日本イオン交換学会誌
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マンガン酸化物イオンふるい結晶 (4) 特異的認識分離材料としての応用
大井 健太加納 博文湯 衛平馮 旗
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1998 年 9 巻 1 号 p. 26-35

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抄録
イオンふるい結晶は従来の多孔性材料より狭い細孔を持ち, 特定のイオンに対する認識応答材料としての応用が期待される。主にマンガン酸化物系イオンふるい結晶を対象に, リチウム同位体分離剤, 電気化学的吸着剤, エレクトロクロミック材料, リチウム二次電池材料, などへの応用可能性を検討した。
イオンの選択性とリチウム同位体分別性能との関係を検討した結果, ナトリウムイオン選択吸着性を示す立方晶アンチモン酸が最も高い同位体分離係数を示すことを見いだした。同位体分別挙動は, リチウムイオン交換の際の脱水和に基づく同位体効果と吸着剤中におけるリチウムイオンの安定化に基づく同位体効果を考慮することでよく説明できた。スピネル型マンガン酸化物からなる電極は, 電圧を制御することによって水溶液中からリチウムを選択的に取り込むことができる。リチウム濃度0.75mMの地熱水からリチウムの電気化学的回収を検討した結果, 吸着量は11mg/gに達することがわかった。導電性ガラス上にスピネル型マンガン酸化物薄膜を生成した電極は, リチウムの電気化学的挿入・抽出反応に伴って赤褐色から黒色に変化するエレクトロクロミック現象を示す。このような色調の変化は, リチウムの挿入・抽出に連動してマンガンの酸化還元反応 (Mn4+⇔Mn3+) が進むために起こる。 [2×2] トンネル構造のホランダイト型マンガン酸化物は, リチウム二次電池材料として興味深い物質である。電気容量は初回に230mAh/9に達し, 充放電の繰り返しに対する安定性も高い。スピネル型マンガン酸化物薄膜電極の電位はリチウムイオンに対してのみ選択的に応答し, これまで知られているものより優れたリチウムイオン選択電極であり, 臨床化学などの分野で応用が期待される。
今後は, 触媒など気固界面を利用した材料としての展開が期待できる。
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