抄録
本研究では栗駒火山北斜面に分布する火山灰の層序を報告するとともに,噴火に関与した可能性のある熱水の温度と化学組成を推定することを目的として火山灰粒子の鉱物学的研究を行った.
露頭間で堆積物を対比し,1層の土石流堆積物,2層の砂質テフラ,10層の水蒸気噴火堆積物を認定した.これらのうち,最上位の昭和湖周辺にのみ分布する水蒸気噴火堆積物に対し,偏光顕微鏡観察,粉末X線回折,SEM-EDS定性分析によって火山灰粒子ごとに鉱物同定を行った.その結果,火山灰粒子には変質火山岩片,結晶片,モザイク状石英,流紋岩質岩片が認められた.10μm以下の細粒粒子は石英-パイロフィライト,石英-セリサイト,63μm以上の粗粒粒子は明礬石-石英orクリストバル石,カオリン鉱物-石英orクリストバル石,モンモリロナイト-クリストバル石,セリサイトorモンモリロナイト-石英の鉱物組み合わせを持つ.これらの鉱物組み合わせと,Al2O3-SiO2-H2O系の相平衡や斑岩銅鉱床周辺の変質分帯を比較し,変質に関与した熱水の化学組成は酸性から中性,最大温度は230°Cから300°C,起源深度は約1.5kmであると推定した.