従来,島弧の上部マントル過程についての情報は島弧マグマ中のマントル捕獲岩に依る所が大きかった(例えば,Ishimaru et al., 2007; Arai & Ishimaru, 2008)。主要なものとして高度の部分溶融およびシリカに富む流体/メルトによる交代作用がある。これらの情報を補完するために、空間的広がりが大きく,由来部分も異なると思われるオフィオライトからの情報が必要であるが,十分な解析は行われていない。そこで島弧起源とされるトルコ,メルシンオフィオライトのマントル部の岩石学的検討を行った。メルシンオフィオライトのマントルかんらん岩の特徴は,海洋底かんらん岩とは異なり島弧のかんらん岩と一致することから,メルシンオフィオライトのマントルかんらん岩は高い程度の部分溶融で形成された。また,小規模なシリカ交代作用も起こった。