抄録
コンドライト中のnepheline(Nph)が,母天体内において水熱変成によって生成するという説を検証するために,我々は以下の実験を行った。まず,Nphの前駆物質であるgehlenite(Geh)とPlagioclase(Plg)に200 °C,~15 barにおいて,168 h,pH 0,7,13,14溶液を反応させる水熱実験を行った。その結果,強アルカリ性溶液との反応によって,Gehからはanalcim (Anl),hydroxycancrinite,fabriesite(Fb)が,PlgからはAnlとFbが生成した。さらに,これら3種類のNa zeoliteについて等温加熱実験,示差熱分析を行ったところ,いずれのzeoliteも隕石母天体内の加熱によってNphに転移しうることがわかった。以上の結果から,我々は,コンドライト中のNphは以下の過程で形成されたと考える:(1)低温におけるNaに富む強アルカリ性溶液の存在下における水熱変成によるNa zeoliteの生成,(2)漸進的な加熱により水溶液が失われた後,長時間の加熱によるそれらNa zeoliteの相転移。