのか,近年修正されているのかなど,どのような変化を経て現在の規定となっているのかなどが明らかになれば,社会の変化をより詳細に読み解くことにつながると考えられ,今後の研究に期待したい.
<A3> 環境共生各論「防災 」
座長:山中英生 (徳島大学)
(1)学校防災教育における被災体験談の活用実態に関する研究―被災地発行の防災教育副読本に着目して―
石田愛奈,押田佳子(日本大学)
加藤颯人(横浜市役所)
(2)都市洪水頻発地域における移転意向の実態分析 −タイ・ウボンラチャタニ市を対象として
積田典泰(日本大学)
Ratthanaporn Kaewkluenglom,Sittha Jaensirisak
( Ubon Ratchathani University)
福田敦(日本大学)
(3)わが国におけるペット同行避難の取組み実態に関する基礎的研究
洞口翼,押田佳子,石田愛奈(日本大学)
(4)高解像度土地利用土地被覆図を用いたソーラーパネルの立地分析と災害リスクの評価
杉本賢二 (大阪公立大学)
(5)レジリエンス教育に資するマネジメント手法の考察 〜デンマークロラン島のヒアリング調査から〜
小林奨(埼玉女子短期大学)
風見正三(宮城大学)
本セッションにおいては,防災に関する5編の論文が紹介された.防災に関する研究は各分野で行われ,内容は多岐にわたっているが,本セッションでも,防災教育,ペット同行避難,立地分析といった多彩な内容について発表が行われた.
以下に論文要旨および今後の期待について述べる.
(1)の論文は,兵庫県および熊本県の児童・生徒向けの防災教育副読本を対象に,学校防災教育における体験談の活用実態を明らかにしたもので,兵庫県では地震発生から避難所生活,復旧までを網羅的に共有した「自助」を重視しており,熊本県では自助や共助,復興支援などの学習から地域学習の学びを促している傾向を明らかにしている.今後,体験の効果検証などへの展開が期待される.
(2)の論文は洪水被害が増加している市街地での移転政策の基礎的な情報を得るため,タイ・ウボンラチャタニ市での住民の移転行動の意向を分析している.洪水多発地域には低収入世帯が居住し,洪水発生時には自宅からシェルターに退避する場合が多く,移転費用と移転先の土地の確保が移転障害の主な要因であることを示している.今後,減災都市形態への誘導政策の可能性検討への展開が期待される.
(3)の論文は 2019 年台風 19 号や 2024 年能登半島地震などで飼い主がペット同行避難を認知してなかったことや,断念例がみられるという背景をとらえ,同行避難のホームページ及びリーフレットの記載事項から取組実態を分析している.同行避難の HP,リーフレットは34都道府県に見られ,身元表示,健康・衛生管理,しつけなど同行避難の事前準備の記載を明らかにしている.今後,同行避難の浸透に向けた取り組みの効果検証への展開が期待される.
(4)の論文は,導入増が見られるソーラーパネルの災害リスク評価を試みている.JAXA の「日本域高解像度土地利用土地被覆図」による解像度 10m データと,災害想定区域を重ね合わせ,都道府県,市町村別に土砂災害警戒区域,洪水浸水区域内に存在するソーラーパネル量を明らかにして,災害時の損傷・流出を想定した事前計画の必要性を指摘している.今後,ソーラーパネル災害事例等の分析などへの展開が期待される.
(5)の論文は「生きる力」の資質・能力を目標とする教育をレジリエンス教育と定義し,そのマネジメント手法について,デンマーク,ロラン島の公立小中一貫校と幼稚園でのインタビュー調査をもとに,子供の興味・関心に基づく主体的意思を尊重して,対話学習を保護者の参画など地域と共に実施していることを明らかにしている.今後,日本での教育現場への試験的導入などに展開されることが期待される.
