北部九州には,東西約100km, 南北約50kmにわたりバソリス状の白亜紀深成岩体が分布する.深成岩類のうち,ホルンブレンドを含む花崗閃緑岩が6割を占める.この花崗閃緑岩は,同時期に貫入した細粒閃緑岩を伴い,集積組織を示す不均質な粗粒斑れい岩のブロックを含む.組成変化図では,花崗閃緑岩と細粒閃緑岩は一連のトレンドを示さない.こうした組成の特徴から,両岩相が単一の親マグマから生じた可能性は低い.一方,102Maで補正した花崗閃緑岩,細粒閃緑岩および粗粒斑れい岩のSr-Nd同位体比は,岩相にかかわらずbulk earth付近に集中し,それら3岩相は類似の同位体組成を持つ起源物質に由来したと推察される.そこで微量元素を使い,粗粒斑れい岩を平衡溶融させた時の液組成を計算した.その結果,下部地殻条件で溶融した場合,花崗閃緑岩の組成が再現できた.すなわち,花崗閃緑岩は斑れい岩質下部地殻の部分溶融によって生じた可能性が高い.