抄録
我々は火星衛星のフォボスとダイモスの構成物質の推定を行うために、火星衛星の反射スペクトルとの類似性が指摘されているD型小惑星物質(Tagish Lake炭素質隕石)とC型小惑星物質(Murchison炭素質隕石)の真空加熱実験(真空、加熱温度400、600、900℃、加熱時間50時間、酸素分圧IW)を行い、加熱物の反射スペクトルをフォボスと比較した。その結果、フォボスの3μmバンドの吸収は非常に浅く、加熱なしの炭素質隕石の3μmバンドの吸収とは一致しないことがわかった。また、Tagish Lake、Murchisonともに400、600℃加熱物がフォボスと比較的良い類似性を示すが、フォボスに見られる0.65μmの吸収は再現されず、また、中間赤外領域のクリスチャンセンフィーチャーの位置がフォボスの方が少し短波長にある傾向が見られた。