<B3> 環境共生各論「国際」
Chair: Wanglin Yan, Keio University
Adella Anfidina Putri(Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University),
Hu Jiayu(Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University),
Li Qingyi (Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University),
Miyasaka Takafumi(Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University),
Zhang Xin (Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University),
Yamashita Hiromi (College of Asia Pacific Studies,
Boyi LI (Graduate School of Environmental Engineering, The University of Kitakyushu),
Richao CONG (Institute of Environmental Science and Technology, The University of Kitakyushu),
Toru MATSUMOTO (Institute of Environmental Science and Technology, The University of Kitakyushu),
Yajuan LI (Institute of Environmental Science and Technology, The University of Kitakyushu)
Richao CONG (Institute of Environmental Science and Technology, University of Kitakyushu),
Toru MATSUMOTO (Institute of Environmental Science and Technology,University of Kitakyushu),
Atsushi FUJIYAMA (Institute of Environmental Science and Technology, University of Kitakyushu),
Shinya YASUMOTO (Department of History and Geography, College of Humanities, Chubu University)
Yajie HU (Graduate School of Environment Engineering, University of Kitakyushu),
Richao CONG (Institute of Environmental Science and Technology, University of Kitakyushu),
Toru MATSUMOTO (Institute of Environmental Science and Technology, University of Kitakyushu),
Yajuan LI (Institute of Environmental Science and Technology, University of Kitakyushu)
Pipit Pajarwati (Ritsumeikan University, Graduate School of Policy Science, Doctoral Course),
Fitrio Ashardiono (Ritsumeikan University, Graduate School of Policy Science),
Hidehiko KANEGAE (Ritsumeikan University, Graduate School of Policy Science)
This session had 5 presentations listed above. Each presentation is highlighted as below.
Adella Anfidina Putri et. al. (1): Revitalizing Toba City: The Analysis of Inbound Tourism and Marine Culture in Regional Development. Japan's international tourism grew rapidly after the 'Visit Japan Campaign' in 2003. However, this growth is not evenly distributed. Cities like Toba in Mie Prefecture, which heavily rely on tourism, haven't seen the same coverage due to aging infrastructure and lower global recognition. This study analyzed the foreign inbound tourism in such under-touristed cities. Surveys and interviews with foreign tourists in Toba reveal that tourism is closely tied to Toba's unique marine culture, such as beautiful scenery, Ama divers, aquariums, and seafood. Language barriers and transportation issues are key problems for visitors. This study highlighted operational aspects that can enhance the visitor experience and advocates integrating Toba's marine culture with tourism for sustainability. This research proposes revitalizing Toba by analyzing foreign inbound tourism and marine culture as key drivers or regional development. The authors identify the motivations, preferences, and evaluations of foreign tourists visiting Toba. Based on the questionnaire and interview results, the authors develop strategies to leverage tourism and marine culture to revitalize Toba City's economy, aligning with tourist expectations. This study collected 55 questionnaires: 56.4% female and 43.6% male respondents. Chinese nationals comprised 60% of visitors; others came from Hong Kong, Canada, Indonesia, Thailand, Nepal, Singapore, Poland, Brazil, Malaysia, the U.S., and France. Tourist motivations in Toba are primarily driven by pearl culture (44%), scenic beauty (35%), and seafood (18%), with Ama culture also influencing visits (15%). Pearl culture, particularly represented by Mikimoto Pearl Island, is a major draw.
Boyi LI et al. (2): Optimal Energy Storage System and CCUS Accelerate Energy Decarbonization: A Case Study of Inner Mongolia, China. This research assesses the integration of energy storage Systems (ESSs) and carbon dioxide (CO2) capture, utilization, and storage (CCUS) into Inner Mongolia's integrated energy systems (IESs) to related rich wind and solar resources and significant coal capacities for carbon reduction and economic benefits. Considering both energy structure and policy impacts, the authors analyzed the carbon mitigation potential of hybrid wind solar systems with ESSs and the environmental benefits of retrofitting coal plants with CCUS. The authors highlight optimized renewable energy systems (RESs) and ESSs for maximum emission reduction and the strategic value of CUSS in maintaining energy stability and reducing carbon emissions. This study conducted a case study of Inner Mongolia, China. there are plenty of underground coal reserves. The abundant natural resources also provide a solid foundation for the evolution of the grid state in most cities. The impact of ESSs and CCUS technologies on future IESs in terms of carbon reduction and economic were analyzed. From the perspective of regional carbon reduction, some subsidies should support the installation of ESSs and CCUS, and the cost of IESs can be reduced by gradually increasing electricity prices. The limitation of our study is that the authors only considered the self-consumption of electricity and did not analyze exported electricity. Future research should further study the exports of electricity.
