抄録
マグマの冷却速度はマグマプロセスのタイムスケールを見積もる上で非常に重要である.Holness (2014) は過冷却度に応じて変化するとされる斜長石のアスペクト比について,5つの岩床と1つの溶岩湖でその垂直変化を調べ,アスペクト比と熱伝導計算で得られる冷却時間との間に逆相関があることを見出した.しかしながら,本論文では組成の近いソレアイト質の岩体を対象とし,マグマの組成の影響についてはあまり議論されていない.そこで,我々は斜長石のアスペクト比のマグマ組成の違いによる影響を検討すべく,東北日本のアルカリ玄武岩質貫入岩体 (温海ドレライト岩床群; Kushiro, 1964) に対し,鏡下での斜長石アスペクト比測定と,熱伝導計算による岩体の冷却時間推定を行った.その結果,Holness (2014) と同様に,斜長石アスペクト比と熱伝導計算で見積もられる冷却時間の対数との間に逆相関があることが明らかとなった.しかしながら,斜長石アスペクト比の値は,温海ドレライト岩床の方がHolness (2014) の結果に比べて大きい.この原因として,元素拡散係数に対するマグマの粘性の影響が可能性の1つとして考えられる.