抄録
大隅石(osumilite)は鹿児島県垂水市咲花平の流紋岩空隙中から発見された鉱物で、かつては菫青石と思われていたが、都城秋穂によって新鉱物として記載された(Miyashiro, 1956)。一方、著者らは咲花平および隼人の大隅石に伴って、鉄菫青石(sekaninite)が普遍的に産出することを確認したので報告する。大隅石の結晶形態は柱面{110}と底面{001}以外に多数の微小な結晶面が認められることが多いのに対し、鉄菫青石は擬六方晶系の柱面と底面のみからなる単純な結晶形態を示すことが多く、また、両産地とも、ほぼ例外無く結晶表面が酸化鉄などの茶褐色被膜で覆われていることから、肉眼的な区別は比較的容易である。