Richao CONG et al. (3): Assessment of Health Risk to COVID-19 and a Novel Monitoring Scheme: Evidence from Fukuoka Municipalities. Health risk visualizations have been conducted at different spatial scales to support policymaking by local governments. For future disease prevention, a standard framework including useful vulnerability indexes and validating its effectiveness is needed for Japanese municipalities. With this background, a novel framework was proposed to access municipal health risks and validate the effect of mitigation policies on COVID-19 infections with location data for vulnerable municipalities for future disease prevention. This study successfully computed vulnerability indices for 40 municipalities in five domains. The reliability of the overall vulnerability indices (Chronbach’s α) computed from five domain vulnerability indices exceeded 0.60. A strong correlation between overall vulnerability developed without confirmed COVID-19 cases (with death cases) and the percentile rank of confirmed COVID-19 cases shows that the constructed overall vulnerability is applicable in detecting vulnerable municipalities. Through validation by using monitored data from hotspots (see an example from Fukuoka City in Figure 1), this study found that reductions in COVID-19 incidence were associated with the decreases in total facility users (human mobility), especially in the months following three times of declarations (state of emergency) in April 2020, January 2021, and May 2021. Furthermore, the authors found that the effectiveness of mandating social distancing policies on human mobility limitation became weaker over time.
Yajie HU et al. (4): Balancing Development and Sustainability: Critical Metal Recycling Potential from China's Electric Vehicle Industry. Ensuring a sustainable supply of critical metals is crucial for future large-scale production of electric vehicles in the context of climate change and resource scarcity. China needs to strengthen its policies and management, especially in response to the EU's NBR and its requirements for battery recycling. Meanwhile, the Chinese automotive industry must accelerate its green transformation to meet environmental standards and enhance international competitiveness. This study addresses existing research gaps by analyzing China’s EV battery supply and recycling potential, estimating the demand for critical metals, and assessing the environmental impacts of recycling various cathode materials. This study used a stock-driven model to simulate the sales and potential EoL number of EV in China from 2015 to 2060. The primary conclusions are as follows: Driven by carbon neutrality targets, China's EV ownership is expected to increase to 470 million by 2060. The rapid growth in EV sales was expected to increase demand for critical materials in manufacturing by 8-30 times in 2023. This surge in demand will strain the supply chain for necessary materials, potentially threatening the sustainable development of the EV industry. This study's limitation is that it focuses on pure electric passenger cars; hybrid and fuel cell electric vehicles are not included. Meanwhile, future research will utilize machine learning methods to optimize recycling processes for critical materials and quantify the discrepancy between actual recycling results and policy.
Pipit Pajarwati et al. (5): The Utilization of Charcoal from Coffee Biomass Waste in Coffee Producing-Area: Study Case South Sumatra, Indonesia. The high coffee production and consumption relies on the high amount of coffee biomass waste. In many coffee-producing countries, management waste issues are complicated due to limited infrastructure and resources. This research investigates the potential applications of coffee waste, examining its feasibility in South Sumatra, Indonesia. The utilization of coffee waste is multifaceted and encompasses environmental, economic, and technological considerations. Coffee-production countries have utilized coffee waste for Biogas, Cascara, Animal Feed, Compost, and Charcoal. The production of charcoal from coffee waste can reduce the amount of waste and capture more than 50% of carbon dioxide, effectively mitigating the potential for carbon emissions. Charcoal also has the economic potential to create carbon credits and local branding for rural development in South Sumatra. Utilizing coffee waste by converting it into charcoal is highly promising due to its simplicity, cost-effectiveness, and potential to reduce environmental pollution. The success of implementing charcoal from coffee waste depends on the integration of sustainable practices, technological innovation, and collaboration between stakeholders in the coffee value chain. However, more research is needed to optimize the conversion processes and explore new possibilities for the utilization of charcoal from coffee waste in South Sumatra.